2021.12.04
劇団ひとり×大泉 洋×柳楽優弥。3人が語るビートたけしと『浅草キッド』
劇団ひとりが監督・脚本を手掛け、大泉 洋と柳楽優弥が共演する、ビートたけしの原点を描くNetflix映画『浅草キッド』が12月9日から世界一斉配信される。話題作の裏側と作品に込めた想いを3人に伺った。
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文/岡本ハナ 写真/トヨダリョウ
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そんな浅草時代の深見師匠との思い出をたけしさんが自ら綴った自伝小説『浅草キッド』がこの度、Netflixで映画化されることに。監督・脚本を手掛けた劇団ひとりさん、師匠・深見を演じた大泉 洋さん、タケシ役の柳楽優弥さんにお話を伺いました。
「古き良き時代昭和、浅草、芸人、すべてが好きな世界観」(ひとり)
ひとり 僕は中学生の時に初めて『浅草キッド』を読んだんですが、青春真っ只中の頃から大人になった今でもブレずにずっと好きな本で、好きな世界観なんです。
たけしさんが芸人になるために幻の浅草芸人と呼ばれる深見千三郎師匠に弟子入りをして、厳しくも愛のある教えで成長していくんですが、僕自身も芸人を目指した時には「お笑いといえば浅草」「芸人になるためには先ずは弟子入りをする」と、信じていました。
実際には、ライブハウスでコントをするとか芸人になるための筋道はたくさんあるんですけどね。それだけ『浅草キッド』の世界にハマっていたんでしょう。だからこそ、次に何を撮ろうかと思った時に、やはり『浅草キッド』 をやりたいな、と。
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ひとり 深見師匠は東 八郎さんや萩本欽一さんなど数々の人気芸人を育てあげ、芸に厳しくて強面なイメージ。でも当時の映像はほとんど残っていないし、頭で考えるしかない。悩んでいたところ、ふと思ったんです。僕が初めて監督した『青天の霹靂』でご一緒した大泉 洋さんが深見師匠を演じたらどうなるんだろう、見てみたいなと思って。それで声をかけさせていただきました。
大泉 僕は、ひとり監督の『青天の霹靂』で主演をさせていただきましたが、これがまた素晴らしい映画でした。前作以来、数年ぶりにオファーをいただいたことがうれしかったです。
さらに、僕にとって『浅草キッド』の世界観はドストライク! 僕の幼少期はガンダム集めやキンケシが流行っていたのですが、友達がそれらに夢中になっている時も、僕はそれに交わらずに芸人さんばかり見ていましたから。お話をいただいて、これはなんとしても、いいものをつくりたいという気持ちになりました。
ひとり たけしさん役は、柳楽さんの寂しげな雰囲気が合うと思ってオファーしました。天才がゆえに、どこまでいっても人と分かち合えないみたいな……いい意味ですよ(笑)!
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でも、撮影中はまだ自信がなかったので、終始弱っていました(苦笑)。出来上がるまでずっと不安でしかなかったのですが、試写が始まって皆さんに「良かったです」と言ってもらえて。ようやく安心してこうやって皆さんと一緒にいられるようになりました(笑)。
「ひとり監督は役者を褒めないんです。だけど要望は厳しい! 」(大泉)
しかも、この監督(ひとりさん)は若干コミュニケーションに難があるというか(笑)……全然役者を褒めないんです。だけど要望は厳しい! もう少し励ます言葉をかければいいのに(笑)。どんなに役者が良い芝居してもいつも同じトーンのだみ声で「オッケー」と言うだけですから、良かったのかどうか分かりにくい監督なんです。 あれは不安になるよね?(柳楽さんの方を向いて)
柳楽 (苦笑い)
ひとり (ひとりで大爆笑)
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その柳楽さんはもちろんすごいし、そこまでもっていった演出も素晴らしい。本人は自分のことを良く言えないだろうから、僕が声を大にして言いますが、柳楽さんの漫才は本当にすごかった!
ひとり 今回の脚本には長い時間をかけて、 頭の中でも色々シーンを思い浮かべていましたが、現場の深見師匠とたけしのやりとりは、僕が想像していた以上に良かったですね。特に作品後半のふたりが本音でぶつかりあうシーンは、 お互いの気持ちが溢れ出ていて、本当にカッコよかった!
