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2021.10.16

コロナを追い風に急成長したレンタルサービスの仕掛け人。次なる野望は?

コロナ禍により社会全体にさまざまな影響が生じていますが、逆風を逆手に取って大きく成長した企業があることも確か。今回は、コロナ禍を機に事業転換を図って成功した「リフリード株式会社」取締役兼COOのレクァン・フィジュンさんにビジネス観を伺いました。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ スタイリング/稲田一生 文/アキヤマケイコ 取材協力/漆畑慶将

先が読めない時代にありながら、新しいビジネスで世の中を前向きに動かそうとしている若き起業家たち。次世代を担う彼らは、どんな過去を経て今に至り、新しい未来を描くのか?

今回は、ベトナム生まれ日本育ちの起業家、「リフリード株式会社」取締役兼COOレクァン フィジュンさんにお話を伺います。

コロナ禍を逆手に、レンタル事業を在宅向けに転換

── では早速、御社の主要サービス「flarii(フラリー)」とは、どんなものですか?
レクァン フィジュンさん(以下、レック) 仕事や日常で使用するアイテムを、“すぐに”、“どこでも”、格安で借りられるサービスです。例えば、リモートワーク向けのパソコンや周辺機器、おうち時間を充実させるためのゲーム機や家電、バーベキューやアウトドア用品などを扱っています。特に、月会費を払えば毎月好きな商品を選んで借りられるサブスクスタイルの「借りホーダイ」プランもあるのが特徴です。

── 2019年に4月に創業されて、翌2020年4月7日、最初の緊急事態宣言が出たタイミングでピボット(事業の方向転換)をされたとか。

レック フラリーは当初、旅行用品のレンタルサービスでした。立ち上げのきっかけは、共同創業者の田村貴弘を含めた友人5人で沖縄旅行をした時に、帰りのLCCで重量制限に引っかかったことです。お土産を買いすぎて「荷物を捨てるか、搭乗をやめるか」の選択を迫られて、泣く泣くお土産を捨てる羽目に。その時に、旅行用品をレンタルして現地で受け取ったり返したりできれば荷物を減らせて便利だとひらめいて、東京に戻ってすぐにサービスをスタートしたんです。

ローンチ当初は順調だったのですが、2020年に入るとコロナ禍で旅行需要が激減。3月頃から、日本でも外出制限が始まるという情報が出始めたのでメンバーとブレストし、実質2週間ほどで在宅向けのサービスに切り替えました。
── すごくフットワーク軽く、鮮やかに方向転換されたのですね。

レック 速攻で決断して実行できたのが、ベンチャーの強みですね。情報を取り逃さず、元々あったレンタルのスキームを活かせたのも良かったです。業績が一気に10倍になりました。需要がありすぎて、レンタル品を先行して購入する費用がかさみ、資金ショートしかけるというピンチもありましたが(笑)。おかげで今も順調です。

── コロナ禍での流れを追い風にできたのですね。人気のレンタル品は何ですか?

レック パソコンやデジタルガジェットですね。他にも、ゲーム機を「夏休み・冬休みの間だけ子供に使わせたい」という需要があるのも面白い発見でした。また、美顔器などの美容家電を「買う前に試したい」と利用される方も多いですね。

モノを買って所有することは便利で楽しい反面、私たちが沖縄旅行で経験したように、身軽でなくなるというデメリットがあります。レンタルやシェアリングは、そうしたモノの所有の重荷から開放してくれます。これからの時代、環境負荷の大きい大量生産・大量消費よりレンタルの方がスマートだと考える人も増えてくるでしょう。ですから、今後も需要は伸び、事業拡大していける分野だと思っています。
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起業を成功させる3つの力を分析。10年で身につける計画を立てました

── 起業をしようという気持ちは、いつ芽生えたのですか?

レック 両親がともにビジネスを手がけていたので、子どもの頃から漠然と自分も将来は起業したいと思っていました。父はベトナムから留学生として来日し、仲間と貿易の会社を興して今も続けています。母もかつてベトナムの民族衣装などを扱う店を経営し、タレントの衣装提供もしていました。僕は子どもの頃から自宅で親の取引先からの電話を受けたりしていたので、仕事への意識は早い段階からもっていました。

── 当時は携帯電話もまだなかったから、ある意味、子どもの時から電話番をしていたんですね。

レック そういうことになりますね(笑)。でも、独立して起業するという目標を明確にしたのは、大学卒業後、アメリカ・シアトルに留学した時です。大学在学中にリーマンショックがあり、アメリカのビジネスが世界に与える影響の大きさに驚き、その現場を実際に見てみたいと思って留学しました。シアトルにはご存知、AmazonやMicrosoft、スターバックスなどの世界企業の本社があります。そこでは多彩な人材が活躍する一方、競争が激しく、自分のようにぼんやりと「何かビジネスをしたい」という考えは甘いということも思い知らされました。

そこから起業分析をし、起業して成功するには3つの力が必要だという結論に至りました。1つ目はモノやサービスを適切な相手に売りこむ「営業力」、2つ目は営業力を増すために人材を採用し育成する「人事・採用力」、3つ目はその人材がチームとなった時に大きな力を発揮することができる「組織活性力」です。

これらを3年ずつ、少し余裕をもって10年間で身につける計画書を作りあげました。それを持って日本に戻り、就職して実践していったんです。
── 10年という長期計画は、順調に進められましたか?

