2019.12.20
興奮がとまらない! アメリカ3州の音楽と文化を巡る旅【第3回】
超陽気な音楽の都・ニューオリンズで、オヤジジャズとセカンドラインにハマる!
3週連続でお届けするアメリカでの“音楽に溺れる旅”。最後となる第3回はジャズ発祥の地、ニューオリンズをご紹介します。ジャズのイメージばかりをもって訪れてみたところ、そこは想像を超える音楽のるつぼ。アマからプロまで、熱いミュージシャンたちのプレイは旅の終点にふさわしい音色なのでした!
- CREDIT :
写真・文/大石智子
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趣ある街のアガるホテルにチェックイン!
街の建物は高くても4階建てで、赤茶、青、黄色と発色がよく、多くがバルコニーを備えます。そして、バルコニーには“アイアン・レース”と呼ばれるレース調の鉄製手すりが施されている。アイアン・レースは多くが黒く、ちょっと女性の高級ランジェリーの柄のようにも見えてきます。
すべてが繊細かつ趣たっぷりで、それでいてアメリカ南部らしい陽の強さとノスタルジックさも漂う。ニューオリンズ、着いて5分で大好きになりました!
「ソニア・ハウス」は白を基調とした内装にアンティーク家具が配された計33室の小さなホテル。「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」に加盟する。 https://www.slh.com/hotels/soniat-house/
ホテル内で最も豪華な約74㎡の「グランド スイート」。小さな客室は26㎡から。一室337ドル〜(HP上の2020年3月の料金)
道を挟んだ向かいに同じスタイルの客室棟をもつ。
ホテル中で寛ぐ「ソニア・ハウス」の重鎮、クレア。
美しいアイアン・レースが施された「ソニア・ハウス」の外観。
緑が茂る中庭にはお茶をするスペースもある。
「ソニア・ハウス」は白を基調とした内装にアンティーク家具が配された計33室の小さなホテル。「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」に加盟する。 https://www.slh.com/hotels/soniat-house/
ホテル内で最も豪華な約74㎡の「グランド スイート」。小さな客室は26㎡から。一室337ドル〜(HP上の2020年3月の料金)
道を挟んだ向かいに同じスタイルの客室棟をもつ。
ホテル中で寛ぐ「ソニア・ハウス」の重鎮、クレア。
美しいアイアン・レースが施された「ソニア・ハウス」の外観。
緑が茂る中庭にはお茶をするスペースもある。
近年は各国でリノベーションによるホテルが増えていますが、これほどもとのかたちに順じたホテルも珍しいでしょう。モダンさは極力控えめで、ある意味、200年のタイムスリップを味わう感覚です。
アンティーク家具が品よく配され、中庭も広く、クレアという猫が気まぐれにホテルをうろついているのがいいユルさを与えています。旧市街・フレンチクォーターにはご機嫌な酔っ払いが夜中まで騒がしい通りもありますが、このホテルの中はいたって静寂。ニューオリンズを再訪する時、私はまたここに泊まるでしょう。
ニューオリンズは路上が舞台となる街
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週末だったため、その後も結婚式のパレードを2組見ることになりますが、このようなブラスバンドを率いるパレードは“セカンドライン”と呼ばれるもの。ニューオリンズの葬儀のパレードから生まれたセカンドラインは、さらにたどると、奴隷として連れてこられた黒人たちの故郷アフリカでの音楽やリズムが由来となっています。
トランペットやトロンボーン、マーチングドラムなどから出るアップテンポな音楽は、有名どころでいうと『聖者の行進』のリズム。この曲もそもそもは葬儀パレードでよく演奏された黒人霊歌のひとつ。埋葬を終えたあとは明るい音楽を奏で、天国へ行くことを祝う意味があるとされています。故人の魂の解放を表すためにも底抜けに明るい。そんなアゲアゲなセカンドラインに、筆者も故人じゃないけど魂が解放されたのでした。
というわけで、人々の日常に音楽が根づいているニューオリンズでは、旧市街・フレンチクォーターのいたる所でさまざまなストリートミュージシャンに出会います。週末に10組以上は見かけ、例えば以下のような個性豊かな方々でした。
