2021.03.13
第1回
知ってる? 「機械式」と「クオーツ式」の違い
腕時計を選ぶ時に、まず決めるべきは「機械式」か「クオーツ式」か。機械式の方が高額なイメージがあるけど、なぜ? 機械式の特徴、メリット・デメリットを解説します。
- CREDIT :
文/高井智世
時代を超える機械式時計の価値
でも、その違いは何となく分かるけど、実際問題何がどう違うの? 機械式の方が高級なイメージがあるけど、どうして? その疑問、それぞれの基本から理解できれば、選び方のコツや価値の理由も分かってくるはずですよ。
機械式の特徴は?
ゼンマイがほどける力は、調整しないとチョロQなどの玩具のようにすぐに使い果たされてしまいます。なので、ほどける力を脱進機という機構でスピード調整しながら歯車に伝えることで、針が規則正しく動く仕組みになっています。これらを行う機械=ムーブメントの部品数は、おおむね100点以上(パーツの説明は、また別の記事にて!)。
ケースのわずかな空間にこれだけのパーツが複雑に組み合わされるため、基本的に衝撃には弱く、また金属製ゆえに湿気や磁気帯びは大敵です。ですが、正しく扱い、定期的なメンテナンスを行なうことで、世代を超えて使い続けることも可能です。長年使うとパーツ交換が必要になる場合もありますが、修理して使い続けることはサステナブルでもあるのです。
機械式には「自動巻き」と「手巻き」がある
使う前に手で巻き、時間を合わせる必要があるのを手間ととるか、風情ととるかはあなた次第。ただ、機構がシンプルであるために、ムーブメントの厚みを抑えられるのがメリットです。ドレスウォッチなど袖口に引っかかりにくいスマートさが求められる薄型の時計によく用いられます。
手巻きの機構にローター部分が付加されるため、一般的には厚みが増しますが、これをいかに薄型化するか、また巻き上げ効率を上げていくか、というところに時計ブランドの工夫が光ります。
複雑時計は、もはや芸術品
▲ 「スプリット秒針クロノグラフ 5370P」手巻き、プラチナケース(41mm)、アリゲーターストラップ。2866万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ 経過時間を測定するクロノグラフ針を2本備え、複数のラップタイムを計測できるスプリット秒針クロノグラフ。312個に及ぶパーツで構成されるムーブメントは、工芸品のような美しさをもつ。
▲ 「スプリット秒針クロノグラフ 5370P」手巻き、プラチナケース(41mm)、アリゲーターストラップ。2866万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター)
▲ 経過時間を測定するクロノグラフ針を2本備え、複数のラップタイムを計測できるスプリット秒針クロノグラフ。312個に及ぶパーツで構成されるムーブメントは、工芸品のような美しさをもつ。
さらに、時間表示以外にも様々な機構を追加した複雑系モデルがあることも、機械式の特徴と言えるでしょう。複雑系ムーブメントはパーツ数が多くなるため、パーツが寸分の狂いなく組み立てられること、そして、パーツ同士の抵抗を抑えることが重要になります。そのために、パーツは最適値まで徹底的に磨き上げられます。
これらが一体となったムーブメントの繊細な輝きは、絶美かつ工芸的要素を備えます。パーツの磨きやムーブメントの組み立ては職人の手作業によるため、技術難度が上がるほどに値段は上昇カーブを描き、また希少性も高まります。機械式時計が高額なウラ側には、こういった理由があるのです。
■ お問い合わせ
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109