レック まず商社と人材ベンチャーに入り、3年でトップセールスを経験しました。続いて、採用と組織活性に定評があるサイバーエージェントの子会社に人事として転職し、採用したり部活動を立ち上げたりイベントを手がけたりして、チームの結束を高める経験をしました。

他の人は何年もかけてそれぞれ身につける力かもしれませんが、自分は運が良く、周りに助けてもらいながら力をつけさせてもらいました。それでちょうど10年たった頃に、そろそろ挑戦する時期だと思って、会社を辞めたんです。ただ、その時は、何の事業で起業するかまでは決めていなかったんですけどね。

── それは大胆ですね! なぜ、事業が決まるまで会社に勤めていようと思わなかったのでしょう?

レック 独立することは決めていたし、若くて独身のうちに挑戦しておきたい気持ちもあったので、迷いませんでした。私の座右の銘「There is a time for departure even when there’s no certain place to go(特に行くべき場所がなくとも、旅立ちの時というものはある)」(アメリカの劇作家、テネシー・ウィリアムスの言葉)に従ったんです。

それで、最初は父の会社を手伝いながら、前職の繋がりから人材紹介のコンサルティングも始め、軌道に乗ってきた頃に、旅行用品のレンタルサービスのニーズに気付いて……という流れです。
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外国人起業家界の“大谷翔平”を目指してます

── 起業の目標は果たされたわけですが、今後は会社・事業をどうしていきたいですか? 

レック レンタル・シェアリング事業は、成長が期待できる分野ではありますが、決してブルーオーシャンではありません。大手が参入すれば、たちまちウチも難しくなる。生き残るためには、「借りホーダイ」のような独自のサービスなど、大手が参入してこないニッチなサービスをさらに開拓していく必要があるでしょう。いわゆる“ブルーポンド”(※)をたくさんもつ戦略です。そうすることで、今後のシェアリングエコノミーやSDGsの社会を引っ張っていけるような会社になれると良いと思っています。
※未開拓の小さなマーケット戦略
▲ ジャケット3万2000円、パンツ2万7500円/すべてエストネーション、カットソー9350円/スローン、ネックレス15万4000円、ブレスレット14万1000円、リング7万7000円/すべてシンパシー・オブ・ソウル(S.O.S fp 恵比寿本店)
── 一方、ご自身の将来像はいかがですか?

レック 自分自身も、事業の成功を通して世の中に影響を与える存在になりたいと思っています。帰化せずにベトナム国籍のレクァン フィジュンのままでいるのもそのひとつです。これには、帰化して例えば田中や山田といった姓になるよりビジネスで印象に残るはずという狙いもありますが、ベトナムの人々に「ベトナム人経営者が、日本で成功している人がいる」と思ってもらいたいなって。

海外で日本名のスポーツ選手が活躍していると、自分を投影してうれしくなったりしますよね。自分と同じ名字の人が世界で活躍していると、なんだか親近感がもてるし、自分も頑張ろう!って思える。そんな風に、“外国人経営者界の大谷翔平”のような存在になって、ベトナムの人々を鼓舞できる存在になりたいんです。

もちろん、外国籍でいることの不便さもありますが、自分がこの名前のまま成長していくことで、日本のグローバル化やダイバーシティの実現に一役買えると良いなと思っています。

── レックさんの視野の広さが伝わってきます。最後に、そんなレックさんはどのようにプライベートを過ごされていますか。

レック クルマが好きで、休日に友人たちや彼女と出かける時は運転役を買って出てたりして。ただし、マイカーではなくシェアリングサービスを活用しています。いろんな高級車に乗れるので、満足度は高いです。

それから、サッカー、野球、バスケットボールなど、チームスポーツを観戦するのが好きですね。インドアの趣味では将棋。大学生の時にオンライン将棋にハマって、今では「アマチュア初段」の腕前です。組織・チームで物事に取り組むことが好きだったり、物事の先を読んで次の手を考えたりと、ビジネスに通じる点も多いかもしれませんね。

● レクァン フィジュン

リフリード株式会社取締役COO。1986年ベトナム生まれ。早稲田大学商学部卒業後、アメリカへ留学。商社や人材ベンチャーで営業、サイバーエージェントグループのゲーム部門での人事を経験。その後独立し、フリーランスとして6社の人事顧問を歴任。2019年に「リフリード株式会社」を田村貴弘氏と共同創業する。2020年4月、「flarii(フラリー)」をテレワーク向けのレンタルサービスへと転換する。
メインサービス「flarii」

※掲載商品はすべて税込み価格です

■ お問い合わせ

S.O.S fp恵比寿本店 03-3461-4875
エストネーション 0120-503-971
スローン 03-3448-0207 

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