2020.11.11
featuring 西口修平
お洒落のプロが語る、運命のヴィンテージウォッチの見つけ方・こなし方
ビームスのディレクター西口修平さんは、世界的に著名なウェルドレッサー。実は、クラシックを軸とするエレガントな装いにヴィンテージウォッチを合わせる名手でもあるのです。愛用時計とその付けこなし方を披露していただきました。
- CREDIT :
写真/干田哲平 文/長谷川 剛(TABLEROCK)
「クラシックな装いには、ヴィンテージ時計が良く似合う」
新たな男性服に関する提案力もさることながら、独自の感性にてヴィンテージミックスのコーディネート・テクニックにも定評がある人物です。世界中のファッションメディアにおいて西口流スタイルが日々紹介されるだけでなく、インスタグラムでは約11万人のフォロワー数を誇る、当代きってのファッショニスタなのです。
そんな西口さんは、小物使いに関しても超一流。なかでもヴィンテージ時計におけるチョイスの絶妙さと、洒脱に付けこなすテクニックは、マスタークラスと言える腕前です。そこで、ヴィンテージ時計に寄せる思いの丈や付けなす際のこだわりを伺ってみました。
リアルなクラシックスタイルを知るテキストとして最適なもののひとつに、往年のハリウッドムービーが挙げられます。1940~60年代を描いた映画では、お洒落な紳士たちが小振りの機械式時計を品良く付けて登場します。そういった装い方を自分も取り入れようと、ヴィンテージ時計の道に入りました。
それに、ヴィンテージウォッチには一期一会の出会いがあるように思います。長い時間を経て、ようやく自分の手元にたどり着いた感じとでも言いましょうか。昔ながらの作りの良さや古色も当然ポイントですが、そういった特別感に心が動かされます」
▲ デニソンケースのヴィンテージロレックスは、スイスメイドに移行した現代モデルとは異なるドレッシーな趣が特徴的。アイボリー系の文字盤やアラビア数字のインデックスが柔和な雰囲気を引き立てます。
▲ ブラウンのスーツに同系色のベルト&金無垢のロレックスが良く似合っています。重ね付けするブレスレットやリングもゴールドで統一させるのが西口流。
▲ デニソンケースのヴィンテージロレックスは、スイスメイドに移行した現代モデルとは異なるドレッシーな趣が特徴的。アイボリー系の文字盤やアラビア数字のインデックスが柔和な雰囲気を引き立てます。
▲ ブラウンのスーツに同系色のベルト&金無垢のロレックスが良く似合っています。重ね付けするブレスレットやリングもゴールドで統一させるのが西口流。
今日の装いは、アルフォンソ シリカのオーダースーツをメインとしたリラックス感のあるスタイル。英国的なキャバルリーツイルの一着に、ヴィンテージロレックスが調和しています。
「ご存知のとおり、ロレックスはスイスの時計ブランドですが、創業当時は本社をロンドンに置いていました。英国での販売に軸足を置いていた時期があり、このモデルも英国製のデニソンケースを纏ったモデル。ただしインデックスの意匠はロレックスらしく、極めてオーソドックスなアラビア数字。ソフトな仕立てのスーツをニットで着こなす装いに、ほど良くマッチしていると考えます」
ここでちょっと解説すると、デニソンケースとは、デニソン・ウォッチケース・カンパニーというイギリスの会社が製造していた時計ケースのこと。当時、イギリス市場のみに供給された高品質なケースなので、時計好きやコレクターからも人気を集めているのです。
「確かなショップを見つけておくことが必須です」
「僕が大変お世話になっている、ヴィンテージウォッチショップの江口時計店で購入しました。僕は以前、スポーツロレックスを1本所持していたのですが、どうもスポーティすぎて自分にマッチしなかったんです。ある時、江口さんから『お好みのモデルが入りましたよ』と連絡をもらって見に行ったところ、これがとても気に入ってしまい。そのスポロレを下取りに出して、新たにこちらを手に入れたのです」
「連絡が来るほど、江口時計店とはなじみ深いんです」と語る西口さん。お店にもよく顔を出すのだそう。
「ヴィンテージウォッチの良し悪しは、外見だけで判断できるものではありません。なかには外見はキレイでも、ムーブメントの部品が取り換えられている個体もあると言います。だから僕は、安心して買い物ができるよう、ヴィンテージウォッチの目利きのいるお店を選んでいます。信頼関係が成立してしまえば、情報交換もスムースですし、もちろん下取りなど保証もしっかり付いてきます」
西口さんによると、信頼できる時計店を見つけておくことのメリットはまだあるのだとか。
「立ち寄った時に店主といろいろ話すことで、時計に関する知識を深めることができるのもポイント。時計のことを教えてもらえる機会って、なかなか日常にはないじゃないですか。だから、確かなショップを見つけておくことは、ヴィンテージ好きならマストだと思います」
「一期一会の出会いに心が動かされます」
その隣は、カルティエの名作であるタンク。こちらも繊細で美麗なルックスですが、個人的にはカジュアルまで合わせられる懐の深さも感じる1本。ドレススタイルだけでなく、レザーブルゾンを合わせるなど自由に楽しんでいます」
ストラップは、ブラックのファブリックのほか、オリーブに替えることも。ミリタリーらしいサンドブラストのスチールケースと24時間表示がお気に入りです。ただし、時刻がちょっとわかりづらいのが玉にキズ(笑)。でも、そこも含めて愛着を感じています」
「やっぱり、いつかはパテック フィリップが欲しいですね。実は先ほど紹介したヴァシュロン・コンスタンタンを手に入れた時に、ヴィンテージのカラトラバも候補に上がっていたんです。でも、50歳未満でカラトラバをきちんと付けこなすことは至難の技だと思って。もう少しだけ修業を積んでからトライしたいですね(笑)」
● 西口修平(にしぐち・しゅうへい)
ビームスF ディレクター。1977年、大阪府生まれ。学生時代に始めたビームスでのアルバイトを経て、ビームスに就職。関西での10年間の販売経験を積んだ後、ビームスFのバイヤーとして上京。2014年から現職。Instagram等のSNSでもその装いテクニックは注目を浴びている。
Instagram/@shuhei_nishiguchi