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2021.05.02

【比較分析!】 最旬東京ライフスタイルホテル10 [その4]

注目ライフスタイルホテル「MUJI HOTEL GINZA」と「青山グランドホテル」

東京を中心に近年次々と開業している「ライフスタイルホテル」と呼ばれるホテル。デザイン性が高くしっかりしたコンセプトをもった個性的なホテルが多く、その魅力は様々。本特集では注目の10軒をご紹介します。今回は「MUJI HOTEL GINZA」と「青山グランドホテル」をピックアップ。

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写真・文/古関千恵子

最近、よく耳にする「ライフスタイルホテル」。これまでのホテルと何が違うのか? なんとなくわかっているようで、実際のところ曖昧だったりしませんか? そこで東京のライフスタイルホテルの最新10軒を5回に分けてチェック。それぞれコンセプトも、ロケーションも、サービスも様々。正直、どこに泊まるかで“東京”の印象もガラリと変わります。これを読めば、自分にぴったりのライフスタイルホテルが見つかるはず。今回ご紹介するのは「MUJI HOTEL GINZA」と「青山グランドホテル」です。
▲ 「ATELIER MUJI GINZA」のカウンターカフェ「Salon」。(c)Nacasa & Partners
きちっとした定義はないけれど、ライフスタイルホテルとはデザイン性が高く、しっかりとしたコンセプトを持ち、地元とのつながりを大切にしているという点が共通しているようです。そしてゲスト同士や地元の住民、スタッフとのコミュニケーションの場であることが、ポイントでしょう。

今回はデザイン性を備えつつ、他とは違う個性きらめくホテルをピックアップ。エッジが尖っていると、目的もはっきりするので、選びやすいですね。

■MUJI HOTEL GINZA

華美でもチープすぎでもない、“ちょうど良い”。無印良品を体現したホテル

無印良品の世界的フラッグシップストアとなる「無印良品 銀座」と同時に、2019年4月開業したコチラ。深圳、北京に続く、世界で3番目となる「MUJI HOTEL GINZA」は、無印良品の思想をそのまま体現しているホテルです。
▲ 6階にあるフロント。背後の壁は路面電車の敷石をパズルのように組み合わせてあります。(c)Nacasa & Partners
コンセプトは「アンチゴージャス、アンチチープ」。ちょうど良い価格で、よく眠れる心地よい空間と、ゲストと土地を繋げるサービスを提供しています。そして目指すは、銀座という土地を、より深く味わい、楽しめるホテル。だからデザインにおいても、銀座の街遊びから戻って、くつろげる場であることを心掛けています。
▲ 客室に置かれた無印良品のコンセプトブック。
建材は木・石・土など、自然の素材を中心に使用。また、時を経た風合いの豊かさが感じられる素材を、共用部分に巧みに取り入れています。たとえばフロントの背後の壁には東京で100年以上前に走っていた路面電車の敷石、レストランの壁に船の鉄板など、無印良品らしいセンスが光っています。
ちなみに、無印良品のアプリ「MUJI passport」をダウンロードしておけば、チェックイン後はスマホがルームキー代わりにもなります。
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徹底した安眠の追求や効率のいい配置、居心地の良さが詰まった客室

▲ もっとも部屋数が多いタイプC。広さは24~25平方メートル。
客室は、6階のフロントより上、7~10階に79室。畳の入った部屋や二段ベッドの部屋、3~4人で利用できる部屋など、全部で9タイプを数えます。
ドアから窓に向かって細長い間取りが多く、バスルーム、デスク、リビング、ベッドルームが配置されています。広さは14~52平方メートル。天井高は3メートル弱と高く、備品も引き出しにすっきりと収納されているので、圧迫感は一切ありません。室内を動くのにも、効率的な配置です。
▲ すっきりと収納できるアイデアは、普段の暮らしの参考に。
安眠に関しては、あの手この手の仕掛けを用意。眠りと姿勢の研究に基づくマットレスや、自然な眠りに導く照明を採用。客室内のタブレットを使って、時計のアラームとカーテンの開閉、照明を連動させることもできます。深い眠りの後に自然の光で目が覚めることの気持ちよさ、ぜひ体験してみてください。

また、手に触れる細やかな触感も大切にしています。バスルームのシンクのすべるような曲線やマットな肌触り、床のオーク材など、無意識のうちに触感の気持ちいいツボを突いてきます。ちなみに、バスルームのシャワーはハンドとレインの2タイプ用意しています。
フロアライトや壁掛けBluetoothスピーカー、時計、アロマデュフューザー、空気清浄機、冷蔵庫内のドリンクなど、どれも無印良品のアイテム。使ってみて良かったら1~5階の店舗で購入することができます。また、チェックイン時に部屋で使うアロマオイルが選べるので、新しい香りを試すのもいい機会です。

