2019.08.31
池波正太郎さん、山口瞳さん「オトコは何をどう食べ、着るべきですか?」
ハウツー本全盛だった70~80年代前半に出版された「礼儀作法入門」(山口瞳)、「男の作法」(池波正太郎)を再読することで、今も昔もかわらないオトコのたしなみとは何か、考えます。
- CREDIT :
文/秋山 都
40年を経ていまなお色褪せないオトコの作法とは
本書のなかには「電話は受けたらすぐ名乗れ」など、いまの時代にフィットしないものもありますが、40年を経て色褪せぬ教えに「うんうん」とうなづく方も多いのでは。
ちなみにオンリーワンの話でいえば、池波先生は「自分の人生が一つであると同時に、他人の人生も一つであるということだ。自分と他人のつきあいでもって世の中は成り立っているだからね」とおっしゃっておられます。まったく同感。

【衣】オトコの粋な装い
「万年筆とかボールペンとかサインペン、そういうものは若い人でも高級なものを持ったほうが、そりゃあ立派に見えるね。万年筆だけは、いくら高級なものを持っていてもいい(中略)男っていうのは、そういうのにかけなきゃ駄目なんだ、金がなくっても」(池波)
【食】オトコは鮨、うなぎ、蕎麦を粋に食べる
「そこへ坐って、『一人前頼む』こう言えばいいんだ。あるいは、『上等を一人前』とかね。(中略)『お金を払っているんだから、どこへ坐ってもいいじゃないか』なんて言う人がいるけれども、自分が初めて行く店の場合は、常連がいつ来るかわからないんだから。それに対して自分は常連じゃない。やっぱり一番隅のほうへまず坐ったほうがいいんだよ。そして、一通り握ってくださいと言えばいいわけだよ」(池波)
「おこうこぐらいで酒飲んでね、焼き上がりをゆっくりと待つのがうまいわけですよ、うなぎが。(中略)昔は、うなぎの肝と白焼きぐらいしかないですよ、出すものは。東京のうなぎ屋はね」(池波)
これを読んでから、せいろの蕎麦の上に直接七味唐辛子を振るようにしました。たしかに香りが鮮烈です。おいしいものに目がないおふたりは、お店へ、職人さんへの気遣いも人一倍のようで……。
【心遣い】チップ、心付け、祝儀……かたちで表す心遣い
ご参考までに六本木「綱寿し=おつな寿司」などこの3軒のお店はいずれも健在。「空也」の最中は予約が必要です。
この2冊は装いや食べ物のみならず、ギャンブルとのつきあいかた、そして女性との別れ方にいたるまで、オトコのあれこれを丁寧に指南してくれています。40年前とは思えぬツボを押さえた教え、再読してみてはいかがでしょう。

「新編 男の作法」(サンマーク文庫)

山口瞳「礼儀作法入門」(新潮文庫)