2025.02.04
第30回
腕時計の「クロノメーター」って何? どんな価値があるのか解説
時計の中には製品名やスペックに「クロノメーター」という表記があるモデルがあって、普通の時計よりも高い価格が付けられることが多いです。このクロノメーターという言葉には、どんな意味や価値があるのでしょうか?
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文/渋谷康人 編集/岸澤美希(Web LEON)
「クロノメーター」は高精度が保証された時計
スイスの場合、このテストを行なうもっとも代表的で有名な公的機関が「スイス クロノメーター 検定協会(The Contrôle officiel suisse des Chronomètres)」。頭文字を取って略称「COSC(コスク)」とも呼ばれます。
このCOSCの検定テストに合格したムーブメントを搭載した時計だけが、クロノメーターという言葉を商品名に使うこと、この文字を文字盤やケース裏などに記すことが許されています。
「クロノメーター」のテストは何をチェックする?
このテストは、ムーブメントを時計にケーシング(搭載)した状態ではなく、ムーブメントだけをテスト用のケースに入れて、検定協会の施設・設備で行われます。テストに必要な時間は15日間で、主に2つの状況での時刻の「進み遅れ」を検査します。
検査項目のひとつ目が「姿勢差」。これは時計(=ムーブメント)の地球に対する位置の違いで起きる時刻の進み遅れがどのくらいかを、6種類の違った姿勢で測定します。
ふたつ目が「温度差」。これは8℃、23℃、38℃と3つの温度環境での時刻の進み遅れを測定します。こうした計測は計測システムによって自動的に行われ、データの数値が決められた基準内であれば検定合格となり、クロノメーターとして認定されます。
「クロノメーター」の精度はどのくらい?
時計の精度を表すもっとも代表的で大事なデータが「平均日差」。これは1日24時間で時計の進み遅れがどのくらいになるか、という数値です。
ムーブメントの大きさによってこの基準は異なりますが、一般的なメンズウォッチに使われる、直径が20mm以上・面積が314mm²のムーブメントの場合、COSCに合格するための平均日差はマイナス4秒からプラス6秒以内。つまり、1日に許容されている進み遅れの幅は10秒以内です。
直径やサイズがそれより小さいレディスウォッチ用ムーブメントの場合はマイナス5秒からプラス8秒、つまり許される進み遅れの幅は1日13秒以内です。
普通のスイス時計の場合、カタログに平均日差は表記されませんが、日本の時計メーカーがカタログに記している普通の機械式時計の平均日差は、マイナス15秒からプラス25秒です。つまり、許容される幅は40秒。これが普通の機械式時計の精度と考えてよいでしょう。
時計においてマイナス4秒からプラス6秒(10秒)と、マイナス15秒からプラス25秒(40秒)という違いは、実用上でもなかなかに大きな差です。1日で30秒も進み遅れがあると、2日で1分間は時刻の表示がズレてしまうということですから。
精度の高さはステイタスシンボルだった
もちろん、今も時計にとって精度はもっとも大事な基本性能のひとつです。ですから、時を知る道具としての役割を重視する人には、普通の機械式時計よりもクロノメーターモデルをオススメします。
ところで1990年代以降、機械式時計の技術が大きく進化した現在では、COSC認定クロノメーターを超える精度規格がいくつも制定され、その規格をクリアした時計が続々と登場しています。次回は、クロノメーターを超える精度規格がどのようなものかをご紹介します。
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