・ドリーンさん=クラリネットと歌が上手なジャズミュージシャン。実はCDを15枚以上出している有名人で、オーケストラにも呼ばれるような名人。どこに出没するかはその日次第。
・ドーナツ屋の前にいるオヤジ系ブラスバンド=トランペット奏者のエフレム・タウンズさんは、もとはグラミー賞をとったDirty Dozen Brass Bandというバンドに結成時からいたメンバー。
・青年タップダンサー=上半身裸で精悍な佇まい。
・高校生のブラスバンド=「テクはまだまだでも勢いは負けない」とは地元民談。
・バグパイプを吹くスコットランド人=セント・ルイス大聖堂の目の前というベストポジションにて、恐ろしいほどの肺活量でバグパイプを演奏。
人気ミュージシャンのドリーン・ケッチンズさんの周りにはいつも人が絶えない。隣で旦那さんがスーザフォンを吹き、見事な連携をみせる。
https://www.doreensjazz.comモリーンさんのはす向かいでタップダンスを踊っていた青年。子気味良いステップ音が通りに響く。
いつも行列のできるドーナツ店「Café Du Mondé」の前で演奏するバンド。彼らはチップを稼ぎ、客は列に並んでいる間も飽きないので双方にメリットあり。
新雪のような粉砂糖がどっさりかかった「Café Du Mondé」のドーナツ。口の周りもテーブルも必ず粉まみれになる。
https://www.facebook.com/Cafedumonde/若さ弾ける高校生ブラスバンドに1ドル札を入れる人多数。音量は負けない。
バグパイプを吹くスコットランド人男性の前には、曲が終わるまで敬礼する男性がいた。
人気ミュージシャンのドリーン・ケッチンズさんの周りにはいつも人が絶えない。隣で旦那さんがスーザフォンを吹き、見事な連携をみせる。
https://www.doreensjazz.comモリーンさんのはす向かいでタップダンスを踊っていた青年。子気味良いステップ音が通りに響く。
いつも行列のできるドーナツ店「Café Du Mondé」の前で演奏するバンド。彼らはチップを稼ぎ、客は列に並んでいる間も飽きないので双方にメリットあり。
新雪のような粉砂糖がどっさりかかった「Café Du Mondé」のドーナツ。口の周りもテーブルも必ず粉まみれになる。
https://www.facebook.com/Cafedumonde/若さ弾ける高校生ブラスバンドに1ドル札を入れる人多数。音量は負けない。
バグパイプを吹くスコットランド人男性の前には、曲が終わるまで敬礼する男性がいた。
そんなストーリーももつストリートミュージックを楽しむ際には、チップの準備をお忘れなく。リスペクトも賞賛もお金が表すと思えば、言葉の壁もありません。
ライブハウスでオヤジジャズに酔う
ジャズの聖地ともいえる「Preservation Hall」の前には、開演前になるとこの行列。ミュージシャンにとってもここで演奏することはステイタスとなる。チケット40ドル〜 https://www.preservationhall.com
中心地から離れた場所に住む地元の人たちが通うのは「Dos Jefes」のような場所。フレンチクォーターはクルマがとめられないので行かないという。入場料無料。 https://dosjefes.com
ライブ演奏のあるシガーバーである「Dos Jefes」では小さなもので3ドル〜、太いものでも10ドル前後のシガーを販売。
ジャズの聖地ともいえる「Preservation Hall」の前には、開演前になるとこの行列。ミュージシャンにとってもここで演奏することはステイタスとなる。チケット40ドル〜 https://www.preservationhall.com
中心地から離れた場所に住む地元の人たちが通うのは「Dos Jefes」のような場所。フレンチクォーターはクルマがとめられないので行かないという。入場料無料。 https://dosjefes.com
ライブ演奏のあるシガーバーである「Dos Jefes」では小さなもので3ドル〜、太いものでも10ドル前後のシガーを販売。
「子供の頃から家に人が集まると、自然とセッションが始まる環境がここにはあります。音楽は生活のなかにあるもので、やろうと思ってやっているものではない。ダンスも習うのではなく音楽がなると勝手に踊ってしまう。そういう時間が多くて、家族や親戚にミュージシャンがたくさんいる有名な音楽ファミリーがいくつもあります」
