高級時計の文字盤に「天然素材」を使うワケって？【天然素材文字盤編】

文字盤は、“時計の顔”。だから、オトコの時計選びは何よりも文字盤にこだわるべし。とはいえ、文字盤の種類は多種多様です。そこで文字盤選びに欠かせない基礎知識と、色気のある“モテる顔”な文字盤選びのコツをお伝えしましょう。

第3回となる今回は、特に高級時計に使われる「天然素材文字盤」を紹介します。

スーツや靴もそうですが、高級なファッションアイテムは、何よりもまず素材にこだわって、たとえば繊維ではカシミヤなどの上質な素材で作られます。

時計の文字盤でもそれは同じこと。高級時計の文字盤に使われる高級素材のひとつが、天然素材です。今回はそんな天然素材を使った文字盤の代表的なものを紹介しましょう。時計通ならひと目で「これはスゴイ！」と納得、感心するものなのです。

宇宙から地球に落ちてくる隕石。その主成分は鉄とニッケルですが、その特徴は特殊な処理を施すと現れる帯状の組織が交差した模様。これは地球上では作れないとされる“ウィドマンシュテッテン構造”という隕石独得の結晶構造によるものです。

国立極地研究所によれば、宇宙から地球に落ちてくる隕石は、ソフトボールくらいの大きさで重さ1kgのものが地球全体で約4000個、日本国内だと2個程度。それらはすべて回収されるわけでなく、また、文字盤に使えるように加工する必要もあるため、とても希少な素材といえます。

メテオライトの模様は、ひと目でわかる特別なもの。希少なうえに天然素材ですから、同じ模様のものはひとつもありません。また、この素材は宇宙を旅してこの地球に辿り着いたもの。そんな宇宙へのロマンが凝縮された文字盤なのです。

特別な模様に加えて鮮やかな色や魅力的な質感をもつのが「天然石文字盤」です。こちらも、同じ模様がふたつとしてない文字盤が作れるのが特長です。

天然石を文字盤に使う場合、ごく薄くスライスし、表面に彫刻加工を施すなどの加工が行われます。また、割れたり退色したりすることを防ぐ処理を施すなど、特別な技術とノウハウが必要とされます。

文字盤に使われる天然石には、オパールやオニキス（瑪瑙）、ジェイド（翡翠）、サーペンティン（蛇紋岩）、ジャスパー（碧玉）、タイガーアイ（虎目石）、マラカイト（孔雀石）などが知られています。

これらの石には、パワーストーンとしてさまざまな意味が付けられているものも数多くあります。科学的な意味はないものの、こうした“物語”が楽しめるのも、美しさ、希少性に加えて天然石文字盤の魅力のひとつですね。

文字盤に使われる天然素材には有機物、つまり生き物由来のものもあります。

そんな生き物由来の天然素材を使ったものの中でも特に人気なのが「マザー・オブ・パール文字盤」。その名の通り、真珠の養殖を行う際に使う二枚貝の貝の内側の部分をくり抜いて、薄くスライスしたものです。

マザー・オブ・パール文字盤は昔から人気を集めていますが、最大の魅力は光の当たる角度によって千変万化する、神秘的ともいえる美しい虹色の輝きです。

この輝きは「構造色」と呼ばれるもので、素材そのものの色ではありません。マザー・オブ・パールは貝の細胞が分泌する炭酸カルシウムの層が何層も重なった構造をしていて、光が当たるとその層がそれぞれ光を複雑に反射します。そのため、光が当たる角度によってさまざまに変化するわけです。

また、モデルに合わせてピンクやブルーやブラックなどに着色することも行われます。さらにハイジュエリーモデルでは、厚い素材に彫刻加工を施す場合もあります。

今回紹介した天然素材は、いずれも加工に高い技術を要します。また、同じ素材を使ってもそれぞれ無二の表情になるからこそ、特別であり、高級なモデルに採用されるのです。あなただけの1本を手に入れてみてはいかがでしょう。