2023.08.22
第27回
モテる腕時計は顔で選ぶ!? リッチな文字盤ができるまで【機械加工文字盤編】
腕時計選びでこだわるべきは、最も目につく「文字盤」。まさしく“時計の顔”だけあって、時計の印象を左右します。今回は、表情豊かでリッチに見える「機械加工文字盤」を紹介します。
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文/渋谷康人
リッチ見えする立体的な文字盤はこうやって作られている
今回は、表情豊かでリッチに見える「機械加工文字盤」です。
2000年頃から続く「3D文字盤」ブーム
だから、“時計の顔”である文字盤にもトレンドがあります。そして、この20年近く続いている文字盤に関するトレンドが「3D文字盤」。つまり、立体的で奥行きのあるリッチな印象の文字盤です。
3Dという言葉が使われたのは、文字盤製作に新しい素材や技術が導入され、従来より立体感が増した文字盤が作れるようになったからです。でも、3Dという言葉が使われる前から表面に凹凸のある立体的な文字盤は懐中時計の時代からずっと採用されてきました。
文字盤を立体的にする、たとえば文字盤の表面に凹凸のパターンやブランドロゴなどを立体的に作り込むと、光の反射が複雑になってフラットな文字盤にはない印象・表情が生まれます。
そんな立体的な文字盤の代表が、「機械加工文字盤」なのです。ここでは、機械加工で作られた代表的な文字盤の種類とその特長を紹介します。
その1
金型のパターンを転写する「プレス加工文字盤」
プレス加工文字盤は、手頃な価格のものから高額な時計まで、あらゆる時計に使われています。
その2
文字盤に緻密な模様を描く「彫刻加工文字盤」
高級時計によく使われることで有名なのが「ギョーシェ(guilloché、あるいはguilloche:ギロッシェ)」という加工です。これは、材料を手作業で徐々に回転させながら旋盤の刃を当てることで、幾何学的で規則正しい模様を精密に刻む機械加工です。とはいえ、これは限りなく職人の手加工に近い方法といえるでしょう。
このギョーシェ文字盤がブランドのアイコンのひとつになっているのが、ブレゲです。
しかもレーザー光を調整することで、彫刻した部分の色を変えることもできます。オメガは時計業界の中でも、この技術をいち早く活用しているブランドのひとつ。
今後、このレーザー彫刻加工は、シンプルなデザインの文字盤から凝ったデザインのものまで、さらに広く使われていくことでしょう。
その3
ナノメートルレベルで加工可能な「電鋳(でんちゅう)文字盤」
電解液の中の金属イオンを、電気を使って地板の表面に金属として析出させ、その部分を母型から剥がすことで、機械加工では作ることが難しいナノメートル(1ミリの1000分の1の1マイクロメートルの、さらに1000分の1)レベルまで正確な複雑な形状の金属板を作る技術です。この電鋳文字盤も、今後さらに広く使われることになるでしょう。
機械加工文字盤には「後加工」も欠かせない
たとえば、表面にラッカーなどの塗料を塗り重ねる。文字盤を金属イオンが入った電解液に浸けて電流を流して文字盤の表面に別の金属の薄い膜を作る「めっき(ガルバニック)加工」。文字盤の表面に膜を作りたい金属や合金、セラミックスなどの物質を蒸着させる「PVD(物理的真空蒸着法)加工」。こうした加工を施すことで、文字盤の表面は劣化から保護され、文字盤の美しさが長持ちするようになります。
最近では、文字盤に色味をプラスするという意味でこうした後加工が施されることも珍しくありません。“時計の顔”である文字盤の進化は、今も日進月歩で続いているのです。
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