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2021.09.25

山崎まさよし「俺もう50やで」「そんな年齢に見えな~い」って言われたいんです(笑)

現在、デビュー25周年のアニバーサリーイヤーを迎えて全国弾き語りツアー中の山崎まさよしさん。9月22日には2年ぶりのオリジナルアルバム『STEREO 3』も発売されるなど、ますます精力的に活動中です。年末には50歳を迎える山崎さんに、この25年を振り返りつつ今の気持ちを教えてもらいました。

CREDIT :

文/長谷川あや 写真/岸本咲子 スタイリスト/宮崎まどか ヘアメイク/島徹郎(juice)

上京して初めて住んだ街・桜木町を舞台にした「One more time, One more chance」、SMAPがカバーしたことでも知られる「セロリ」など、数々の名曲を世に送り出してきた、山崎まさよしさん。今年50歳を迎える山崎さんの曲とともに、甘酸っぱい思い出が蘇ってくるという人も多いんじゃないでしょうか。

そんな山崎さんは、2020年9月25日にデビュー25周年を迎え、現在、アニバーサリーイヤーの真っただ中。2021年9月22日には、その締め括りとして約2年ぶりとなるオリジナルアルバム『STEREO 3』をリリースしました。さまざまな意味で節目となる年を迎えている山崎さんに、音楽活動のこと、昨今、おおいにハマっているというDIY(日曜大工)のこと、そして、年齢を重ねることについても話を聞きました。

僕はウィキペディアの経歴に見合った活動ができてるんだろうか

──こんにちは、『LEON』です。よろしくお願いします。

山崎  (雑誌をめくりながら)『LEON』という雑誌名って、リュック・ベッソン監督の映画から来ているんですよね?

──はい。『LEON』の姉妹誌として『NIKITA』という女性誌も出していました。

山崎 そうなんですか! 僕、監督に会ったことがあるんですよ。ベッソン監督の映画『アンジェラ』のオマージュソングをリリースした関係で、来日の際に花束をお渡ししたんです。あれはどのくらい前だったかな……。

──(スマホで調べて)2006年、15年前ですか! 

山崎 そんなになりますか……。

── と、話の流れからでナンですが、デビュー25周年おめでとうございます。山崎さんは『LEON』の読者層ともリンクするので、「山崎さん、デビュー25周年かぁ」と感慨に浸っている読者も多いと思うのですが、山崎さん本人は、25年という歳月を、今どのようにとらえていますか?

山崎 よく25年も続いたなぁ、ありがたいなぁと(笑)。でも、こんな取材を受けておいてアレですが、僕、自分に対する評価って、過剰だと思っているんです。例えば、ウィキペディアを見るとズラっと経歴が載っていますが、その経歴に見合った活動が本当にできているのだろうかと不安を感じてしまうんです。音楽的なコンプレックスをもっていたこともあったし、自分に自信をなくすことも多いし。何度、解放してくれと思ったことか(笑)。でも、「好きこそものの~」と、意地でやってきた、そんな25年だったんじゃないかなと思っています。
──少し意外です……。山崎さん、世間の評価は気にしないタイプだと思っていました。

山崎 意外とチキンハートでして(笑)。「俺は俺だ!」と突っ走っていた時期もありましたが、結婚して家族をもったら周囲の評価が気になり出しました。「老けたな」とか、嫌なコメントを見ると、そればっかり気になっちゃうんですよ。そりゃ老けるやろって感じですけど、けっこう傷つきやすいんです(笑)。ただ、僕くらいの年齢だと周りの評価は気にしないという人も多く、自分もそうなっていきたいなと思いつつ、同時に、ある程度、周囲の評価にゆだねることも大切かなとも考えていて。「俺はみんなにこう思われてるぜ!」と自分で決めつけるのも気持ち悪いじゃないですか。

──なるほど、周りの声から自分が見えてくるという側面もあるかもしれませんね。
プリントシャツ 1万8800円 RAGA MAN 、カーゴパンツ 1万3000円 REELL(ともにHOLLYWOOD RANCH MARKET TEL/03-3463-5668)、バングル5000円 FACTOTUM ( FACTOTUM LAB STORE  TEL/03-5428-3434)、他 スタイリスト私物。価格はすべて税別。
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申し訳ないくらいに山崎まさよし濃度の高いアルバムです

山崎 例えば、僕はときどき役者の仕事もしますが、少し前まで、役者というのは、自分には不要のプロフィールだと思っていたんです。役者としての活動は、プロフィールに書かなくていいよ、やめてって(笑)。でも実際役者の仕事もけっこうやってるやん、もうええわ、書いておいてと、最近では開き直っています。

