2021.12.25
SNS時代に企業とサービスのファンを獲得するには? PR業界の“龍”を目指すCEO
SNSが発達し、私たちの情報の受け取り方は以前よりずっと多様に。そんな社会に合った新たなPR方法を模索し、提案するのが「株式会社OKPR」です。CEOの漆畑慶将さんにSNS時代のPRを伺いました。
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写真/トヨダリョウ スタイリング/稲田一生 文/秋山圭子
今回は、デジタルメディアを中心にしたPR事業を展開する「株式会社OKPR」代表取締役CEOの漆畑慶将さんにお話を伺います。
SNS時代には、“広めるだけのPR”は通用しない
漆畑慶将さん(以下、漆畑) 主にデジタルを使ったPRで企業を支援しています。具体的には、ウェブやSNSを使って企業の商品やサービスを購入・利用してもらうきっかけ作りです。従来型のPRでは、商品やサービスを単に広めるだけで終わってしまうことが多いですが、当社ではできるだけもう一歩先までコミットしています。
例えば、顧客に体験してもらったり、ターゲットに近いインフルエンサーに自然かつ効果的に使ってもらったりして、面白さや便利さを実感してもらい、購入や利用に直結させる方策を考えます。そのために、1案件ごとに個々にヒアリングとプランニングをしています。
漆畑 確かに、情報を広めるだけで終わらない分、PRの方法は複雑になり、時間もコストもかかります。でもSNSの普及で、情報の広がり方や受け止め方は大きく変わってきました。今は商品やサービスの情報を上から目線で教えるようなやり方では、かえって反発を受けてしまいます。商品やサービスを提供する側とユーザー側が、上下関係なく相互にコミュニケーションする形でないと、受け入れられづらくなっているんですね。
── 時代の変化は、メディアとしても実感しています。
漆畑 相互コミュニケーションができるSNSも近ごろは種類が増えてきましたね。それぞれに特色もあり、かつ変化も激しい。例えば、Instagramが「美味しいラーメン」で検索して出てきた画像からお店を選ぶといったGoogle的な使われ方をするようになったり、TikTokなどの普及によって動画は最初の3秒につかみがないと興味を持ってもらえないようになったり。そういう変化に常に対応しないと、効果的なPRができないと思います。
── SNSは単に流れてくるコンテンツを楽しむだけじゃなく、検索プラットフォームにもなっているんですね。
漆畑 せっかく良いサービスや商品を提供しているのに伝え方が下手だったり、メディアに露出できるタイミングを自ら逃してしまったりする会社は意外と多い。それを我々のPRの力で支援していきたいんです。大変ではありますが、世の中に次々と起こる新しい事象を捉えながら顧客のためにどんなPRができるかを考えていけるのは面白いし、それがこの仕事の醍醐味でもあると思っています。
大手とベンチャーを経験し、PRの可能性に目覚める
漆畑 大学卒業後は弁護士を目指していましたが、ロースクールに通う資金を貯める必要があったので、まずは一度就職しました。選んだのは、新卒採用でないと難しいテレビ局。日々、膨大な情報を扱う刺激はありましたが、大手ならではの保守的なところに疑問を感じ、自分自身をより活かせそうなベンチャー企業の広報に転職しました。
そこでは「美人時計」という、現在のインフルエンサーマーケティングの走りのようなことをしていて、個人の発信が世の中に影響力を持つという面白さを実感できました。しかし、美人時計は大きなムーブメントになりながらも会社の経営方針が定まりきらず、大手とベンチャーという両極端のメディアでの経験を生かして、そのどちらでもない新しいPRの仕事を自分でやろうと思ったんです。
漆畑 そうですね。それに弁護士はいつか目指してもいいけれど、起業に挑戦するなら今しかないと思ったんです。20代のうちに何か物事を成し遂げておきたかったし、もし数年で失敗しても30歳ならまだサラリーマンに戻れるという気持ちもありました。
それと、子供のころからビジネスのアイデアを考えて、実践するのが好きだったというのも関係しているかもしれないですね。
いつもアイデアを練っているので、仕事は趣味です(笑)
