2022.04.18
Vol.12
セイコーのダイバーズウォッチが世界で支持され続ける理由
数多の時計の中でも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第12回目は「セイコー プロスペックス」のダイバーズウォッチ。ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)の規格の手本ともなったセイコーのダイバーズの歴史に迫ってみましょう。
- CREDIT :
文/福田 豊
ダイバーズウォッチの常識を作り上げた名コレクション
しかし、それは時計にとって大きな試練でした。
というのも、それまで文字どおり懐中深くで大切に保護されていた時計が、腕に巻かれることで激しく揺さぶられ、埃や泥や雨に晒されることになったから。そのため、耐振動性と防水性を備えることが、喫緊の課題となったのです。
そうして時計は高い衝撃性と防水性を備えていき、さらに1950年代から1960年代にかけて、ダイバーズウォッチが開発されます。水中深くの過酷な環境で正確な時間を刻むことのできるダイバーズウォッチは、衝撃性と防水性とを完璧に解決したもの。ある意味で、時計進化の究極の完成形ということができます。
そんなダイバーズウォッチの進化を牽引したメーカーのひとつが、セイコーなのです。
〜セイコーダイバーズウォッチの3つの語りドコロ〜
(1)セイコーのプロフェッショナル時計の原点:国産初のダイバーズ
(2)世界に先駆け、飽和潜水用プロフェッショナルダイバーズを開発
(3)防水性能、素材と、その進化は止まらない
(1)セイコーのプロフェッショナル時計の原点:国産初のダイバーズ
というように、高性能・高品質を誇っており、1966年の“150mダイバーズ”からはじまり4回にわたって南極観測隊越冬隊員の装備品として寄贈され、その信頼性を実証。その後のセイコーのプロフェッショナルモデルの原点となります。
防水性能だけではなく精度も向上させ、当時としては世界最高水準の3万6000振動/1時間(10振動/1秒)のハイビートムーブメントを搭載しました。外見的には、4時位置にリュウズを配したのが大きな特徴です。
(2)世界に先駆け、飽和潜水用プロフェッショナルダイバーズを開発
そこに書かれていたのは「現在市販されているダイバーズウォッチでは、300m以上の深さの深海潜水において、高圧ヘリウム混合ガスを呼吸気体として用いる飽和潜水システムに耐えられない」という内容。当時は、まだ飽和潜水についてあまりよく知られておらず、スイス時計界でも飽和潜水の研究や実験を始めたのは1970年に入ってからでした。
セイコーはこの手紙を重要に受け止め、開発プロジェクトチームを結成。飽和潜水に耐える「世界最高峰のダイバーズウォッチ」を目指します。そうして1975年に完成したのが、600m飽和潜水用防水ダイバーズでした。
……などなど、特許、実用新案、意匠登録など、多数の独自技術を装備して完成した通称“600mダイバーズ”は、その後のダイバーズの基準をいくつも生み出した。まさに世界最高峰のダイバーズウォッチであったのです。
なお、“ツナ缶”という愛称は国外でも通用するもの。「セイコー」のダイバーズの人気が世界的であることを表すものでもあるのです。
(3)防水性能、素材と、その進化は止まらない
例えば1986年には、“ツナ缶”モデルでセイコー初の1000m飽和潜水用防水モデルを発表しました。外胴をセラミックに変更したのが大きな改良点です。
▲ エバーブリリアントスチールは、プラチナのような白い色味も特徴。ただし加工が難しく、美しく仕上げるのには手間がかかる。それでも同素材を使用しているのは、つまり「セイコー」の技術力の高さの証でもあるのです。
▲ 2020年、セイコーダイバーズ55周年を記念して発売された限定モデル。ケース素材には、世界最高レベルの耐食性を備えるステンレススチール素材「エバーブリリアントスチール」を採用した。左から、1968メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBEX011)、1965メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBEX009)、1975メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBDX035)。 ※いずれも参考商品
▲ エバーブリリアントスチールは、プラチナのような白い色味も特徴。ただし加工が難しく、美しく仕上げるのには手間がかかる。それでも同素材を使用しているのは、つまり「セイコー」の技術力の高さの証でもあるのです。
▲ 2020年、セイコーダイバーズ55周年を記念して発売された限定モデル。ケース素材には、世界最高レベルの耐食性を備えるステンレススチール素材「エバーブリリアントスチール」を採用した。左から、1968メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBEX011)、1965メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBEX009)、1975メカニカルダイバーズ復刻デザイン(SBDX035)。 ※いずれも参考商品
現在、セイコーのダイバーズウォッチは、セイコーの本格スポーツウォッチブランド、セイコー プロスペックスのラインアップで展開し、ケース素材や文字盤カラーなど、デザインのバリエーションが豊富に拡大しているのも見どころ。
日本のダイバーズウォッチの歴史を築き、プロフェッショナルをサポートしてきたセイコーダイバーズ。そのストーリーと確かなスペックをあなたの腕で体験してみませんか。
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セイコーウオッチ お客様相談室 0120-061-012