2017.09.24
もはや美術品!眺めても、"聴いても"美しい超複雑時計
ミニッツリピーターをはじめ、音で時間を表現する機構を備えた時計には技巧派ブランドの技術の粋が集められています。ここでは音が鳴るだけでなく、さらに複雑な仕組みをもつロマンチックな時計をご紹介します。
- CREDIT :
取材・文/篠田哲生 2017年10月号より
Ulysse Nardin[ユリス・ナルダン]
ジャズ ミニッツリピーター/4899万円
スライダーを動かすとミニッツリピーター機構が作動。ブラックオニキスのダイヤルの上にセットされた、ホワイトゴールド製のジャズカルテットが動き出すという、オートマタ(からくり)機構まで搭載。複雑機構と彫金技法を凝らしていますが、どこかロマンティックな魅力があります。
そもそも鳴り物時計とは?
① ミニッツリピーター
スライダーを操作すると作動。通常はハンマーとゴングが2組で、時が高音で分が低音、そして高低音を組み合わせるクオーター(15分)で、時刻を告げる。
② プチソヌリ
正時になると自動的に音が鳴る機構。2時なら2回、10時なら10回音が鳴る仕組みですが、オペラ鑑賞中などに音が鳴らないように、オンオフ機能が加わる。
③ グランソヌリ
15分おきに、時とクオーターを自動的に鳴らす機構。4時30分の場合は、まず4回高音が鳴ったあとに、高音と低音を組み合わせた音が2回鳴るという機構です。
④ ウエストミンスター・カリヨン
カリヨンとは組み鐘のこと。ロンドンのウエストミンスター宮殿の時計塔が奏でるメロディを再現するために、4つのハンマーを搭載している複雑機構です。
ところが「ミニッツリピーター」や「ソヌリ」などの鳴り物機構の場合は、いつまでもステイタスを保ち続けている。その理由は“音”にあります。鳴り物時計は、ハンマーがゴングを打ちつけることで発生する音で時を知らせる仕組みなので、時計であると同時に“楽器”でもあるのです。そして楽器である以上、美しい音を鳴らすためには、職人による微調整が必要になる。これがとても難しいのです。
さらにはミニッツリピーター機構の場合は、作動用のレバーによって駆動力を生み出しますが、自動的に音が鳴るソヌリ機構の場合は、時計用の動力ゼンマイだけで鳴り物機構を動かします。それだけのトルクを稼ぎ出すというのは至難の業であるため、時計技術の最高峰といわれているのです。繊細なパーツが多く、扱いには注意が必要なので、日常的に使うにははっきりいって不向きです。しかし美しい音は誰の心にも感動的に響きますし、しかも古くから愛されてきた機構ですから、手に入れる価値があるのです。
A.LANGE & SOHNE[A.ランゲ&ゾーネ]
ツァイトヴェルク・デシマルストライク/1304万円(予価)
時間の法則は12進法と60進法で構成されていますが、この時計は10進法(デシマル)も採用。もちろんデジタル式の時刻表示は通常どおりなのですが、正時になると低音が1回鳴り、さらに“10分おき”に1回ずつ高音が鳴るソヌリを搭載しています。
Bulgari[ブルガリ]
ダニエル・ロート アミラリオ・デル・テンポ ミニッツリピーター/3760万円(予価)
4つのハンマーを駆使して、“キンコンカンコン”というウエストミンスター・カリヨンを奏でる。ダイヤル部分はギョーシェ彫りの上にエナメルを施す“シャンルベ”を施す。精度を司る部分には、1748年に開発されたデテント脱進機を使用するという特殊で稀少なモデルです。
Vacheron Constantin[ヴァシュロン・コンスタンタン]
トラディショナル・キャリバー2755/価格要問い合わせ
マルタ十字のキャリッジを持つトゥールビヨン機構と針表示式の永久カレンダー、そしてミニッツリピーター機構を44㎜という使いやすいサイズに収めた超絶モデル。これだけの機構を組み込みながらも、パワーリザーブは約58時間を確保。さらに高精度の証であるジュネーブ・シールも取得。