漆畑 中学生くらいから個人事業主としてHP制作の仕事をしていましたし、そういえば小学校の時も、牛乳キャップ1個で先生用のキャスター付き椅子に友人を乗せて廊下を運ぶ「うるうるタクシー」というサービスを考案したこともありました。僕の通っていた小学校はちょっと特殊で、牛乳キャップを学校内だけのお金として扱っていて、いくつか集めると文化祭の時などにノートなどと交換できたんです。
── 面白い(笑)。
漆畑 先生用のキャスター椅子ってあまり使われてないけど、掃除の時間にそれに乗って遊んでいる子たちがいて、これサービスに出来ないかな、って思いついたんです。
── サービスの対価としてキャップをもらって、物と交換する、と。子どもの頃から発想力が豊かだったんですね。漆畑さんが何かを思いつくのはどんな時ですか。
漆畑 最近、考え事が捗るのはサウナなんですが、思いついたことをメモできないのが難点。昔は、キャンプや山登りが好きでしたが、最近は行けてないですね。焚き火を見ながら考えごとをすると、アイデアが浮かんできます。
ただ、プライベートでも気づいたらビジネスのアイデアを練っていて、それが面白いので、仕事が趣味化しています(笑)。
漆畑 PRという仕事は、企業にコンサルテーションをし、アウトプットのツールや仕掛けを制作し、効果測定をし……と、手間暇も予算もかかります。そのため、大手広告代理店のようにスケーラビリティがないと難しいといわれていました。でも、我々のようなスタートアップ企業でも、成立させられるということを証明したかった。
ただ最初は、PR用のツール作成を依頼したクリエイターに逃げられそうになったり、先行投資がかさんで資金が厳しくなったりといった苦労はありました。
── そこから軌道に乗ったと思ったのはいつでしたか。
漆畑 そうした問題は、大手広告代理店とリレーションして仕事を増やしていくなどで乗り切ってきましたが、2020年にメディア広告を手がける「VOYAGE GROUP(CARTA HOLDINGS)」にM&Aされたことで、経営基盤が安定しましたし、グループ連携を活かしてPR単体だけでない提案もできるようにもなりました。スタートアップから一歩進んだステージに入った感覚はありますね。
新たなPRの領域で第一人者になるのが目標
漆畑 新しいPRの領域で、第一人者になるのが目標です。例えば今は、SNSを使ったPRが比較的新しい領域ですが、それぞれ発信力に特性があり、得意不得意もあるので、上手く掛け合わせていく必要があります。また、先ほどお話したInstagramのGoogle的利用のように、SNSのツールが別の形に発展していく可能性もある。そうしたツールに習熟し、新しい流れも読みながら、クライアントに合わせて、我々らしいPRを提供していきたいです。
将来的には、自社で新たなPRツールを開発するところまでいければいいです。例えば「東京ガールズコレクション」が、アパレル業界を救ったように、次世代のプラットホームになり、発展させていけるようなPRの仕組みを考え出すとか。
── 新たなフレームごと生み出そうとしているんですね。それから、漆畑さんは地方も熱心に飛び回られているとか。
漆畑 はい。地方の特色ある商品やサービスを扱うスタートアップ企業への支援活動にも、ずっと力を入れています。スタートアップ企業は予算が取りづらいし、そこまで手が回らないと言われるのですが、規模は小さくとも新しいことにチャレンジする企業にこそPRの力が必要だと思うので、継続していきたいですね。
漆畑 「龍になれ、雲自ずと来たる」(作家/詩人 武者小路実篤)。これは、実業家で森ビルの実質的創業者である故・森 稔氏が好んで紹介していた言葉で、龍のように志を高く持ち続けていると、それを理解し、賛同する人が集まってくると言う意味です。自分がモチベーションを高くもって挑戦し続けていれば、良い仲間が集まってくると信じています。
● 漆畑慶将
株式会社OKPR代表取締役CEO。1988年生まれ。中学時代から個人事業主としてホームページ制作などを手がける。大学時代はディズニーランドやスターバックスなどのアルバイトに没頭する。卒業後、在京テレビ局で校閲、I Tベンチャーで広報を経験。2016年にPR事業を手がける株式会社OKPRを設立する。2020年2月、メディア広告を幅広く手がけるVOYAGE GROUPの傘下に入る。
https://okpr.co.jp/
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