2020.07.14
パテック フィリップ「ノーチラス」は、世界最高額のスチール腕時計だった?
いまやラグスポ時計の人気モデルとなった「ノーチラス」。パテック フィリップ初のスポーツウォッチであり、画期的なコンセプトとデザインで登場した時計の歴史に迫ります。
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文/鈴木裕之
なぜ、"ラグジュアリースポーツウォッチ"が高級時計の定番となったのか
その御三家と呼ばれるのが、約半世紀のロングセラーを誇るオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」、パテック フィリップ「ノーチラス」、ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ」。
今回は、世界最高額のSS製ウォッチとして登場した、パテック フィリップ「ノーチラス」の歴史に迫ります。
パーティーから海中まで。アクティブな紳士のための時計
そして76年には、再びジェンタ自身がデザインを手掛けた、パテック フィリップの「ノーチラス」が発表されました。それは137年にも及んだ同社の歴史(発表当時)の中でも、初めて手掛けられたスポーツウォッチであり、また当時世界最高額のSS製ウォッチでもありました。
ロイヤル オークでベゼルの固定方法がネジ留めだったことからも分かるように、ジェンタはこの方法が最適と考えていたようです。事実、74年にジェンタがノーチラスのデッサンを描き上げた時点では、クッションシェイプに近いオクタゴンのベゼルを裏側からネジで留める方法が検討されていたようです。
しかし、ノーチラスのデザインを決定的に変えたのは、パテック フィリップのエンジニアたちでした。彼らは防水性をさらに確実にするためにケース全体を上下で2分割して、それを確実に締結する「耳」を採り入れたのです。
これにより、当時の薄型ドレスウォッチでは決して為し得なかった120mという防水性と、ドレッシーなスタイリングを両立。パテック フィリップは当時のADビジュアルに、「ウェットスーツにもタキシード(ディナースーツ)にも似合う」という挑戦的なコピーを載せたのです。
老舗ブランドの揺るぎないアイコンへと成長
「我々は若い人たちに向けた新しい時計を作ったつもりでした。しかしそれは誤算となり、実際にはスポーツや週末の余暇を有意義に楽しむ、年輩の方々にこそ受け入れられたのです」(『アームバントウーレン』誌インタビューより意訳/2000年掲載)。
もうひとつ、ノーチラスのラインナップ拡張に待ったをかけていた要因がありました。それがノーチラスのアイデンティティでもあった「耳」の存在です。ケースを上下分割して耳で留めるという方法は、搭載できるムーブメントの種類を絞り込んでしまうことにもつながったのです。
現在では、耳の機能はベゼルを留めるだけに絞られていますが、耳はノーチラスの象徴として欠かせないディテールとなりました。
さらに、3ピースケースが採用されたことで、ノーチラスは複雑時計のプラットフォームとしても人気を呼ぶようになっていきます。現在では、クロノグラフや年次カレンダーを載せたコンプリケーションにも、大きな人気が集まり、ノーチラスはブランドを代表するコレクションのひとつとなったのです。
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