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2020.12.08

そして、私は「フォーシーズンズホテル東京大手町」に帰りました

今年の9月1日、日本で3軒目となるフォーシーズンズホテルがオープンしました。同ブランドの丸の内、京都とまた違う魅力でゲストを迎え入れるその空間は、まさに大人の遊び場。年末を過ごすにもぴったりなホテルの見所をお伝えします。

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文/大石智子

東京のホテルを楽しむ時がやってきた

ホテルライターでもある筆者はこれまで国内外のホテルのリサーチに精を出してきたのですが、2020年は状況がガラリと変わりました。海外に行けない分、マイクロツーリズム、主に東京再発見に開眼。一般客として改めて東京のホテルを探検しようと、現在週2でホテルを自費リサーチしております。

いましかできないと勢いがついてしまって、AMEXの請求を薄目で見る日々。いや、でもホテルでは遊びながら仕事もできる。それに客室でおこもりすれば3蜜とは無縁。多くのホテルの飲食店がもとから席間隔に余裕をとっているので、ソーシャルディスタンスも自然と確保できます。

そして、宿泊済みの数軒で実感したのが消毒の徹底。棚の取手からテレビのリモコンまで丁寧に拭いていることが分かり、切実な現状が伝わってくるのです。

そんなホテル中毒の私がついさっき2度目の宿泊を終えチェックアウトしたのが「フォーシーズンズホテル東京大手町」。一休.comで検索したところ、Go To利用で18時チェックアウトの27時間滞在プランが3万4521円だったのです。先週の「ザ・ペニンシュラ東京」の38時間滞在でも思ったのですが、やはりレイトチェックアウトは住人気分が増す。

特に「フォーシーズンズホテル東京大手町」はアーバンリゾート感が強いので、仕事の山を抜けたあとのリフレッシュには最適。余韻ひいちゃってチェックアウト後の19時現在、ラウンジでこれを書いています。

9月に宿泊済みのホテルになぜ戻ってきたかというと、シンプルな話、ステキな時間を過ごせたから。二度目はどんな感情をもつか知りたかったのです。では、全貌をご紹介。
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39Fに上がることで自然とアガります

▲ オフィス然とした三井物産(右)の隣に突如オレンジの入り口が表れます。
去る9月1日にオープンした「フォーシーズンズホテル東京大手町」は、「大手町ワンタワー」の34〜39階が施設。そのため地上エントランスは小ぢんまりしているのですが、神社の鳥居をイメージして起用したという朱色の壁が鮮やかでして、落ち着いた配色の傾向があるフォーシーズンズとのギャップをのっけから感じます。
▲ エントランスのムードメーカーになっている米国ジョージア州出身のジョージさん
また、ここにいるドアマンのジョージさんがカラッと陽気な人で、エレベーターの扉が閉まる瞬間に笑顔で“Have a nice day!”と言われたりすると、初見でも気持ちがゆるむ。かしづくサービスとは違う、新鮮な風が吹いたのでした。
▲ 39Fのエレベーター前。窓際の絶景に気をとられ水盤に落ちてしまう人も時々いるとか。
そして、入り口が小さいからこそ、39階に着いてエレベーターが開いた時に「おぉ」と高揚のスイッチが入ります。目の前には高層階から眺める東京のスカイラインが広がり、夕刻以降は夜景が輝く。窓の前に張られた水盤が絶景を際立てる額縁となり、ホテル気分を盛り上げます。
▲ カウンターとその周りの席が「THE LOUNGE」。右だけみればスタンダードなフォーシーズンズのようで、左の壁は大胆な和テイスト。
奥に進むほどにワンダーランドとなる構成で、大きな窓を右手に歩いていくと、まずは「THE LOUNGE」があり、そこを左折するとレセプション、突き進むとイタリアンの「PIGNETO(ピニェート)」があります。

この三叉路に立った時に気づくのが、浮かれた大人達のエネルギーとでもいいましょうか。決してうるさいわけではなく、景気がいいアジアの都市のホテルで感じる、“大人の遊び場”といったムード。なぜそういう空気感かといえば、ズバリ、4軒のダイニング&バーが華やかだから。では、全制覇していただきたい店舗を一軒ずつ紹介していきます。
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◆ イタリアン 「PIGNETO(ピニェート)」

キャビアが舌の上で転がったあとにもっちり生地と一体化! 
この冬は“キャビア ピザ”で覚醒しましょう

▲ 162席ある「PIGNETO(ピニェート)」はさまざまなテイストの席を揃え、ひとりごはんからデート、会食まで何にでも利用しやすい。
まず気楽に行っていただきたいのが「PIGNETO」です。ここではイタリア人のピザ職人アレッサンドロさんがキーパーソン。ピザを焼き始めて15年という彼がイタリアから取り寄せた粉を使い窯で焼くピザは、一度食べたらその香ばしくもっちりした生地にハマってしまう。筆者はすでに3回リピートしています。

