2022.02.07
第18回
機械式時計のパワーリザーブをおさらい! 長いとこんなメリットも
機械式時計のスペックに表記されている「パワーリザーブ○○時間」の意味、正しくご存じですか? 時計選びの大切なポイントでもあり、近年はとある変化も起きているのです。
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文/渋谷康人 イラスト/林田秀一
時計を選ぶうえでの目安は? 長いとどんなメリットがある? 今回は、パワーリザーブについてご説明します。
パワーリザーブ=「ゼンマイを巻かないままで使える時間」
では時計の「力の蓄え」とは、何でしょうか。
巻き上げられた主ゼンマイは、解けることでその力を解放しようとします。機械式時計はこの力をエネルギー源にして動いています。
つまりパワーリザーブとは、主ゼンマイが完全に巻き上げられた時、その力だけで時計が何時間動くかを表したもの。
手巻きの場合は、主ゼンマイがフルに巻き上げた時、再び主ゼンマイを巻かずに使える時間の長さを意味します。しかし、自動巻きの場合は、意味が少し変わります。自動巻き時計は、腕に付けていれば、常に主ゼンマイが巻き上げられるからです。だから、自動巻きの場合は、腕に付けずに置いたままにして動き続ける時間の長さを指します。
パワーリザーブは長い方が使いやすく、精度も高い
▲ 「カラトラバ "クルー・ド・パリ"」手巻き、18Kローズゴールドケース(39mm)、アリゲーターストラップ。3気圧防水。355万3000円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ 搭載する新型手巻きムーブメントCal.30‑255 PSは、約65時間という長いパワーリザーブを実現。
▲ 「カラトラバ "クルー・ド・パリ"」手巻き、18Kローズゴールドケース(39mm)、アリゲーターストラップ。3気圧防水。355万3000円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ 搭載する新型手巻きムーブメントCal.30‑255 PSは、約65時間という長いパワーリザーブを実現。
手巻き時計の場合は、パワーリザーブの長い方が、ゼンマイを巻く頻度が少なくて済みますね。自動巻きの場合は、腕から外して置いたままにしてもパワーリザーブが長ければ、次に使い始める時に時間合わせをする必要がありません。パワーリザーブが長いと言うことは、それだけ手間がかからないのです。
時計の動力は主ゼンマイから供給されますが、解けていくにつれてその力は徐々に減り、不安定になります。すると、テンプの振動の幅(降り角)も不安定になり、その結果、時計の精度が悪くなります。
というわけで、パワーリザーブができるだけ長い方が、主ゼンマイは長時間安定したパワーを供給できますし、テンプの降り角も安定して、時計の精度も安定するということなのです。
近年の新型ムーブメントは、パワーリザーブ50時間超が標準に
ロングパワーリザーブ化には、蓄えられる力を増やす方法と、エネルギー消費を減らす方法に大別できます。前者では、主ゼンマイの長さを長くする、あるいは主ゼンマイを収める香箱を増やします。後者では、脱進調速機をシリコンなど軽い素材に変えます。
つまり、手巻きの場合は約2日間以上、自動巻きの場合は約3日間以上が標準になっています。約3日間あれば、金曜日の夜に腕から外しても月曜日に時間合わせをせずに使い始められるわけです。
▲ 「ランゲ31」手巻き、18KWGケース(45.9mm)、アリゲーターストラップ。世界限定100本。2026万2000円/A. ランゲ&ゾーネ
▲ 文字盤3時位置のパワーリザーブインジケーターが表すように、約31日間、時間にして744時間正確な時を刻み続ける手巻きムーブメントCal.L034.1。。ふたつの香箱を搭載し、動力を一定に保つ独自のメカニズムを採用した。
▲ 「ランゲ31」手巻き、18KWGケース(45.9mm)、アリゲーターストラップ。世界限定100本。2026万2000円/A. ランゲ&ゾーネ
▲ 文字盤3時位置のパワーリザーブインジケーターが表すように、約31日間、時間にして744時間正確な時を刻み続ける手巻きムーブメントCal.L034.1。。ふたつの香箱を搭載し、動力を一定に保つ独自のメカニズムを採用した。
パワーリザーブが、機械式時計の使いやすさと精度を左右すること、おわかりいただけたでしょうか。機械式時計を購入する時は、ぜひ注目したいスペックです。
■ お問い合わせ
A. ランゲ&ゾーネ 0120-23-1845
オリス ジャパン 03-6260-6876
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109