そして、ユニークなのは客室料金。シーズンや週末といった繁閑による料金の変動がなく、設定は部屋の広さによります。税金やサービス料も込みなので、料金がひと目でわかるのもありがたいです。
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日本各地の食文化やデザインとの出会いが暮らしのスパイスに

▲ レストラン「WA」。壁は船の鉄板をリサイクル。(c)Nacasa & Partners
レストランなどのパブリック施設は、フロントのある6階に集合しています。

レストラン「WA」は、定期的に国内各地に訪れ、その地域の暮らしに根差した味を発掘しています。例えば、料理長が現地の婦人会から食べ方を教えてもらい、アレンジしたメニューも。あるいは、酒蔵や畑へおもむいたり、アンテナショップとコラボしたり。南北に長い日本の、多彩な食文化に触れることができます。
▲ 「ATELIER MUJI GINZA」。デザインやアートに関する本が並ぶ「Library」とカウンターカフェの「Salon」などが、仕切りなく、ひとつのスペースに展開しています。
一緒にいただきたい日本酒は、老舗から若手まで、作り手にこだわってセレクトしています。日本に生まれた幸せを、食を通して感じることでしょう。
▲ 2つのギャラリーでアートやものづくりにまつわる展示を開催。
6階には「ATELIER MUJI GINZA」と名付けた、デザインやものづくりにまつわる複合施設を展開しています。ワンフロアを仕切ることなく、展示を行う2つの「Gallery」、樹齢400年の楠を手引きしたカウンターでコーヒーやお酒をいただく「Salon」、デザインやアートにまつわる古書や希少本を集めた「Library」、イベントを開催する「Lounge」が集合しています。宿泊していなくても、何かの発見を期待して、立ち寄りたくなるスペースです。

また、ホテルのスタッフが案内する銀座ツアーや、ランニングウエアのレンタルなど、地元を楽しみ方もサポート。よく眠り、よく食べ、よく歩き、よく整える。4つの要素を満たしてくれるホテルです。

POINT

・店舗も含め、全館で無印良品の思想を体感
・レストランやアクティビティを通して、街とのつながりを体験
・日常の延長線でくつろげる空間

ホテルに聞いた「ライフスタイルホテルとは?」
「普段の暮らしに、刺激やちょっとした特別感をプラスしてくれる場所」

■MUJI HOTEL GINZA

住所/東京都中央区銀座3-3-5 6F
HP/https://hotel.muji.com/ginza/ja/
予約・お問い合わせ/TEL03-3538-6101

●タイプA(セミダブル14~15平方メートル)1万4900円、タイプF(ツイン36平方メートル)3万6900円、タイプI(ツイン52平方メートル)5万5900円(税・サ込)
左写真(c)Nacasa & Partners

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■青山グランドホテル

ハイファッションの街、青山の歴史と今を投影

“ベルコモ”の愛称で長年、青山の象徴的存在だった商業ビル“青山ベルコモンズ”の跡地に、2020年8月オープン。この街が歩んできたストーリーを聞いたうえで、改めて、新たに誕生したこのホテルを眺めると、そのコンセプトがより深く伝わってきます。
▲ キラー通りと246が交差する、青山ベルコモンズ跡地に誕生。
戦後、GHQによって代々木上原に築かれた“アメリカの街”、「ワシントンハイツ」。日本への返還後はオリンピックの選手村として利用され、当時、街は活況に湧きました。60年代頃から青山界隈は外国人向けの高級マンション、いわゆる“ヴィンテージ・マンション”が登場し、流行に敏感な人々が集まるように。その当時のマンションは、世界中を旅して買い集めた不揃いながら絶妙なコーディネートや、ミッドセンチュリーの家具など、センスの塊でありながら、居心地の良さも兼ね備えていたそうです。
▲ イヴ・サンローランの華奢なハイヒールがディスプレイに
そして青山は日本を代表するファッションの街へと成長していったのは、ご存知のとおり。

ホテル内に飾られたアート群は、70~80年代がテーマ。4階にはイヴ・サンローランのハイヒールや、イッセイ・ミヤケのポスター、エルメスのヴィンテージ品が飾られ、ハイファッションの系譜を見るようです。
極めつけは、大滝詠一の名盤『ア・ロング・バケーション』のジャケットのイラストを描いた、永井博さんがホテルの外観を描いた作品でしょう。その年代にとっては、なつかしさに感無量かも。

ただし、単なる“昔なつかしいアンティーク”ではおさまらないのが、青山グランドホテル。今の時代に再編集された、新鮮さを感じるヴィンテージなのです。
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細部までこだわった、居心地の良さの追求

