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2023.05.07

地獄どころか、天国! 「界 雲仙」の地獄パワーに、あぁ昇天!

長崎県・雲仙に開業した「界 雲仙」。実際に行ってみたら、驚いた! ボーボーとあちこちから白い煙が立ち上る噴気地帯、いわゆる“地獄”のど真ん中に建つ、なんという非現実感! 館内は一変して、女子ウケしそうなレトロで華やかな長崎文化。このギャップ、刺激的です。

CREDIT :

文・写真/古関千恵子

LEON.JP 界 雲仙 星野リゾート
▲ 日本初の国立公園にして、日本初のユネスコ世界ジオパークでもある雲仙温泉。

地獄の只中に花開く、和華蘭文化の温泉旅館「界 雲仙」

かつて「温泉」と書いて「うんぜん」と読んでいたこと、ご存知でした? 1934年に日本初の国立公園として「雲仙天草国立公園」が指定された際、今の「雲仙」の文字があてがわれたそうで、それまでここの地名は「温泉」だったとか。まるで温泉の代名詞のような雲仙温泉に、2022年11月に「界 雲仙」がオープンしました。

「王道なのに、あたらしい。」をテーマに掲げ、星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド「界」。22番目の施設となる界 雲仙のコンセプトは、「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」です。
界 雲仙が位置する“雲仙地獄”は、水蒸気を含む火山ガスが白い煙となって、あちこちから噴き出している噴気地帯。あたりはツンとした硫黄の香りが充満しています。先人たちが地獄に例えたくなるのも、納得。そして、ここまで温泉が近くに感じられる土地は、とても珍しいそう。

ちなみに、雲仙のある島原半島は海岸線に小浜、ここ雲仙、そして山を越えたところに島原の3つの温泉郷があり、同じマグマだまりから生じているものの、それぞれ泉質が異なります。しかも雲仙は2つの源泉が混じった“酸性、岩鉄‐単純温泉”。晴れた日は白く(硫黄成分が多い)、天候が崩れると茶褐色(鉄分が多い)など、1泊の滞在で異なる色の温泉が楽しめることも。
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また、長崎は鎖国時代、出島のオランダ商館医たちによって海外に紹介されたことから、外国とのつながりがある地。様々な文化が行き交う交差点のような地勢にあり、和(日本)・華(中国)、蘭(オランダなど西欧)がちゃんぽんした独自の文化が発展してきました。館内のデザインや食事などあらゆるシーンに、このどこかレトロで華やかな和華蘭(わからん)文化がちりばめられています。

すべてご当地部屋。世界初かもしれない客室付き露天風呂とは?

デザインを担当するのは、杉本貴志が設立した空間デザインの匠、スーパーポテト。

客室数は51。界の各施設では“ご当地部屋”なる、その土地の文化を取り入れた客室がありますが、ここ界 雲仙はすべてがご当地部屋にあたる“和華蘭の間”になります。
ステンドグラスのモチーフが使われた、客室を仕切るステンドグラスやスタンドライトに、和華蘭の要素がうかがえます。そして部屋に飾られた波佐見焼きや古賀人形、客室によっては長崎唯一の手織りの反物の島原木綿など、ご当地ならではのアイテムも。

ずばり、注目したいのは全51室中、16室を占める「客室付き露天風呂」! 客室スペースの半分以上が露天風呂のお部屋です。リビングを取り払い、露天風呂とベッドルームの境界に、チェアを置く湯上がり処をしつらえています。つまり主役は露天風呂で、客室に泊まることもできるので、“客室付き”なのです。これ、世界初かも⁉
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地獄に向かってせり出したような湯船は、地獄パワーの象徴でもある“湯けむり”の眺望を存分に楽しめる特等席。日中は雲が流れる空の下、夜は漆黒の宵闇の中、変幻自在に形を変える湯けむりは、何時間でも眺めていたくなります。
露天風呂→自室の湯上がり処のソファでくつろぐ→ふたたび露天風呂の、エンドレスなループ。そして、いつも視界には雲仙地獄の湯けむりの眺望。温泉三昧、地獄三昧、まさに極楽です。

別棟の大浴場も、地獄パワーと和華蘭文化

界 雲仙の温泉は、成分が濃厚。そのため、長湯をすると疲れてしまいます。入浴は1日1~2回程度、お風呂から出る時は真水で温泉成分を落とす“上がり湯”を行えば、湯あたりや湯ただれを防げます。また、保湿もお忘れなく。

別棟に建っている大浴場は、2つの浴槽からなる内風呂と、露天風呂からなります。
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内風呂の2つの浴槽のうち、ひとつは源泉かけ流しの「あつ湯」、もうひとつがリラックスできる「ゆる湯」。交互に入り、温泉の効用をたっぷり享受しましょう。