ちょうどこの会話の前に見たジャズライブの老舗「Preservation Hall」で演奏していたアーティストも、ボーカル兼トランペットは4世代目、トロンボーンは5世代目と、おっしゃる通り。
そして驚くのが、ニューオリンズのミュージシャンには楽譜が読めない人がたくさんいるという話でした。読めなくても十分活躍できるというのです。
「ニューオリンズの音楽は即興の嵐なので、楽譜を用意することはほとんどありません。あってもコード譜ぐらい。リハーサルも基本ないですし、テクがあってもほかの楽器と即興でうまくからめないとバンドでは呼んでもらえない。なので、音楽学校を出ずに耳で聴いて覚えた叩きあげのミュージシャンが多いですね。他の国のプロから見ると、普通じゃない指使いやコード進行と思う演奏もあるでしょうが、それが面白味になって独自のリズムやメロディが生まれます」
そんな話を伺いつつ、ライブハウスを引き続き巡ります。面白かったのが、ニューオリンズジャズの名所「Preservation Hall」のあとに行った中心地から離れたシガーバー「Dos Jefes」。地元民しかいないバーでは皆が気ままにシガーを吸い、お喋りをして、BGMはザディコの生演奏。
ザディコとはルイジアナ州のクレオール音楽に、ケイジャン音楽やブルース、R&Bが混ざってできた音楽で、アコーディオンが入るからかどこか懐かしく、シガーの煙とも絶妙に合ったのでした。
The Jazz Playhouse」ではニューオリンズ出身の87歳のヴォーカリスト、ジャーメイン・バズルが登場。ジャーメインも音楽一家に生まれ、幼い頃から耳で音楽を覚えた人。「The Jazz Playhouse」には定期的に出演する。入場料無料。 https://ja-jp.facebook.com/JazzPlayhouse/
「ナッチェス号」でのミシシッピ川クルーズのおすすめはランチジャズクルーズでひとり48ドル〜。クルーズだけのチケットも購入可能。
https://www.steamboatnatchez.comビュッフェでは南部定番の朝ごはんを用意。ビスケットに白いグレイビーソースをかけ、BBQシュリンプとともにいただく。
「ナッチェス号」のミシシッピ川クルーズでは、河岸に広がる工業地帯を見るのも興味深い。
The Jazz Playhouse」ではニューオリンズ出身の87歳のヴォーカリスト、ジャーメイン・バズルが登場。ジャーメインも音楽一家に生まれ、幼い頃から耳で音楽を覚えた人。「The Jazz Playhouse」には定期的に出演する。入場料無料。 https://ja-jp.facebook.com/JazzPlayhouse/
「ナッチェス号」でのミシシッピ川クルーズのおすすめはランチジャズクルーズでひとり48ドル〜。クルーズだけのチケットも購入可能。
https://www.steamboatnatchez.comビュッフェでは南部定番の朝ごはんを用意。ビスケットに白いグレイビーソースをかけ、BBQシュリンプとともにいただく。
「ナッチェス号」のミシシッピ川クルーズでは、河岸に広がる工業地帯を見るのも興味深い。
自分にとって今回ニューオリンズで聴いたジャズは楽しくもリラックスできるもので、いつも気負わず聴いていた。その理由と関係あると思ったのが、ガイドさんの「ジジイは音数が少なくていい」との言葉。以下、続きます。
「成熟したミュージシャンは余裕があるから音を無理に詰め込まず、大事なところはバシッとキメます。だからこちらも気負わずに楽しんで聴けるし、ちゃんと感激する瞬間もある。大人数になってもオレオレになりませんよ。逆に不安な人は音数が増えがち。漫才や落語もそうですよね」
何にでも共通するグサッとくる話を最後に聞き、ホテルでジャズを聴きながら帰国へのパッキング。2泊だけのニューオリンズはたくさんのリズムにまみれていたこともあり、本当にあっという間の滞在でした。音楽以外にもルイジアナ州の食のスタイルであるクレオール料理やケイジャン料理とともにワインを飲む時間もおすすめです。
そして、昼はストリートミュージシャンを観て、夜はライブハウスにふらりと入り、一日を成り行きで過ごす。そんないい音楽のあるゆるっとした時間は、特に忙しく働く大人にとって最高の旅となるでしょう。
ラスベガス、オースティン、ニューオリンズでの音楽と文化を巡る旅を終えたいま、思い起こすのは、やはりライブは格別ということ。それも、音楽の歴史が濃い街が舞台だったからこそ体感します。みなさんもカメラにおさまらない唯一無二の思い出を作りに、アメリカへの旅を計画してみてはいかがですか?
