2018.12.02

大人の旅はかくあるべしと唸らされる伊香保の瀟洒な温泉宿

由緒ある癒しの名湯、伊香保温泉にある、客室がわずか10部屋の瀟洒な宿「香雲館（こううんかん）」。その部屋すべてが日本各地の作家や職人や工匠たちにより、趣向を凝らして設えられているのが大きな魅力です。

CREDIT :: 文／福田豊

今回は、群馬県の伊香保温泉。東京からクルマで約１時間半と、ひと走りの距離。行きつけにするのに最適ですよね。

伊香保温泉の魅力のひとつは、その古い歴史です。温泉が見つけられたのが、およそ1000年前。温泉街になってからは約400年が経つ。江戸時代には粋人たちに愛され、伊香保温泉の湯で赤褐色に染まった手拭いを提げて帰京する様が、最高の粋とされたそうです。

与謝野晶子、島崎藤村、芥川龍之介などの文豪や、画家の竹久夢二などにもこよなく愛された。そしてそんな歴史の深さが日本の情緒を薫らせる。そのあたりが、大人の男がお泊まりドライブデートの場所として選ぶのに、とっても似合うのですね。

彼女が「また来たい」ということ必至の宿です

さて、そんな伊香保温泉で紹介したい宿が、「香雲館（こううんかん）」。伊香保温泉でもひときわ古い老舗の宿である「塚越屋七兵衛(つかこしやしちべえ)」の別館として、平成6年に創業。大旅館の本館とは真逆の、客室がわずか10部屋の温かく親密な宿です。

日本の伝統建築や伝統工芸をいまに蘇らせることを目的に、日本各地の作家や職人や工匠たちを集め、館内の随所に腕を振るわせているのが特長。その非日常的な雰囲気の館内を彼女とふたり散策するのも、楽しいものです。

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客室「金閣」の12畳の和室は、安土桃山文化の聚楽第をイメージしたもの。床柱には千成瓢箪を蒔絵であしらい、壁は金箔。古典模様を刻んだ組子の白障子が美しい。
客室「金閣」のダイニングは、ゴブラン織りのタペストリーが飾られたルイ王朝風。この他、ツインベッドルームと露天風呂が付いた110平米超の客室。
しっとりと落ち着いた時間が過ごせる客室「銀閣」のデッキ。この部屋は、「金閣」と同様110平米超の広々とした部屋だが、慈恩寺銀閣に倣ったシックな設え。
客室「御簾」は、京都御所に想を得た部屋。御簾越しの鮮やかな障壁画に対比して、落ち着きのある格天井、漆喰壁が特徴。14畳の本間に、広縁、書院が付き約80平米。

客室「金閣」の12畳の和室は、安土桃山文化の聚楽第をイメージしたもの。床柱には千成瓢箪を蒔絵であしらい、壁は金箔。古典模様を刻んだ組子の白障子が美しい。
客室「金閣」のダイニングは、ゴブラン織りのタペストリーが飾られたルイ王朝風。この他、ツインベッドルームと露天風呂が付いた110平米超の客室。
しっとりと落ち着いた時間が過ごせる客室「銀閣」のデッキ。この部屋は、「金閣」と同様110平米超の広々とした部屋だが、慈恩寺銀閣に倣ったシックな設え。
客室「御簾」は、京都御所に想を得た部屋。御簾越しの鮮やかな障壁画に対比して、落ち着きのある格天井、漆喰壁が特徴。14畳の本間に、広縁、書院が付き約80平米。

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10部屋のすべてがまったく異なるしつらえというのもよい。度々訪れても飽きがこないのです。もちろん全室が露天風呂付きで風呂の大きさも絶妙。彼女と一緒にしっぽりと楽しめます。

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すべての客室に、檜の内風呂と露天風呂を完備。露天風呂は、温泉ではなく、美肌効果のある麦飯石を通したお湯。
大浴場「あうるの湯」。茶褐色の源泉は黄金の湯と呼ばれ、伊香保温泉内でも貴重。

すべての客室に、檜の内風呂と露天風呂を完備。露天風呂は、温泉ではなく、美肌効果のある麦飯石を通したお湯。
大浴場「あうるの湯」。茶褐色の源泉は黄金の湯と呼ばれ、伊香保温泉内でも貴重。

さらに、女性が喜ぶあれこれがいたるところにあるのも、この宿ならでは。アロマトリートメントやアーユルヴェーダなどエステのメニューは、とにかく充実している。プライベート感ある中庭に面したテーブルで、風呂上がりの一杯というのも女性好み。就寝前のハーブティーは、心もカラダも、彼女も喜ぶこと、うけあいです。

夕餉は目にも舌にも美味しいのです

そして、「香雲館」は食事がとっても素晴らしいのですよ。群馬県は水が良いため野菜や豆腐やご飯など、とにかく食事が美味しい。そのなかでも出色が、この宿なのです。

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旬の美味しいものを使った会席仕立ての夕食は、器にも懲り、美味しく、美しい料理が並ぶ。
群馬名産の豆腐やこんにゃくも楽しめる朝食。群馬県産米「雪ほたか」で炊いたご飯は絶品。

旬の美味しいものを使った会席仕立ての夕食は、器にも懲り、美味しく、美しい料理が並ぶ。
群馬名産の豆腐やこんにゃくも楽しめる朝食。群馬県産米「雪ほたか」で炊いたご飯は絶品。

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夕餉は、赤城牛などの地の味覚を中心に、しかし地元の食材だけにこだわらずに日本全国の旬の味覚を使用した会席仕立て。季節、味、器に趣向を凝らすのが同宿の美学で、目にも舌にも本当に美味。さながら高級料亭のような贅沢で洒脱な気分が味わえる。まさに大人の雰囲気なのです。

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中庭には能舞台。その舞台を囲むように、池が巡り、舞台に向かって日当たりの良いデッキが。ここでの風呂上がりに一杯が気持ちいい。
能舞台のある中庭に面しているのは、全面ガラス張り、吹き抜けでスタイリッシュなロビー。

中庭には能舞台。その舞台を囲むように、池が巡り、舞台に向かって日当たりの良いデッキが。ここでの風呂上がりに一杯が気持ちいい。
能舞台のある中庭に面しているのは、全面ガラス張り、吹き抜けでスタイリッシュなロビー。

その一方、「香雲館」の宿泊客は、本館の「塚越屋七兵衛」にも出入り自由で、本館内のクラブでお酒やカラオケを楽しんだり、夜食コーナーでラーメンを食べたり、なぁんていうカジュアルな夜遊びもできる。本館の大浴場や露天の温泉も24時間いつでも入ることができて、お約束の卓球台もある。なので彼女と浴衣を着て、そんな夜遊びをしに本館に行く、というのも一興。なんだか懐かしい昭和な感じで、彼女も「また行きたいな」となるのじゃないかしら。

なお、注意したいのは、群馬は、水が良いため、お酒が本当に本当に美味しい。ついつい飲みすぎちゃいますよ。

朝食は、シンプルだけどうれしいメニューが並びます。特に、群馬名産の豆腐や酢味噌でいただくコンニャクは素晴らしいのひと言。また、もともとは地元の農家が自分たちで食べるためだけに生産をしていたという群馬県産「雪ほたか」のご飯が最高に美味です。

ということで、「香雲館」は恋するふたりが、行きつけにするには最高。大オススメの宿です。