2020.07.24
ニューヨークのコロナ禍ニューノーマル「プラントベース」って何?
世界的にも新型コロナウイルスの震源地となったニューヨーク。この街に限れば感染者数は下降線をたどり、通りにもだいぶ活気が戻って来ましたが、実は今回のパンデミックによって新たなトレンドや生活様式が生まれています。今までとは違う、これからの「ニューノーマル」なニューヨークライフをお届けします。
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写真・文/Reiko Suga
日本は緊急事態宣言といっても法的拘束力はなく、個人個人の判断に任されているといった印象でしたが、アメリカは「えぃや〜!」とばかりに強制的にロックダウンに突入。ニューヨーク州知事やニューヨーク市長からのお達しでいきなりレストランが無期限休業となったり、オフィスが閉鎖されたりと、強制感がものすごくてびっくりしたものです。
一時は地獄絵図のごとく1日に700人近くが亡くなっていたマンハッタンも少しずつ再開に向かって動き出しています。それでも多くの人が一時的にアップステートと呼ばれるニューヨークの郊外での疎開生活をしたり、実家に戻るなどして感染防止のためにマンハッタンを離れ、今も通常の半分ほどの人しか戻ってきていないと言われています。
コロナウイルスの猛威や人種差別に絡んだ暴動を見てもお分かりのとおり、アメリカはいい意味でも悪い意味でも世界の話題を牽引する存在です。ですので、いくら自宅待機の生活をしていても、今までは考えられなかったようなトレンドが出てきたり、世の中は動いていることを実感させられます。
コロナ禍でヘルシー志向に開眼した人たち
「ビーガンやベジタリアンとそもそも何が違うの?」といった疑問が湧くところですが、プラントベースの食事法を選択する人は、植物性食品を積極的に摂るものの、肉や魚をまったく摂取しないというわけではありません。
ビーガンやベジタリアンのような厳格な決まりはなく、例えば動物愛護などの観点からリアルレザーやファーの製品も身につけないビーガンのような規則もないため、比較的手軽にスタートすることができます。むしろ最近はベジタリアンやビーガンの人々が持つ強い信念を懸念する人も多く、プラントベースは健康を意識する人に徐々に広がってきています。
アメリカではコロナウイルスが蔓延した3月半ば以降〜5月半ばまでで、最大手「ビヨンド ミート」社の売上は対前年比約240%の伸長率を見せており、いわばコロナ特需の企業のひとつとなっています。
かくいう私もそうですが、コロナウイルスが蔓延してから、それまで夜中まで飲み歩いていた生活が嘘のように、早寝早起きへとチェンジし、外食生活から自炊をするようになった、そんなかたたちも多いと思います。
コロナ禍でのライフスタイルのチェンジによって時間ができた人も多く、エクササイズや自炊によって健康志向に開眼した人が多く、プラントベース市場はますます拡大してきています。
また、プラントベースの食品は環境への負荷が少ないことでも知られます。コロナ禍において中国はもちろん、アメリカでもロサンゼルスでPM2.5が40%減少するなど、世界各地で大気汚染の改善が報告されています。こうしたニュースを見た人々が「小さなことからできる環境改善」を目標に掲げ、個人レベルから環境に優しい生活にシフトチェンジしています。
「肉は環境に悪い」というスローガンをなんとなく知っているかたも多いと思いますが、実際にプラントベース ミートを使用したプラントベース バーガーとリアルな肉で作ったハンバーガーと比較してみると、水の使用料、森林伐採の面積、温室効果ガスの排出量すべてにおいてプラントベース バーガーでは90%以上削減されています。こんなに違うんだ! と驚きを禁じえません。こうした背景からもプラントベースが支持されているというわけです。
個人的にも“断肉”はきついけれど、「地球に優しい生活がしたい!」との思いから、プラントベースにも意識が向くようになりました。でも、「ぶっちゃけ味は美味しいの?」という疑問が湧いてきますよね。そこでさまざまなプラントベース食品を試してみました。
あれこれ言っても味が重要!
アメリカの「ホールフーズ」の精肉コーナーに初めて導入されたこちらのブランドは創業者のイーサン・ブラウン氏がアメリカの再生エネルギー会社で働いていた際に、エネルギー効率をあげるよりも家畜によるCO2を削減した方が効率的だ、とスタートしたブランド。なので、創業者の環境に対する強い想いとデータによる裏付けがあります。さっそくクッキング……。
ファストフード大国アメリカでは「ウェンディーズ」や「バーガーキング」、「タコベル」でもプラントベース ミートを使ったハンバーガーが登場しています。日本では「モスバーガー」がバンズの代わりに野菜を使ったバーガーや、コメダコーヒーがプラントベースメニューを提供する喫茶「コメダイズ」を銀座にオープンするなど、日本でも確実にトレンドがきています。
また、プラントベース ミートを作る会社のほとんどは本拠地をシリコンバレーに構えていることからもわかるように、テクノロジーとの蜜月関係にあり、今後も面白い展開が期待できる未来の産業です。
日本はもともと海の幸も豊富ですし、古くから精進料理もあったり、とアメリカとは食生活も違うのは明白です。それでもコロナ禍において加速する環境問題への意識が高まるこのご時世、スマートな生き方をするなら、こんなニューノーマルな食生活を実践してみてはいかがでしょう?
● 菅 礼子
LEON編集部で編集者として勤務し、2018年に渡米。現在はニューヨーク在住、LEON特派員。ニューヨークのライフスタイルの情報から世界中の旅の情報までを執筆している。