ルイジアナ州で食べられているクレオール料理にはよくオクラが使われる。というのも、この地にアフリカからの奴隷が連れられてきた時、彼らのポケットの中にオクラの種が入っており、それが育てられたから。写真は「Desire Oyster Bar」のナマズのオクラ入りトマトソースがけ。
「Desire Oyster Bar」では地元のオイスターも提供。シーフードは汽水(海に繋がる河川の水)独自の味わいがする。
クレオール料理を代表するのが、ガンボと呼ばれるスープ。「Desire Oyster Bar」のガンボはチキンストックにシーフードの旨味も加わり濃厚な味わい。必ずごはんを入れていただく。
1856年にオープンした「Tujague’s」ではバーにてニューオリンズらしいクラシックカクテルを楽しめる。グラスホッパーはこのバーが発祥。写真はブランデーミルクパンチとピムズカップでこちらも人気のカクテル。 https://tujaguesrestaurant.com/the-bar/
1920〜1933年の禁酒法時代にも、「Tujague’s」のバーの奥にある部屋ではこっそりカクテルが提供されていた。
世界中でおなじみタバスコ、マルキへニーの本社はルイジアナ州エイブリー島にあり、ニューオリンズでも日本未発売のタバスコを多数販売する。「TABASCO COUNTRY STORE® NEW ORLEANS」 https://countrystore.tabasco.com/visit-new-orleans
フレンチクォーターにあるレストラン「TABLEAU」では洗練されたクレオール料理を提供。写真はBBQシュリンプがかかった石うす挽きのグリッツ。グリッツとはとうもろこしの粉のおかゆで南部の主食。 https://www.tableaufrenchquarter.com
ストリートミュージシャンの音楽をBGMにテラスで一杯飲むのもニューオリンズらしい過ごし方。道端にはよく踊り出す人もいる。
「ルイジアナ・ミュージック・ファクトリー」はルイジアナ州の音楽を網羅するCDショップ。ニューオリンズはiTunesも見かけるがCDが根強い。
https://www.louisianamusicfactory.com
ルイジアナ州で食べられているクレオール料理にはよくオクラが使われる。というのも、この地にアフリカからの奴隷が連れられてきた時、彼らのポケットの中にオクラの種が入っており、それが育てられたから。写真は「Desire Oyster Bar」のナマズのオクラ入りトマトソースがけ。
「Desire Oyster Bar」では地元のオイスターも提供。シーフードは汽水(海に繋がる河川の水)独自の味わいがする。
クレオール料理を代表するのが、ガンボと呼ばれるスープ。「Desire Oyster Bar」のガンボはチキンストックにシーフードの旨味も加わり濃厚な味わい。必ずごはんを入れていただく。
1856年にオープンした「Tujague’s」ではバーにてニューオリンズらしいクラシックカクテルを楽しめる。グラスホッパーはこのバーが発祥。写真はブランデーミルクパンチとピムズカップでこちらも人気のカクテル。 https://tujaguesrestaurant.com/the-bar/
1920〜1933年の禁酒法時代にも、「Tujague’s」のバーの奥にある部屋ではこっそりカクテルが提供されていた。
世界中でおなじみタバスコ、マルキへニーの本社はルイジアナ州エイブリー島にあり、ニューオリンズでも日本未発売のタバスコを多数販売する。「TABASCO COUNTRY STORE® NEW ORLEANS」 https://countrystore.tabasco.com/visit-new-orleans
フレンチクォーターにあるレストラン「TABLEAU」では洗練されたクレオール料理を提供。写真はBBQシュリンプがかかった石うす挽きのグリッツ。グリッツとはとうもろこしの粉のおかゆで南部の主食。 https://www.tableaufrenchquarter.com
ストリートミュージシャンの音楽をBGMにテラスで一杯飲むのもニューオリンズらしい過ごし方。道端にはよく踊り出す人もいる。
「ルイジアナ・ミュージック・ファクトリー」はルイジアナ州の音楽を網羅するCDショップ。ニューオリンズはiTunesも見かけるがCDが根強い。
https://www.louisianamusicfactory.com
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アメリカン航空で音楽の旅へ!
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● 大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。SDエイバルファン。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。