そして和華蘭をエッセンスに取り入れた、外界との仕切りのステンドグラスが実にカラフル。光が差し込む午前中は、色とりどりの光が揺れるお湯が楽しめます。

一方、露天風呂は野趣あふれる岩風呂。雲仙地獄のたちのぼる湯けむりが愛でられ、背後の山容も見どころです。

湯上がり処には橙ほうじ茶と、びわ酢が置かれています。実は、長崎は枇杷の生産量が日本一なのです。
また、効率よく温泉を満喫するために、参加しておきたいのが「温泉いろは」。「界の湯守」のスタッフが温泉の歴史やエピソード、入浴時の呼吸法などを伝授してくれます。

さらに温泉いろはでは、雲仙地獄へ行くフィールドワークも。この地域で100年前から利用されていた地熱を活かした給湯設備「燗付け」を見学します。実は、界 雲仙でも給湯や温泉の加温、空調などに燗付けを利用。地熱を有効活用することで、二酸化炭素排出を減らしています。ゆくゆくは自然エネルギー自給率50%を目指しているそうです。
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長崎の名物や食文化を、コース料理でたっぷりと!

夕食の特別会席においても、和華蘭文化が取り入れられています。長崎発祥の宴会料理、卓袱(しっぽく)料理をモチーフにした、器も見どころなコース料理がいただけます。
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▲ 先付けの「“鬼やらい”湯せんぺい 豚角煮リエット」。小づちで湯せんぺいを割って、いただきます。
界ブランドの各施設では、その地域で親しまれている食材を使いつつ、意外性のある組み合わせや新たなる調理法を取り入れた “ご当地先付け”を提案しています。界 雲仙では卓袱料理に欠かせない豚角煮に、島原の納豆味噌をあわせたリエットが、それ。邪気を払う“鬼やらい”のように、湯せんぺいを木槌でたたいて砕き、それにリエットを付けてパクリ。おせんぺいのぱりぱりとした食感が楽しく、豚の甘く滋味深い味わいが口の中に広がります。
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▲ 卓袱料理の赤い円卓に見立てたお盆で供される、酢の物、八寸、お造り。
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続くは、酢の物、八寸、お造りを一緒に盛り合わせた「宝楽盛り」。卓袱料理の丸い円卓をイメージした、鮮やかな朱色の器に盛られて運ばれます。海藻のいぎす草の煮汁を固めた郷土料理の“いぎりす 酢味噌”やずわい蟹の小袖寿司など、彩も華やか。なかでも、おかわりしたいくらいだったのが“フォアグラ干し柿”!

メインの台の物は「あご出汁 しゃぶしゃぶ」。あご出汁に和牛ロースや伊勢海老、フグをくぐらせ、いただきます。時に柚子の香りの“ゆべし”でアクセント。〆は島原うどんで決まりです!
デザートは枇杷のかんざらし 界 雲仙風。かんざらしは、上品な甘さのシロップに白玉を浮かべた島原半島の甘味。ここでは名産の枇杷の種の甘露煮を添えて。

コースを通して、長崎の名物が楽しめるメニュー構成。隠し味のように上品な甘みが取り入れられているのが印象的です。というのも、長崎は実は日本で最初に砂糖が持ち込まれた地。味覚を通して、長崎が感じられます。
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▲ 朝食も、大地のパワーと長崎文化を味わうメニュー。
翌日のあさごはん「ご当地朝食」も、大地のパワーと和華蘭文化を取り入れた内容。メインは島原地方の郷土料理の「具雑煮」。あご出汁の中に豆腐やかまぼこ、丸餅などが入った鍋料理で、天草四郎が兵士たちにふるまったとされています。源泉で蒸した人参のジャムをのせたヨーグルト、そして豚の角煮も、ご当地ならではです。
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活版印刷を体験し、アクティブに地獄を体感!

界ブランドには、各施設で共通したいくつかの“おもてなし”が用意されています。

そのひとつ、「ご当地楽」では、その土地の文化を体験します。界 雲仙では活版印刷に挑戦。まず歴史やエピソードを知り、さて実践です。

様々な書体の活字から好みのものを選び、枠に並べ、配置します。そしてかつて実際に使われていた活版印刷機でカードに転写。かすれ具合も味わいの、カードの完成です。旅の記念になりますね。
翌朝の「現代湯治体操」では、その土地のカギとなる動きを取り入れた、体操やストレッチを行います。界 雲仙では、雲仙地獄に住む鬼になりきった一連の動き。恥ずかしがらずに思い切り行うのが、ポイントです。

続く「雲仙地獄パワーウォーク」では地下足袋をはき、特別な作務衣と、杖を手にして雲仙地獄を一周します。朝の雲仙地獄は観光客も見かけず、ほぼ貸し切り状態。たちのぼる噴気や白い湯気の中を、いつもより早足で、全身を使ってウォーキングします。地下足袋から伝わる地熱も、大地からパワーをもらっている気分。
最後は旧八幡地獄にある広場で、寝そべり、ストレッチとリラックスタイム。背中で地熱を感じつつ、見上げる空は気分も晴れやかに。さぁ、宿へ戻って、お待ちかねの朝食です。
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■ 界 雲仙(かい・うんぜん)

住所/長崎県雲仙市小浜町雲仙321番地
TEL/予約050-3134-8092(9:30〜18:00)
HP/https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiunzen/

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