2020.07.11
元祖ラグスポ時計「ロイヤル オーク」の意外な過去とは?
ラグスポ時計の祖・オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」は、いかにしてロングセラーモデルとなったか? 知られざる過去に迫ります。
- CREDIT :
文/鈴木裕之
なぜ、"ラグジュアリースポーツ"が高級時計の定番となったか
その原点が、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」……というのはよく耳にするお話。
しかし、約半世紀のロングセラーを誇るロイヤル オークも、実は登場時から好意的に受け入れられたわけではありませんでした。今回は、伝説のラグスポ時計のターニングポイントに迫ります。
ドレスかスポーツか……という、従来の概念を覆したデザイン
当時の時計といえば、ドレスウォッチはシャツの袖口に収まる薄型で、レザーストラップが当たり前。一方、スポーツウォッチは防水性や耐衝撃性を高めるためにケースに厚みがありました。
そんな時代において、ロイヤル オークは太めのオクタゴンベゼルのスポーツライクなデザインでありながら、ケース自体は薄型で、ダイアルや針の造形はドレスウォッチのように繊細。そして何より衝撃的だったのは、それまで高級時計に使うマテリアルだと認められていなかったSSを積極的に用い、しかもブレスレットを標準デザインに組み入れたこと。
ジェンタが作ったこの革新的な流れは、76年のパテック フィリップ「ノーチラス」、77年のヴァシュロン・コンスタンタン「222」(現在のオーヴァーシーズの祖)といったフォロワーを生み出してゆき、現在ではこの3モデルが、"ラグジュアリースポーツ"の代名詞として知られています。
実は、この3モデルには奇しくも2つの共通点があります。1つは、発表時点では兄弟機といえる構成をもっていたこと。もう1つは、いまや伝説となっているファーストモデルが、“まったくウケなかった”こと。
ではこれらのモデルは、どのタイミングで爆発的ヒットを生み出していったのでしょう? そこには歴史を変えた、本当のマスターピースの姿があったのです。
これが、オリジナルモデル!
このムーブメントは、名称を変えてパテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンでも採用され、ロイヤル オーク、ノーチラス、222のオリジナルは、すべてこの薄型2針を載せていたのです。これが兄弟機と呼べる所以。
ジェンタの創作意欲をかき立てたのは、もしかするとこの名機の存在だったかもしれません。オリジナルのロイヤル オークは70年代に一度生産を停止しますが、1990年にRef.15002STとして復活。ケースバックをシースルーに改めた通称"ジュビリー"(Ref.14802ST)が1992年に登場すると、ほぼそのままの構成を保ったまま、現在までラインナップを継続しています。時計マニアが本当に欲しいのは、今も昔もこちらの2針ロイヤル オークでしょう。
3針デイトで使い勝手が高まり、一気に人気モデルに!
当時としては十分に実用的だった「Cal.3120」を搭載したこのモデルは、ケースを若干厚くすることと引き替えに、日常使いに便利なセンターセコンドを備えていました。SSケースにブレスレット、3針デイト付きという、現在のスポーティウォッチのスタイルをこのモデルで確立したのです。
そして現行モデルのRef.15500STが2019年に登場。基本的なケースデザインは前作を踏襲していますが、中身が一気に進化しています。同年発表の「CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET」と同じ「Cal.4302」を搭載したことで、約70時間のロングパワーリザーブと、スポーツウォッチらしいハイビートを同時に獲得しました。かくして、現行モデルの3針ロイヤル オークは、名実ともに隙のないスポーツウォッチの名作となったのです。
■ お問い合わせ
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000