──では、今回のプロフィールにも入れさせていただきますね(笑)。9月22日に発売のオリジナルアルバム『STEREO 3』についてもぜひお話を聞かせてください。まず、25周年のメモリアルアルバムを、 プライベートアルバムの位置づけである『STEREO』シリーズの第3弾にした理由をお伺いしたいです。

山崎 そうなんです、『STEREO』シリーズって “作詞、作曲、楽器、ボーカルもほぼ全部自分でやる”という位置づけのアルバムで、いろいろなミュージシャンと一緒に作るフルアルバムとは異なります。今回の『STEREO 3』も、ほとんどの楽器は僕が演奏しています。でも実際は、このアルバムに限らず、数年前からひとりでやることが多くなっているんですけどね。他者と関わることが煩わしいというわけではなく、単純に自分ひとりでやったほうが早い(笑)。コロナ禍という、ご時世もありますし。

ただ困ったのはタイトルでして(笑)。最初の『STEREO』も『アレルギーの特効薬』も『ド ミ ノ』も、収録していた曲を、そのままアルバムのタイトルにしています。でも、今回のラインナップを見ると、どれもこれもタイトルっぽくなかった。今回、マネージャーの提案もあって『STEREO 3』と名付けましたが、事実上の『STEREO 3』は、やはり自分ですべてを手がけた『SHEEP』というアルバムだったりします。
──なるほど(笑)。いずれにしても、それだけ山崎まさよし濃度の高いアルバムというわけですね。

山崎 はい、申し訳ないくらいに(笑)。アマチュア時代から自分でデモテープを作っていたし、デビュー直後から「時間かかってもいいから、セルフプロデュースのアルバムを作ればいいやん」と、ディレクターに言ってもらっていたこともあって、僕はなかなかのひとり上手でして(笑)。おかげでいろいろなスキルが得られたし、そもそもひとりでやることが性に合っています。

同時に、他者とセッションというか、意見交換しながら作ることによる利点も確実にあって。今考えると、ひとり上手なところと、タイアップをはじめとする他者とのセッション──、その両方をやってきたことが、25年という活動の長さにつながっているのかもしれません。

今回、所属事務所(オフィスオーガスタ)の創始者である森川欣信さんには、相談役のようなかたちでスタジオに入ってもらいました。森川さんからは、雨の音を入れようとか、(忌野)清志郎さんの声を入れようとか、僕では思いつかないアイデアがどんどん出てきて、結果としてとても面白いものになったと思います。

──え、清志郎さんの声が入っているんですか!

山崎 「俺が許可を取ってやる」と、森川さんがご遺族のかたに連絡し、許可を取ってくれました。僕には、そこまでのアイデアは出てこないし、たとえ思いついても恐れ多くて言い出せません(笑)。
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この未曾有の時代を清志郎さんはどんな風に天国から見ているのだろう

──楽しみです! では、改めて今回のアルバムに込めた思いを聞かせてください。

山崎 うちの嫁が最近よく言うんですよ。コロナ禍の、この抜け出せない感は、なんとかならないのかって。アルバムには、そんな今の状況、そして、嫁だけでなく、多くの人が思っているであろう、この状況から抜け出したいという思いが入っています。そして子どもの成長を願う気持ちも表現しました。さらに、アルバムには自分の情熱の置き場という面もあります。

──たしかに。今回のアルバムに収録される曲の歌詞を読ませてもらいましたが、いらだち、戸惑い、不安の先に、未来への希望も感じました。

山崎 「霧雨」という曲には、どしゃぶりでも雨はいつかはやむという思いを込めました。清志郎さんの声を使わせてもらっている「Hello ヘヴン」は、この未曾有の時代を清志郎さんはどんな風に天国から見ているのだろうかと考えながら作りました。

──よろしければ、40、50代がメイン層である、LEONの読者におすすめの曲を紹介してください!

山崎 ソロはすべてストラトとテレキャス、レスポールを使い分けているので、ギター好きの方は、そのあたりに注目していただいても面白いと思います。楽曲は……「斉藤さん」かな?
──「斉藤さん」ってもしかして?

山崎 はい、斉藤和義さんをモデルにしています(笑)。和義さんも、僕もDIYが大好きで、そんなふうに何かに夢中になる楽しさを歌にしました。40、50代のみなさんにもおすすめできるテーマかなと(笑)。

──お! 今日はDIYについてもぜひお話を伺いたいと思っていました! 東日本大震災で、自室兼スタジオのギターが倒れ、複数のギターをまとめて立てかけられるギタースタンドを作ったことが、DIYにハマるきっかけだったというインタビュー記事を読みましたが、実際のところは──?