席数も多いですし、「今晩、ピザ食べない?」と気分のままにシェアする相手を誘うのがいい塩梅(遅めの時間は入りやすい)。ピザというカジュアルな食事でありながら、その舞台はフォーシーズンズであり、夜景も効いて気分は優雅に…というズルい展開です。
そこへ決定打となるのが、“キャビア ピザ”であります。これがまたメニューのど真ん中に書いてあり、目に入ったら最後。ふたりにとってお初の可能性が高いキャビア ピザをいっしょに試したくなるじゃありませんか。

登場するのは贅沢にもフランス産キャビア1缶30gとモッツァレラのピザ1枚。セルフでキャビアを好きなだけピザにのせていただきます。塩味がまろやかなので、ぜひ豪快にどうぞ。最初の一瞬は舌の上でキャビアがいたずらに転がるのを感じられて、次に噛むことで卵が潰れて生地と一体化する。

アレッサンドロさんの生地は水分量を含みほどよい弾力があるので、それがキャビアのぬめっとした食感と絶妙にハマります。さらにチーズの油分が小麦の香りと海の香りを繋げ、魅惑の三位一体に。ほんと、これは極上の卵かけピザ! 風味が残っているうちにスプマンテを流し込めば完結です。
▲ 4〜10月は東京の街を一望するテラス席が気持ちいい。
あともうひとつ、ここで覚えておいて欲しいのは、4月から10月は108㎡もの広さのテラス席がオープンすること。東京を一望する立地で、こんな高層階かつダイナミックなホテルのテラスは東京初。春以降、筆者的には「PIGNETO」のフリーフローがNO.1です。
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◆ est (エスト)

周りまわって、いまクリスマスはホテルのフレンチが気分! 
それも最新かつハイセンスなら行く前から喜ばれます

▲ 上品なベージュのグラデーションで統一された「est(エスト)」の店内。ランチコース6品1万円〜、ディナーコース9品2万円〜。
直感で誘うなら「PIGNETO」がいいですが、記念日や年末のご褒美ディナーなら「est」へ。腕をふるうのはミシュラン2つ星「キュイジーヌ[S]ミッシェル・トロワグロ」で長年エグゼクティブシェフを務めたギヨーム・ブラカヴァルさん。そしてパティシエはギヨームさんと8年コンビを組んできたミケーレ・アッバテマルコさんです。つまり、9月オープンという新しいレストランにして、確かなレベルの料理をいただける安心感がもててしまう。
▲ ズッキーニと海老のアペタイザー(日により変更あり)はコンパクトながら存在感のある味わい
そうして食べると、安心は驚きへ。トロワグロを離れ、今度は自分自身を表現することになったギヨームさんの瑞々しい感性が炸裂しています。日本に8年以上住み、日本の食材を深く愛するギヨームさんの料理は、フレンチの技法を通してこの国の季節の美しさをお皿へと落とし込んだもの。
▲ 軽やかな食べ心地のなかに素朴な豆の味を感じられる豆腐のチーズ。
▲ スタッフのみなさんのユニフォームもこの通りスタイリッシュ。
アペタイザーからギヨームさんのセンスのよさはすぐに伝わるもので、クリスピーな生地にのる赤座海老と海藻クリームの美味しいことといったら。シトラスを効かせた豆腐チーズの淡い口溶けも、肉汁を閉じ込めたホロホロ鳥の食感も、すべてどこか刹那的で、だからこそもう一度体験したくなる味わいです。
▲ ホテル初のクリスマスケーキにも注目。赤ワインとラズベリーのジュレ、イチジクのコンポート、ダークチョコレートのムースが重りシャンパンに合う食べ心地です。7800円(要予約、引渡し期間は12月1〜12月28日)
そんな「est」は、12月はクリスマスコースや年末限定コースも用意。一年を艶やかに締めくくるのにこのうえない場所でありますよ。
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◆ バー 「VIRTÙ(ヴェルテュ)」

向かうは本棚の先の桃源郷! 
ここではカクテルを選ぶ時間もお楽しみ

▲ バー「VIRTÙ(ヴェルテュ)」に向かう本棚に囲まれた回廊
「フォーシーズンズホテル東京大手町」のマジックは、「est」や「PIGNETO」で食事したあと、まだ帰りたくない気分になってバー「VIRTÙ」に吸い込まれてしまうこと。

もちろん、外からの1軒目や2軒目にも最高です。何がいいかって、バー「VIRTÙ」に向かう導線がステキ。それは本棚に囲まれた回廊で、棚には料理やお酒にまつわる本がずらりと並びます。ベンチもあるので入店前後に少し腰をおろして本を手にとるのも楽しいでしょう。
また、通り道となるラウンジ、本棚の回廊、「VIRTÙ」の3箇所で流れる音楽が異なるので、それもストーリー性が上がる演出。店内は大理石の床にクラシックな絨毯、レザーのカップルシート等、重厚なマテリアルが基本にありつつも、壁に着物生地を効かすなどディテールはちょっとエキゾチック。
▲ まるで大人の絵本のようなカクテルメニュー。カクテルのテイストごとに章で区切られ、例えばこの見開きは“名誉”がテーマ。
カクテルメニューは米国出身のヘッドバーテンダー、ジョシュア・ペレズさんが日本文化にインスパイアされ考案したもの。江戸時代の男女のイラストが各頁に描かれお酒を選ぶ時間も盛り上がります。和の要素が随所にあるのに不思議と外国気分になれるこのバーは、夜遊び気分を存分に満たしてくれますよ。
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◆ THE LOUNGE (ザ ラウンジ)

