2022.02.08
featuring 黒部和夫
父から息子へ継承された63年前のIWC
お洒落好きなら誰もが素敵な時計を持っているものです。そこでこだわり男子に、こっそり愛用時計にまつわる想いをインタビュー。実に興味深いエピソードがアレコレと飛び出します。
- CREDIT :
写真/小澤達也(Studio Mug) 文/T.Kawata 構成/長谷川 剛(TRS)
父から息子へ継承された63年前のIWC
形見として譲り受けた宝物は、こう身に着ける
父君がシンガポールで購入した理由とは?
聞けば、そのころのシンガポールは英国領であり、お洒落な品々が取り揃えられていたのだとか。その後、黒部さんはこのIWCを父君から譲り受けられ、現在は大切な形見の品となっているわけです。
「LEONが創刊されたのが2001年でしたよね。その時に時計を受け取りまして。なにしろ湿度の高い場所で使われていたものなので、すぐにオーバーホールとリダン(文字盤の修復)をしたんです。それがLEON創刊のタイミングだったので、すごく印象に残っています」
それはうれしいお話じゃありませんか。そこからも黒部さんの時計談義は続きます。
「オーバーホールは自由が丘にあったアライ時計店にお願いしましてね。ここの親父さんがとにかく凄腕で、地方では手に負えない修理なんかが持ち込まれるほどで……」
黒部さんが頼りにしていたアライ時計店も気になる部分。で・す・が・肝心の黒部さんならではの時計のお洒落術をぜひお聞きしたいところです。このIWCは、スーツにコーディネートしていらっしゃるのでしょうか?
「いえ、合わせません。この時計は、意外と厚みがあるんですよ。なので、今日のブレザー&タートルセーターのような、スポーティなスタイルに付けたいんです。あとは時代に合わせて付け方も変わりました。創刊当時のLEONはゴージャスなスタイルをすごく打ち出していたでしょ。世の中もそんな気分で、私もそのころはIWCのベルトをカミーユ・フォルネの白いクロコダイル素材に付け替えて、足元はセルジオ ロッシのパイソンブーツといったエキゾチックコーデを楽しんでいました」
「ベルトは随時、交換しています。あれから20年ほど経って、改めて黒ベルトかなと。でも、真っ黒じゃなく、白いステッチのほうが少しカジュアルでバランスがいいでしょ? そうそう、これ、カミーユ・フォルネの限定品だったんですよ」
え、まん丸!? こんな時計、見たことない!
シンプルな文字盤のクラシック顔の名品がズラリ
パテック フィリップのカラトラバは、長年勤めた会社から独立した記念として2014年に購入。愛してやまないチフォネリのスーツに合わせるのはもちろんのこと、夏はTシャツ+ショーツのリゾートスタイルを、ゴージャスに格上げするアイテムにもなるのだとか。
黒部さんのいいお話で、読者諸兄も時計が思いや絆を伝えるツールだと気づかれたのではないでしょうか。記念日を迎えることがあれば、ぜひ時計をお探しくださいまし。
● 黒部和夫 (カルロ インターナショナル代表/ファッション・コンサルタント/評論家)
学生時代を過ごした1970年代からファッション業界に携わり、雑誌での取材やスタイリングを経験。青山学院大学を卒業後、1983年オンワード樫山に入社。国内外の有名ブランドの企画を経験後、商品開発室長として新商品の開発やPRマーケティング戦略を担う。メディアや全国百貨店でのイベントなどに多数出演。2014年、ファッション・コンサルタント/評論家として独立。小売業のMDやバイヤー向けトレンド分析、広告ディレクションを手がけるほか、教育やアパレル業界団体で活動。日本流行色協会メンズカラー選定委員も務める。