石川県の山城温泉に、無為な時間こそ最高の贅沢と実感できる宿があるんです

なんだかんだと結局は忙しなく過ぎてしまう毎日。そんな慌ただしさを抜けてひと息つこうと、どこに向かったのか。目標はふたつ。なるべく遠くまでクルマを走らせたい。美味しいものを食べたい。ま、本当に単純なんですけどね、発想が。
ということで、石川県加賀市の山代温泉へ。東京から片道550㎞のところの、ちょうどいいぐらいのドライブ旅行です。

そして宿泊に選んだのが「べにや無何有（むかゆう）」というところ。かつて湯治場として知られた山間の豊かな自然に囲まれた地に建つ宿です。加賀温泉を代表する共同浴場に隣接した宿として昭和4年に創業。しかも近年4度にわたってリニューアルを施し、建物自体が、とっても洒落ている。

ある種の和洋折衷で、高名な建築家、竹山聖氏による新建築的なシャープな空間構成と、「外の風景が内部にも入ってくる」という日本の伝統建築の概念が見事に融合しています。だから、近代ホテルのようなモダンさも愉しめれば、日本旅館の特有の静謐さも味わえる。で、ただボケ〜としてるだけでも心地よい。室内も、各施設も、そしてもちろん戸外も、気持ち良く過ごせるのですよ。

また、女将さんやスタッフの方々の対応もいわば和洋折衷で、時にヨーロッパの超一流ホテルよろしくテキパキと、その一方で創業ウン百年の老舗旅館のように温かくもある。それだから、ああ、泊まって良かったな、また来たいな、と、心から思っちゃう。事実、そういうリピーターがとっても多いのだそうですよ。

さあ、そして目標その2の料理が、また、これが素晴らしいのなんの。もともとこの辺りは、水が良く、米が良く、魚が良く、野菜も良いところ。だから、美味しくて当たり前、みたいなところもあるんだけど、でも、それを差し引いても、こりゃあ美味しすぎ。聞けば、それもリピーターの多さの大きな要因だそう。

四季折々の旬の味に舌鼓を打つべく、一年に何度も訪れる常連が多数とのこと。思いっきり納得してしまいますね、これを一度でも味わったならば。この地ならではの旬の味を活かした美味かつ美麗な食の愉しみが盛り沢山。そして器もまた美しい。だから心も身体もゆ～たりと癒されちゃうのですよ。

そして肝心の部屋はといえば、「山庭が最大の財産」という言葉のとおりに全17室のすべてから美しい庭園を臨むことができ、基本は和室を基調とした落ち着きのあるつくり。ベッドを備えた和洋室や、洋室に特化したものもある。また、全室に露天風呂を完備。そうです。温泉。これが、またまた、いいお湯なんだなぁ。優しい肌触りで、ゆ〜ったりと愉しめる。美しい庭を愛でつつ、じっくりと名湯を愉しむことができるのです。もちろん大浴場もあります。

他にも、柱の林立した部屋は2006年にオープンした「方林円庭（ほうりんえんてい）」という施設。心を解放し休ませるためにつくられた空間は、朝にはヨガ教室も開かれます。また「スパ円庭施術院」では、珍しい「和のスパ」で薬草を使ったトリートメントなどを受けられます。庭には「茶室永楽庵」という三畳の小間の茶室。苔むした美しい庭の散策も、大おすすめですよ。

ということで、また行きたい。今回は冬だったから次は、秋の紅葉の時期がいいな。それと、春の桜のときも。部屋の窓を開けると、桜の花が目の前に一杯に広がっていて、そして花びらがヒラヒラと部屋に舞い込んでくるのだそう。あ、そうだ。そういうわけで、一年中、宿泊客が引きも切らないのだそう。ですので、間違っても予約なしで行かないように。お気をつけくださいね。