2018.04.22
美人ゆえの苦労を知らずして、美人さんとの距離は縮まらない
美人は得をすることも多いけれど、美人ゆえの苦労もあるのです。3人の美人さんに聞いた本音から、美人さんと仲良くなるためのヒントが見えてきました。
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文/木村千鶴
これは世間一般で常識のように言われている言葉。労働経済学者のダニエル・S・ハマーメッシュの著書「美貌格差:生まれつき不平等の経済学」(東洋経済新報社)によれば、見た目の良し悪しによる生涯年収の差は2700万円!という衝撃的なデータも。確かに、美しい人は得をしているとは思います。
しかし、世の中、光があれば影がある。かのゲーテは「強い光ほど影もまた濃い」と言いました。それでは「美人さん」の“濃い影”とは何なのか? 今回は20代、30代、40代それぞれの「他薦・美人さん」にご登場いただき美人ゆえの苦労について本音で語って頂きました。そこから読み解ける「美人という人生」の真実、そして「美人さん」と良い関係を築くために大切なこととは?
20代、秋野ひかりさん(仮名)の場合
「中高生までは部活に明け暮れ、特に美人と言われることもなく毎日を過ごしていました。自分でも容姿のことは気にしたこと、なかったです。だけど大学生になって、化粧をするようになったとたんに、急に男性に声をかけられたり、かわいいと言われたりするようになって、ちょっとうれしかったっていうのはあります。なんか人気者みたいだなって(笑)」
― なるほど。モテ期の始まりですね。
「はい。だから最初のうちは誘ってきた男子何人かとデートをしてみたんです。これまでそういった経験がなく、デートするということに興味もありましたから。ただ、誘われるままにデートしてみてもそう楽しくもなく、その頃誘ってくれた男子と付き合うには至りませんでした」
― 男子にモテることで女子との関係に変化はありましたか?
「仲のいい女友達に、客寄せのような形で合コンに連れていかれたことは残念な思い出ですね。望んでいるならともかく、かわいい子を連れていくから、なんて理由に付き合わされるのはちょっと嫌でした」
― 確かにそうでしょうね。ところでナンパとかはされますか?
「繁華街ではとにかくナンパされます。強引なんですよ。新宿で腕をつかまれたこともあり、本当に怖い。それ以来新宿の地上を歩かないようにしています。渋谷でもはさみうちにされ恐怖しかなかった。家までの帰り道も必ず自転車を使い、携帯をすぐ出せるように準備していますよ。防犯にはとにかく気をつけています」
― 女性を怖がらせるようなやり方はいけませんね。なんだか今のところ美人で得したような話が出てきませんが……。
「そうですね、正直、得と感じたことは今のところないですね。私、不特定多数の男子からモテたいという気持ちがないんです。自分が本当に好きな人からは、モテモテでいたいですけど(笑)」
どうも「美人さん」は自分が望むか否かに関わらず、さまざまなオトコたちを惹きつけてしまうようです。街中にはトンでもない輩も多いようで……。確かにこれは由々しき問題です。
次は、もう少し大人の女性の話も聞いてみましょう。
30代、澤畑千草さんの場合
「10代の頃は初対面から打ち解ける方ではなく、第一印象は“話しかけづらいタイプ”。素は出せない方でした。ちょっと男性不信のようなところがあって、好かれたいとも思わないし、見た目で選ばれたくない気持ちも強かったです」
― 男性不信というのは?
「それは何度か怖い思いをしたから。ナンパも痴漢も怖かったですね。一度待ち伏せされて車に引っ張り込まれそうになったことがあって、たまたま友人が通りかかって事なきを得ましたが、それから夜道はすぐに110番できるように携帯電話を持って歩いていました。ストーカーされたこともあるので、執着されやすいのかもしれません」
― やはり怖い目に遭っているんですね。なぜそんな強引なやり方でどうにかしようと思う人がいるんでしょう。
「本当に! ナンパするにしても、アプローチの仕方は考えた方が良いですよね。そういえば、無理だとわかった瞬間に暴言を吐かれたこともありました。『思わせぶりな態度しやがって、ブス!』って。何もしていないのに(笑)」
― 最低すぎて苦笑するしかないですね(笑)。それでは仕事関係で見た目の損得を感じることがありましたか?