▲ 広さ35平方メートル、ハイエンドクラスの「デラックスツイン」。
客室は16~19階にかけての4フロアに、42室。広さは32~61平方メートル。デザインのコンセプトは“60~80年代の青山”です。

1969年の開業当時から70年代にかけて青山にフラッグシップを展開し、日本のイタリアモダン家具の先駆けとなってきた「アルフレックス」のソファを全室に揃え(ホテルではめったにない!)、毛足の長いラグと一角に観葉植物。モダンさをひとふり加えたミッドセンチュリーなテイストは、ホテルの客室というより、くつろぎの居室のようです。
注目は全室に揃えた、高級寝具の「イワタ」のマットレスと、プロダクトデザイナーの八木保さんがコラボした竹材のベッドフレーム。固めのマットレスが寝心地よく、このベッドに寝るためだけでも泊まる価値がありそう。ちなみに、ベッドの下に「リモア」のスーツケースが収まるよう、高さが調節されています。

バスルームでは、3分でお湯が満杯になる、湯量たっぷりのバスタブに驚くはず。ムダなアメニティは置かず、ポンプ式でロスを減らした分、「オルタナ」のサロンクオリティのシャンプーとコンディショナーを用意しています。
そして“ドライヤー機能付き美髪器”とも称される「レプロナイザー」の高性能ドライヤーを装備。豊富なタオルに、広めのバスマット、軽くて着心地いいバスローブなど、湯上りを至福な気分で満たせるよう、アイテムが整えてあります。

冷蔵庫は、ウイスキーのミニボトルや白・赤ワインなどのアルコールを含め、フリー(スイートはシャンパンのフルボトルも!)。そのラインナップもアサヒスーパードライなど、日本人にとって“日本らしさ”を感じるものです。
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気軽に寄れるオールデイダイニングから、隠れ家ルーフトップバーまで

▲ かつての愛称をそのままオールデイダイニングの名前に。
レセプションフロアは4階ですが、そのエレベーターの扉が開くと、少し戸惑うかもしれません。

ホテルのレセプション然とした雰囲気とは、少々異なるのです。このフロアにはオールデイダイニングと和食のレストランもありますが、スタッフはホテルとレストランのゲストの区別なく、対応します。スタッフはいわば全員がコンシェルジュ。担当分けがなく、何でもこなすので、ワンストップでスムーズなのです。
オールデイダイニングは、その名も「ザ・ベルコモ」。イタリアンを始めとした多国籍料理。カウンターを中央に、ソファやテラス、半個室仕様のプライベートスペースなど、気分や目的に合わせてシートを選べるのがポイントです。

「THE BELCOMO」の奥にあるのが、カウンター和食の「SHIKAKU」。季節折々の食材を使った鮨や鉄板焼きなど、日本料理がいただけます。
▲ 最上階のイタリアンレストラン。アフタヌーンティーにこの街の歴史がちらり。
最上階にはシグネチャーレストランの「TRATTORIA ANDREA ROSSI」。ディナータイムは、イタリア全土のクラシックなメニューをモダンにアレンジしたメニューをサーブします。気軽に利用するなら、アフタヌーンティーを。70年代の原宿を象徴するクレープがスペシャリティーというのも、このホテルらしい遊び心でしょう。

そして、隠れ家感たっぷりのルーフトップバー「The Top.」は、アプローチもユニーク。手描きの看板を開け、厨房の裏口のような通路を抜けて、屋上へ。夜空の下、東京の夜景を一望する贅沢なスペースです。随時、イベントも開催しています。「ゆくゆくはホテルゲストオンリーにしたい……」とのこと、ビジターは早いうちに訪れておいた方が得策です。

POINT

・青山ベルコモンズの跡地
・モダンなミッドセンチュリー家具の心地いい客室
・60~80年代の青山がコンセプト

ホテルに聞いた「ライフスタイルホテルとは?」
「ライフスタイルホテルとは元来、高いデザイン性と宿泊以外の付加価値を備えたホテルのことと、考えます。当ホテルでは、その土地や街の風土に合わせ、地域の価値を上げるホテルであることを目指しています。ゲスト一人一人に合わせた柔軟性のあるサービスにより、自分らしいスタイルで住まうようにホテルに暮らして頂ける時間を大切に、『デザインと美観』『繋がり』『品質』『癒し』をテーマに加えて、『ソーシャルプレイスとしての機能』も兼ね備えています」

■THE AOYAMA GRAND HOTEL

住所/東京都港区北青山2-14-4
HP/https://aoyamagrand.com/
予約・お問い合わせ/TEL03-6271-5430

●スタンダード6万7000円、デラックス9万円、スイート11万円など

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