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2021.12.19

【第15回】大原櫻子(女優・アーティスト)/後編

大原櫻子「私、憑依型だと思います。毎回、役柄から抜けられなくて」

世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが今どきの才能溢れる女性に接近遭遇! その素顔に舌鋒鋭く迫る連載。第15回目のゲストは、女優でアーティストの大原櫻子さんです。ドラマ、映画、舞台に加えて歌手としても大活躍。1月には主演舞台も控えた売れっ子の素顔とは? その後編です。

CREDIT :

写真/トヨダリョウ 文/井上真規子 スタイリスト/米原佳奈 ヘアメイク/木内真奈美(OTIE)

松本穂香
『さらば雑司が谷』『タモリ論』などの著書で知られる作家の樋口毅宏さんが、時代の先端で活躍する女性たちの素顔の魅力に迫る連載対談企画「樋口毅宏の手玉にとられたい!」。

前編(こちら)に続き、ゲストは、女優でアーティストの大原櫻子さんです。衝撃のデビューを経て芸能界に染まりたくないと思いながらがむしゃらに仕事をしてきたという話に続いて、後編では1月7日から始まる主演舞台『ミネオラ・ツインズ』に向けての意気込みと女優としての意外な素顔を語っていただきました。

「大原さんは三刀流、四刀流。ワーカーホリックすぎませんか?」(樋口)

樋口 大原さんは、世に出た時から映画にドラマ、舞台、ミュージカル、そして歌までやられて。もう二刀流どころか三刀流、四刀流ぐらいな感じで、ずっと駆け抜けてきましたよね。本当にワーカホリックすぎませんか!?

大原 私は仕事になると、体がぶっ壊れるぐらいまで集中して自分を見失っちゃうんです。だから自分でも健康が心配な部分はありますね。

樋口 『ミネオラ・ツインズ』も大変ですよね。

大原 原作者のポーラ・ヴォーゲルは「常にホルモンの影響による興奮状態で演じてほしい」と書いていて、そう言われると「っしゃ! やってやろう!」って燃えてくる自分もいて、それが怖い(笑)。

樋口 本当に気をつけてください。俳優の萩原流行さんは生前の手記によると、ある舞台の脚本が初日前日まで上がらず、セリフを一気に詰め込んで幕が上がった瞬間、スコーンと全部真っ白に抜けて20分間の独白。終わってから鬱病になってしまったと。舞台は、なんて過酷な世界なんだと驚きました。
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松本穂香×樋口毅宏
大原 そうですね。完璧にやろうと思った瞬間に精神がおかしくなるんで、どこかで「完璧にやるのは無理」って思うようにしてます。もしセリフがひと言も出てこなくても、マーナとマイラとして生きて、立っていればいいやって。じゃないと、頭が真っ白になりそうで……。最後までちゃんとやり抜くことが一番の課題だと思ってます。

樋口 頑張ってください! ちなみに休みの日とか、気分転換はどうしているんですか? 

大原 友達と会うことも多いですし、お酒の味が好きなのでよく家で一人で飲んでます。最近はず~っとビール飲んでますよ(笑)。でも、まとまった休みをもらったら、多分習い事を始めるかな。好奇心旺盛だから、いつも何かしていたい人間なんですよね。

樋口 やっぱりそうですよね! 最近、大原さんの好奇心をくすぐったものは?

大原 たくさんありますが、とくに極真空手をずっと習いたくて。あとは食材の栄養素を調べるのがすごく好きで、コロナになった時に管理栄養士の資格を取りたいと考えたりしてました。

樋口 極真空手と管理栄養士! でも、似合いますね。
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「マーナとマイラの極端さっていうのは自分の中にもあるもの」(大原)

樋口 これまで出演した作品や演じた役で、素の自分に近かったり、共感が強かったものってありますか?

大原 『メタルマクベス』(※)のマクベス夫人ですね。マクベス夫人は気性が激しい女性で、私は公衆の面前で怒ることはないですけど、自分の中にある感情の起伏の激しい感じは近いものを感じました。

樋口 尾上松也さんが夫役でしたね。実は僕も2007年に、内野聖陽さんと松たか子さん演じる『メタルマクベス』を観に行ったことがあって。会場が大きくて、舞台は360度回転するし、とにかくすごくて、まったく飽きませんでした。大原さんの舞台も映像で拝見しましたが、新たな側面を見た気がしました。ゴスロリもすごく似合いますね。
※『メタルマクベス』は劇団☆新感線による舞台作品。宮藤官九郎がシェイクスピアの「マクベス」を大胆にアレンジ。ヘヴィメタルサウンドに乗せた現代感覚溢れる音楽劇。
大原 松さんの観に行かれたんですね! 『メタルマクベス』の舞台は本当にすごいですよね。

樋口 あの作品は、これまで大原さんが演じてきた役柄の中では異色だと思います。マクベス夫人はシェイクスピアの四大悲劇で、おおっぴらに毒婦扱いされている役ですし。

大原 私は、マクベス夫人を悪役として演じたわけではなかったんです。ただ単純に夫を愛して、王にしてあげたくて、自分は王妃なりたかったっていう、すごくピュアな女性として捉えていました。かわいい女性だなって思いますね。
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樋口 なるほど~。マクベス夫人がかわいいというのは具体的には?

