2022.09.19
第24回
腕時計の「マニュファクチュール」って何のこと? 何がスゴい?
時計の記事やカタログには「マニュファクチュール」という言葉が出てきます。これは、どんな意味なのでしょうか? 実は、時計選びにもとても関係するキーワードなのです。
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文・写真/渋谷康人
マニュファクチュールは、英語で「製造する」という意味。特に「工場で機械を使って製造する」ことを意味しています。でも、時計は工場で作るものですし、なぜわざわざこの言葉を使うのでしょうか?
その理由は、この言葉が時計の世界では特別な意味を持つからなのです。
マニュファクチュール=自社一貫生産
なぜこの言葉が特別かというと、時計の世界では少し前、2000年頃まで、自社内で部品を作ることは、一部の時計ブランド以外では、とても珍しいことだったからです。
そもそも、時計作りは「分業」が基本
そのため、時計作りでは昔から「分業」が基本でした。特別なノウハウをもつ専門メーカーが部品を作り、時計ブランドはそれを購入して組み合わせて、ひとつの時計を作ってきたのです。この分業による時計作りは、時計が手作りから工場生産になった18世紀から現在も時計業界の常識です。
つまりマニュファクチュールは、他社が作った部品を集めて組み立てるエタブリスールの対になる言葉なのです。
ちなみに、英語のマニュファクチュールとフランス語のエタブリスールが対になっているのは、スイスでの「工場形態での時計の生産」がアメリカから導入されたという歴史に由来しているからです。
マニュファクチュールは高い製造・管理力の証
対して、マニュファクチュール・ムーブメントは、自社の製品のためにゼロから開発・製造されます。つまり、専用設計されるため、汎用ムーブメントよりも高い機能・性能が実現されているのが普通です。しかし、機械式ムーブメントの基幹部分は実に複雑で、技術面でも資金面でもハードルの高いもの。
つまり、マニュファクチュールを名乗る時計ブランドは、時計のすべてを開発・製造し品質管理ができる高い技術力を持っているということ。だから、時計業界でも特別な存在であり、マニュファクチュール・ムーブメントを搭載した時計も高級なものとされるのです。
一方、マニュファクチュール・ムーブメントは、汎用ムーブメントより歴史が浅いので、かつては開発直後のものは、信頼性や耐久性に問題がある場合もありました。
ただ1990年代の世界的な時計ブーム以降、特に2010年以降の時計の開発製造技術の進歩は目覚ましく、最新のマニュファクチュール・ムーブメントの機能や性能はもちろん、その信頼性や耐久性も飛躍的に向上しています。もはやこうした心配は要らない時代になったと言って良いでしょう。
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