ラウンジこそ、ホテルのテンションを
直に感じられる空間であります

▲ 窓側のテーブル、カウンター、ロビー側のテーブルと3エリアに分かれる「THE LOUNGE」
客室とホテル内の全店舗に向かう人が必ず通ることになるのが「THE LOUNGE」。人の流れと39階の眺望の間にあるこの空間の、流動的な雰囲気好きですね。アフタヌーンティーの時間帯は混み合うので個人的には午前中や夜が心地いい。仕事が捗り打ち合わせにも向いています。

毎日夕方18時からは生演奏が始まり、ステキだったのがここで誕生日を祝う男女がいたこと。バースデーソングが演奏されると自然と通りがかる人も足をとめてふたりに拍手。レストランでのお祝いもいいですが、ラウンジでさり気なく「おめでとう」を伝えるのも、いい思い出になるだろうと感じました。

2度目の宿泊では客室に26時間おこもりしてしまいました

▲ 「デラックスルーム 皇居御苑ビュー」(50〜54㎡)は室内のどこで寛いでいても空を近く感じられる
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計190ある客室は34階から38階に位置し、すべてが49㎡以上。前回も今回も「デラックスルーム 皇居御苑ビュー」に泊まり、部屋に入ってまず目に入ったのは大きな窓の向こうに広がる緑とその先の街並み。なにせ手前が皇居御苑ですから、前に高い建物が何もなくて抜け感このうえなし。茂る森のしばらく先にジオラマのように新宿や渋谷のビル群があり、どこか浮世離れした絶景なのです。

そんな眺めをいかすのが、世界的デザイナーであるジャン・ミシェル・ギャシーが手掛けた内装。彼をトップとするデザイン事務所といえば、各国のアマンをはじめとする誰もが憧れるホテルを生み出す集団。いつか来る次の旅先をその事務所のHPから決めてもいいくらいです。

「フォーシーズンズホテル東京大手町」はベッドボードのグレーを基調に静かな配色でまとめられ、家具の座り心地や肌なじみのよさは流石のセレクト。窓際のデイベッドに横になって外を見ているだけで、あっという間に時間が経ってしまう。2回目の宿泊は曇天で、それでも気分がよかったのは客室の雰囲気がいい証。
▲ 「デラックスルーム 皇居御苑ビュー」のバスルーム。向かいにあたるビルの遠いこと!
導線も使いやすく、広いクローゼットとバスルームを寝室と隔てるのではなく、馴染ませるようにレイアウトしているのもいい。また、バスタブが窓際にあるホテルは都内にいくつかありますが、私が泊まった37階の「デラックスルーム 皇居御苑ビュー」の場合、視界に入るビルは数キロ先だったので、そりゃカーテンを閉めずに入りますよね。音楽かけて湯船で空と遠くのビル群を見てたら、夢うつつに……。
▲ 東京の絶景を前にいただく和朝食。
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バスタイムを長めに、2度目の宿泊では、仕事、風呂、テレビ、酒、仕事、風呂、仕事、和牛バーガーといった流れで、27時間の宿泊プラン中26時間客室にいました。いや〜、ホテルの客室で誰にも見られずにハンバーガーにかぶりついてビールを飲む多幸感といったら。
あ、最後にもうひとつ、客室に置かれていたお菓子が「草加煎餅 大辛」だったのがツボでした。普通、外資のラグジュアリーホテルが置くお菓子は誰もが美味しいと思う無難なもの。それがこの煎餅、めちゃくちゃ辛くてヒーヒーいっちゃう。そんな遊びともとれる攻めの姿勢、好きです(お菓子は時期により変更します)。
というわけで、以上が「フォーシーズンズホテル東京大手町」に2度宿泊してみて記憶に残ったあれこれ。やっぱりホテルに泊まるからには日常の忙しなさを忘れる環境を期待しますが、同ホテルはそんな気持ちに応えてくれる場所。
と……、ここまで原稿を書いたところで、「THE LOUNGE」の男性スタッフに飲んでいるカプチーノの味はどうかと話しかけられました。そして、明らかに私が仕事をしているからか、IDÉEの紙袋をもっていたからか、「IDÉEのこと書いているんですか?」と聞かれました。

いい! 推測でコミュニケーションとってくるテンション、いい! 面白くなって、彼におすすめのカクテルを聞いて頼むことにしました。実は仕事中だからとカプチーノにしたけど、本当はお酒が飲みたくて迷ってやめた。その気持ちの蓋を開けられました。ほうじ茶とウイスキーのカクテル、美味しかったです。

また来年、3回目の宿泊があるかもしれませんね。

■ フォーシーズンズホテル東京大手町

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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