大原 演じながら、ここまでピュアに、周りが見えなくなるほど夫を愛した人はいないんじゃないかって思ってました。子供の頃、一等賞を取りたいとか、王様になりたいと思っていたのと同じピュアさで、ああなってしまったんだって。心が綺麗なんだと思います。

樋口 役に入り込むことで見えてくるものもありますよね。そして『ミネオラ・ツインズ』も大分激しいですよね。

大原 凄まじいですね。でも、どの描写も自分の内面と擦れるものがあって、今そういう生き方をしているわけじゃないけど、マーナとマイラの極端さっていうのは自分の中にもあるもの。だから、演じたら絶対に楽しいだろうなって思います。

樋口 今回も、すごくやりがいのある舞台になりそうですね!

大原 人生に刻まれる作品になると思います。

「マイラのセリフを読みすぎて、気づくとめっちゃ舌打ちしてるんです」(大原)

樋口 今まで撮影が終わっても入り込んで抜けられないキャラクターとかありましたか?

大原 結構、毎回そうですね。

樋口 毎回ですか!! いわゆる憑依型なんでしょうか。

大原 そう言うと、ちょっとカッコいいですけど(笑)。マジでそっちだと思います。

樋口 日常生活でも、役の喋り方が出ちゃったり?

大原 めっちゃありますね。最近、マイラのセリフを読みすぎて、気づくと舌打ちしてるんです。テレビの収録とかでも無意識にやってて、ヤバイ!って。ちょっと怖いです。この間もマネージャーさんに「私、最近口悪いですよね?」って言ったら「思いました!」って言われてしまって(笑)。

一同 笑
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▲ サロペット/YUKI SHIMANE(参考商品)、ボールチューンネックレス6万1600円、丸型ピンキーリング8800円、型押しピンキーリング1万7600円/すべてe.m.(e.m表参道)、ニット(スタイリスト私物)
樋口 完全に入って入り込んじゃうんですね。もうこうなったら、ミュージシャンの活動にも生かしましょう! 今までのポジティブな歌詞から、急にダークサイドの悪口楽しい的な歌詞に変えちゃうんです(笑)。一体、大原さんに何があったんだっていう。

大原 アハハ! めっちゃヘドバンするやつみたいな感じで(笑)。

樋口 最後に夢や野望があったら教えてください。

大原 英語が大好きなので、いつか海外でお仕事できたらいいなと思っています。本当にハードルは高いですけど、ブロードウェイの作品に出られたら最高ですね。

樋口 これからが楽しみです。今日はたくさんお話しくださって、本当にありがとうございました!

【対談を終えて】

なんていい人なんだろう……。お父上の林田さんの教育の賜物か、それとも天性の育ちの良さか。大原さんの歌詞の曇りのないポジティブさに、捻くれ中年の僕はたじろぐばかりだったのですが、お話しさせてもらってよくわかりました。大原さんは前向きで明るくて真面目な人。そしてスケールの大きさを感じさせてもらいました。これからもドラマ・俳優・ミュージシャン・舞台と、四刀流の活躍を楽しみにしています!
松本穂香

● 大原櫻子 (おおはら・さくらこ)

1996年、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションで5000人の中から抜擢され、スクリーン&CD同時デビューを果たす。2014年、女優として『日本映画批評家大賞 “新人賞”』、歌手として『第56回輝く!日本レコード大賞”新人賞"』を受賞。以降、歌手活動と並行して、数々のテレビドラマや舞台へ出演。代表作に映画『あの日のオルガン』(2019)、『犬部!』(2021)、ドラマ『なつぞら』(NHK)、『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京)、舞台『メタルマクベス』、『怪人と探偵』ほか。さらに毎年のように全国を巡るコンサートツアーを実施。これまでに13枚のシングルと5枚のオリジナルアルバムを発売。
HP/SAKURAKO OHARA OFFICIAL SITE (oharasakurako.net)

樋口毅宏

● 樋口毅宏 (ひぐち・たけひろ)

1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新作は月刊『散歩の達人』で連載中の「失われた東京を求めて」をまとめたエッセイ集『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』
公式twitter 

『ミネオラ・ツインズ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~』

ピュリツァー賞受賞作家のポーラ・ヴォーゲルが、1999年にオフ・ブロードウェイで上演した作品。1950年代から1980年代の激動の時代に、女性たちが何を考え、何を体験してきたかを痛烈な風刺を込めて描いた、痛快で挑発的なダーク・コメディ。物語の舞台はニューヨーク郊外の小さな町ミネオラ。一卵性双生児のマーナとマイラ姉妹は、同じ容貌でありながら性格は似ても似つかず、お互いを遠ざけながら生きてきた。始まりは1950年代、核戦争の恐怖が日常生活にもはびこるアイゼンハワー政権下。保守的な女子高生マーナは「結婚こそ輝かしいゴール」として、すでにジムと婚約している。一方のマイラは「世間の常識なんかクソくらえ!」と考える反逆児。ある時、素行の悪いマイラを諭そうと、マーナに頼まれた婚約者ジムがマイラのもとへと向かうが……。演出/藤田俊太郎、出演/大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子ほか。2022年1月7日~31日。スパイラルホール(東京・青山)。
HP/ミネオラ・ツインズ | シス・カンパニー | SIS company inc.

※掲載商品はすべて税込み価格です

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