柳楽 現場では弱っていましたが、劇団監督が熱心に演出してくださったので、僕が持っている力以上に頑張れたと思います。
大泉 ……「劇団監督」ってちょっと変じゃない?(笑)。 普通は、「ひとり監督」か「劇団ひとり監督」 がいいのかなと思うんだけど。劇団監督って聞いちゃうとそっちが芸名なの?ってなっちゃう(笑)。
ひとり 映画を撮る時は「劇団監督」でやろうかなぁ(笑)。
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「松村邦洋さんに『真似しないでいいよ』と言われたのが印象的」(柳楽)
ひとり 麻里は深見師匠に負けないくらい印象が強い人に仕上げたいなと思っていたところ、他の現場で鈴木保奈美さんとご一緒する機会があって。あぁこの人だ! と直感で決めました。保奈美さんの麻里なら大泉さんが演じる深見師匠に負けないでしょ。
大泉 僕は一番多感な頃にドラマで保奈美さんを見ていましたから、ご本人を前にしても「鈴木保奈美だ~」みたいな(笑)。簡単には近づきがたくて、現場でもそんなに気軽にはお話できなかったですね。ずっと緊張感をもっていました。
ひとり そういえば、ずっと話していなかったかもしれない(笑)。でも、保奈美さんは大泉さんが撮るシーンがあると自分がお休みの日でも現場に観にきてくださったんですよ。私が支える深見師匠は一体どんな人なのかというのを常に意識してくれて。
大泉 いやぁ。さすがですよね。
柳楽 僕は麦ちゃんと何回か共演しているので、非常にやりやすかったですし、心強かったです。彼女はダンスがすごく上手なので、休憩時間に教えてもらっていました。タップも出来るし歌も上手だし、麦ちゃんはすごく芸達者なんです。
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ひとり 僕は、やっぱり深見師匠の「笑われるんじゃない。笑わせるんだ」という台詞が印象的です。たけしさんには、若手芸人がたけしさんに付いていくのが納得できるようなカッコいい話がたくさんありますが、それは深見師匠に叩き込まれた美学が元になっているんですよね。
たけしさんには深見師匠の言葉ひとつひとつが、刻み込まれているのではないでしょうか。深見師匠のカッコ良さは、たけしさんにとっては、いつまでたっても唯一無二の憧れのはずです。
柳楽 僕はタップもたくさん練習をして印象深いのですが、個人的にはやはり漫才をしているシーンでしょうか。たけしさんのモノマネをされている松村邦洋さんに、アクセントや力の入れ方などを長時間演技指導していただいたんですが、「真似しないでいいよ」と言われたのが印象的で。
難しかったのは、モノマネになってしまったら駄目だということ。やはりこの世界観の素晴らしさを引き出すためには、決してモノマネをしてコメディにしてはいけないということ。質の高いものに仕上げなければならないと思って、かなり気を遣いました。
大泉 どんな役を演じても「やっぱりこの人はすごいよね」となるのが柳楽さん! 僕にとって彼の演技は、本当に若き日のたけしさんです。目をパチパチ瞬きする感じ、頬の上げ方、ちょっとした仕草なんですが、絶妙なんです。モノマネかと言われるとそれは違う。そこはやはり役者の底力だなと思いました。 この演技を観たら……どの役者も柳楽優弥と共演したいと思うんじゃないかな。
柳楽 ありがとうございます(照れる)。
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「世界を意識していたら演技ができなかったかも」(大泉)
ひとり それがね、ホント、まずいなと思うぐらい世界を意識しないで作りました(笑)。この完全に日本国内向けの作品が世界の人にどう受け入れられるかというのも完全未知数ですし、不安はありますが、それも楽しみですね。
大泉 浅草という舞台もそうですが、愛情の裏返しの言葉や表現とか……日本人の美学を描いた作品なので、(海外を)意識をしていたら演技が出来ないかもしれないですね。でも、言ってくれれば僕、全編英語で演技しましたよ(笑)。
柳楽 僕もまったく意識していなかったです。翻訳がどうなるか楽しみですね。
ひとり そうなんです。漫才のネタとかどうなるんだろう(笑)。深見師匠の愛情がこもった「バカヤロー!」も、そのまま直訳してはいけないような気がします(苦笑)。
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「芸人の不器用さから出る色気やカッコよさがたまらない」(ひとり)