「20代でOLだった頃は、仕事に全力を注いで頑張っていましたが、実力で評価されていないと感じることもありました。社外の人に『見た目で雇ってもらえたんじゃない?』なんて言われたこともあり、悔しかったですね。まるで“仕事はたいしてできないのに高評価を受けている”と言われているように聞こえてしまって」
― なるほど。
「上司が他の女性をこき下ろし、その後に私のことを『でも君はきれいだからさ!』と褒めた時もまったくうれしくなかったです。わざわざ比較対象をつくらなくても、そのまま褒めてくれたらいいのに。顔の造作などは本人がどうにかできるものじゃないですからね。そういうことで判断されるのが好きではなかったな、と思います」
良くも悪くも男性たちの過剰な反応を誘ってしまう「美人さん」。男性の無神経な発言が女性同士の関係に悪い影響を与えることもあるようです。次は芸能界にも在籍していた大人の美人さんです。
40代、大原恵美さん(仮名)の場合
「中、高、大学と、すべて女子ばかりの環境で育ちました。ただ近隣に系列の男子校があり、男子との交流はありました。中学生の頃、声をかけてくれた男子校の高校生と、登下校を一緒にしていたことがあります。でもその時に女子高の先輩から言われたのが“ヤリ○ン”(笑)。登下校しただけで、まだキスもしたことないのに!」
― それはただのやっかみですよね。
「高校生くらいからは、目立つ子たちと遊ぶようになり、合コンをしたり、男の子たちと合流して遊びに行ったり。でも、その男の子たちとも付き合ったことはないんです。男の子に告白されて、たとえ私もその人のことが気になっていたとしても、あきらめていた。だって自分ばかりに男性が話しかけてきたるすると、1人でいい思いしているみたいになって、居心地が悪いんですよ。女子に嫌われたくなかったんで、先回りして考えて、いつも気疲れしていましたね」
― 大学生の頃からはモデルをされていたそうですが、その頃はどうでしたか?
「モデルの仕事をするようになり、周りがきれいな子ばかりになると、途端に気楽になりました。男の子の目が自分に集中しなくなったので。少し寂しい気もしましたが(笑)、やっと自分らしくいられるようになった気がします」
― 精神的にラクになりましたか?
「でもコンプレックスも生まれたし、業界特有の冷たさを感じることも結構多かった。そしてまた“ヤリ○ン”の噂が流れたんですよ。私と付き合っているって人がたくさんいたらしいです(笑)。私にはたった一人の彼がいて、噂の相手は会ったこともない人。あれって何なんでしょうね」
― またですか(笑)。
「まあ、そういう噂は仕事柄、多少は仕方ないにしても、それを信じて忠告してくる女友達にがっかりしました。『そういうのやめなよ、噂聞くよ?』って。
『あなた私の友達よね? 私がそういうことできないの、知ってるよね?』と言っても、大して知りもしない人の言葉を信じて。あれには傷つきました。
これは毒舌になっちゃいますが、知ったような正義感を振りかざす人に、きれいな人はいないんです。私よりきれいな子たちはそんなことはしません。似たような嫌な思いを、みんなしていますから」
― おせっかいでもあるし、話を信じないところに妬みの気持ちが見える気もします。
「恨みや妬みの感情はもたれやすいと思いますよ。何もしていなくても。それに嫌気がさして交友関係を広げなくなりました。わかってくれる人が数人いれば十分。もういいや、って思います」
― 男性関係はどうですか? ずいぶんモテるのではないかと思いますが。
「それがなかなか(笑)。男性からはちやほやはされても、本当に好きな人からは想ってもらえないんです。いろんな理由をつけては断られちゃう。いつも告白するのは自分からです。それでも、『みんなに言ってるんでしょ、今だけでしょ?』って。だからこそ私、恋愛に関してはものすごく努力してるんですけどね(笑)」
……こう見てくると美人ゆえのさまざまな苦労というものがあるものです。その分、彼女たちはトクもしているのだから仕方ない、という声なき声が聞こえてきそうですが、本人たちにしてみれば、ある意味、普通であることを望んでいるだけとも言えるでしょう。
いずれにしろ、あなたが「美人さん」と親しくなりたいのなら、ただその美しさを崇めるのではなく、まずはひとりの人として彼女を尊重し、理解し、接すること。当たり前ではありますが、それによって初めて「美人さん」との距離は縮まるのだということは、よ~く理解しておくべきではないでしょうか。