山崎 そう、震災は大きなきっかけです。普通の家にはないような工具を揃えるようになったのは、震災後です。でも実は震災以前も、ギターを弾く際の配線だったり、ここに棚が欲しいという嫁さんからのリクエストだったり、作れるものは自作していました。

山口県にいた若い頃、荷役のバイトをしていて、電動ドリルを使って、サッシの取り付けを行うこともあったんです。DIY歴は意外と長いんですよ(笑)。冷蔵庫の横の隙間にちょうど入る棚とか、自分の要求にぴったりのモノってホームセンターにはなかなか売っていませんから。それに、モノを作っているとスッカラカンになれるんですよね。そんな点も気に入っています。あと曲づくりに息詰まったときは、カレーを作ったりもします(笑)。
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ライブ後はお酒でクールダウンしないと寝付けないんです

──みんな作るという意味では同じ。曲づくりにも通じるものがありそうですね。

山崎 でも、曲づくりとは別物です(笑)。DIYは、曲づくり、歌詞づくりからなかなか抜け出せない時の息抜きという位置づけです。僕の場合、DIYは、あまり深く考えず、「ま、大体こんなもんだろ!」とどんぶり勘定で一気に作っていまいます。

──そういえば、今回のアルバムの完全生産限定盤には、山崎さんをデフォルメ化した、オリジナルプラモデルが付くそうですね。

山崎 フィギュア作ろうという提案があったのですが、以前、『ド ミ ノ』の時に作ったフィギュアがあまり僕に似ていなくてフィギュアはもういいかなと(笑)。そこで、購入してくれた人にもDIY気分を楽しんでもらえるプラモデルはどうかと提案したところ、スタッフの人が駆けずりまわってくれ、実現の運びになりました。
──ちなみに、今回の出来は山崎さん的には──?

山崎 気に入っていますが、僕、こんなブタ鼻じゃないですよね(笑)?

──(笑)。YouTube番組の「craftpapa」も好評です。今やDIYは山崎さんの新たなライフワークになっていますよね。

山崎 きっとそう見えるでしょうね。「craftpapa」は時間貸しの体験型DIYショップで撮影しているのですが、すごく居心地がいいんですよ。僕自身も更新を心待ちにしていて、自宅でお酒を飲みながら、「craftpapa」をチェックするのがステイホーム期間中の楽しみになっています。

──お酒はどんなものを召し上がるのでしょう?

山崎 ウイスキーなど、ハードリカーが中心ですね。ストレートでいただきます。コロナ前は、ライブが終わった後の打ち上げはマストでした。お酒でクールダウンしないと、寝付けないんですよ。でも今はそれもかなわないですし、家にいる時くらいはぐっすり寝たいので、自宅でたくさんいただいています(笑)。
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力任せではなく、年齢や自分の個性に合った、より良い方法を見つけたい

──最後に、年齢を重ねることについて、どのように捉えているかを教えてください。経験を積み、知識は増えていくけれど、体力は落ちていく──、山崎さんはそんな現実とどのように立ち向かっているのでしょう?

山崎 今年の12月に、50歳の誕生日を迎えます。数として認識したら絶望的な気もしますが、「え~」「そんな年齢に見えな~い」という反応が欲しくて、つい自分で言ってしまうんですよ、「俺もう50やで」って(笑)。でももう人の評価は気にしないようにしたいので、あまりペラペラと言わないようにしようとは思ってはいるのですが……。

ゴルフが好きな年配の方ってけっこう多いじゃないですか。歳をとっても何ヤードも軽く飛ばす人もたくさんいます。僕はそこにカギがあると思っていて。力任せではなく、年齢や自分の個性に合った、より良い方法を見つけることが、より良く年を取っていくことに重なるのではないかと考えるようになりました。正直、最近は、ツアーで2時間強、立って歌うと体力的にはとてもしんどい(笑)。そんなわけで、今までとは違う、自分に合ったやり方を探しているところです。

ジョージ・エドワード・フォアマンというアメリカのボクサー、覚えてます? 彼は一度、引退するのですが、45歳の時にチャンピオンに返り咲いています。そんな現象を、自分自身の人生でも再現できたら素敵ですよね。

●山崎まさよし(やまざき・まさよし)

1971年12月23日生まれ。滋賀県草津市出身、山口県防府市育ち。アルバイトをしながらセッション活動、CM音楽制作などの音楽活動を行い、1995年9月、「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年、映画『月とキャベツ』で主演に抜擢され、スクリーンデビュー。同作の主題歌「One
more time, One more chance」がロングヒットし、ブレイクする。以降も、シンガーソングライターとして精力的にツアーを行うほか、全国各地のフェス・イベントへの出演、ミュージシャンとしてのセッション参加なども数多く、また、杏子やSMAP、TOKIOらへの楽曲提供、ユニット"福耳"の結成、ドラマ・映画出演など多方面で活躍。25年間のCD トータル出荷枚数は800万枚超。2021年9月22日(水)に、ニューアルバム『STEREO 3』をリリースした。

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