ひとり 当時の浅草の雰囲気、当時憧れていた芸人、師匠の人となりみたいなものは、以前からたけしさんに現場での待ち時間とかに取材をさせていただいてたんです。さらにクランクインする前にはたけしさんとふたりきりの時間をつくっていただいて、密に取材させていただきました。
特に師匠のことに関してやっぱり想像がメインなので、取材が大切ですよね。すごい照れながら、(劇中の)タケシに向って「おまえバカヤロー。何言ってるんだよ。バカヤロー」という話し方とかね。
大泉 作品の中では、深見師匠がタケシを厳しく叱るような場面も多々出てきますが、それは全部愛情の裏返し。この世界観がとても好きなんです。この時代の師弟関係は、厳しくすることはあっても褒めることはあまりしないんですが、それでも感じられる優しさがあります。これは監督の好きな世界観でもあるのですが、僕もこの昭和の不器用なコミュニケーションに憧れをもっています。
柳楽 僕も深見師匠とタケシの師弟愛を見て、改めて、男同士の絆の深さに考えさせられました。男というのは、憧れるようなカッコいい大人が傍にいたら、その人のアイデンティティを守って引き継ぎ、しっかりついていくものなんだなと思いました。これは時代が移り変わっても変わらない不変的なものだと思うし、年齢にも関係なく共感して頂けるのではないかと思います。
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ひとり 芸人の不器用さから出る色気やカッコよさって、それはある種、芸人の自己満足かもしれないけど、僕はああいうやりとりがたまらないんです。そういうやりとりをしたいがためにこの世界に入ったのかもしれない。僕はお笑いも好きだけど、お笑い芸人が大好き。ぜひそんな素敵な芸人の世界を、この『浅草キッド』を通じて感じていただけたらと思います!
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●劇団ひとり
1977年2月2日生まれ、千葉県出身。A型。様々なキャラクターをひとりで演じるひとりコントで大ブレイク。芸人という枠におさまらず、司会者、俳優、声優と幅広く活動。俳優としての主な出演作に、連続テレビ小説『純情きらり』、ドラマ『電車男』、大河ドラマ『花燃ゆ』など。自身初の著書となる『陰日向に咲く』は、100万部を超えるベストセラーに。初監督作品『青天の霹靂』でも大きな話題を呼ぶ。
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●大泉 洋
1973年4月3日生まれ、北海道出身。B型。北海学園大学演劇研究会出身の森崎博之、安田顕らにより結成した演劇ユニット「TEAM NACS」に所属。北海道のローカル番組『水曜どうでしょう』に出演し、全国区に人気を広めた。ドラマ『救命病棟24時』の出演を皮切りに東京での活動を本格化させた。連続ドラマ『赤鼻のセンセイ』で初主演を務め、その後も『探偵はBARにいる』『駆込み女と駆出し男』など話題作に出演。柔軟性がある高いトーク力から司会業でも活躍。2020年から2年連続で『NHK紅白歌合戦』白組司会を務める。
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●柳楽優弥
1990年3月26日生まれ、東京都出身。A型。俳優デビュー作である映画『誰も知らない』で主演に抜擢、第57回カンヌ国際映画祭で史上最年少かつ日本人初となる男優賞受賞。華々しいデビュー後も、映像のみならず村上春樹作品の初めての舞台であり蜷川幸雄演出『海辺のカフカ』では主人公・田村カフカ役を熱演、反響を呼んだ。近年の出演作に、映画『今日から俺は!!劇場版』、『太陽の子』、ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』など。
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『浅草キッド』
舞台は昭和40年代の浅草。多くの人気芸人を育てながら自身はテレビにほとんど出演しなかったことから「幻の浅草芸人」と呼ばれた深見千三郎(大泉 洋)の下で修行を始めたタケシ(柳楽優弥)。ぶっきらぼうな深見だがタケシへの愛情は深く、舞台上に限らず居酒屋など生活の中でも、「常に芸人であること」を第一に、日々芸を叩き込んでいた。やがてテレビの普及に伴いフランス座の客足は減り、深見は苦境に立たされる。一方、タケシはフランス座の元先輩であるキヨシに誘われ漫才コンビ「ツービート」を結成、深見と対照的に人気を博していく。企画・製作/Netflix 12/9全世界独占配信
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