「リシャール・ミルは、よくF1マシンにたとえられる。私自身、F1を含むカーレースの世界が好きなので、そのことを気に入っているのだが、それは腕時計作りの姿勢に由来している。F1では、レースでより速く、より安全に戦う数台のマシンのために、莫大な資金を費やした研究と技術、才能が惜しげもなく投下される。そんなことができるのは、レースの場で培われる技術や才能が、のちに自動車そのものの進化に貢献するという考え方があるからだ。
いまや成功者の証とも言われるようになったリシャール・ミルだが、そのブランディングにモータースポーツ、とりわけクルマの存在は切っても切れないものとなっている。
リシャール・ミルが見たサウンド・オブ・エンジン
そもそもこのイベントは鈴鹿サーキットの50周年事業として2015年にスタートしたもの。クルマとオートバイ、さらにはモータースポーツがもつ歴史そのものにスポットを当て、公道走行可能なナンバー付きの車両からフォーミュラマシンまでが一堂に会するイベントとして国内有数の規模を誇り、モーターフリークの間ではよく知られていた。
すでにヨーロッパを中心に『ル・マン・クラシック』『ラリー・デ・プランセス』『シャンティイ アート&エレガンス』などを主催もしくは冠スポンサーとして開催しているリシャール・ミルにとって、『鈴鹿 サウンド・オブ・エンジン』はそれらに連なる日本版のイベントとして、非常に重要な位置付けなのだと聞いた。実際、世界有数のヴィンテージカーコレクターでありながら、そのなかにはヴィンテージのバスやミニカー(普通車をひと回り小さくしたようなファニーカー)に、フォーミュラカーまでを含み、本人がドライビングラヴァーであるリシャール氏にとって、世界有数の名コースを仲間とともにドライブし、新旧織り交ぜてのクルマの一大祭典を、ここ日本で作り上げることは一つの夢でもあったろう。
ヒストリックカーから最新のスーパーマシンまで
そもそも、その発端からして国内外のヒストリックカーやフォーミュラ、レーシングマシンが多く集うイベントであるわけだが、リシャール・ミルがメインスポンサーに名乗りを上げた2016年から、つまりリシャール・ミルのオーナーたちが参加するようになってからは目を見張るような最新スーパーマシンが華を添えることになった。
視点を観客からリシャール・ミルのゲスト(リシャール・ミルのオーナーで専用ラウンジに入ることを許された人たち)側に移すと、さらにこのイベントが特別なものに見えてくる。
まず、ゲストはカップルでの参加、家族での参加が思いのほか多い。おそらく前回よりも今回の方がさらに多かったんじゃないだろうか。これはリシャール・ミルのホスピタリティへの気遣いによることは間違いない。ここにその様子をお見せすることができないのが残念だが、男性陣がクルマと時計の話に興じている間、女性や家族が手持ち無沙汰にならないよう、クオリティの高いシャンパンやワイン、食事とデザートが常にフリーで用意され、別室にはマッサージルームやリラクゼーションエリアも。そのサマはまさに高級ラウンジそのもの、モータースポーツとそのカルチャーにありがちなオイル臭さやある種のオタク臭さは一切ない。
仲間意識に近い雰囲気が漂うラウンジ
このイベントにリシャール・ミルのゲストとして参加している大半の方々は実業においての成功者であり、およそ一般の人たちが欲するものを手に入れられる財を手に入れた人たちだろう。けれども、そんな人たちが欲しているのは未知の体験であり、上質なホスピタリティであり、自分たちの趣向を理解し合える仲間とその空間だということがよくわかる。
2日間のイベントの最終日、ゲストの皆さんが「また来年!」と声を掛け合っていた。
詳細なスケジュールはまだ発表されていないが、リシャール・ミルは今年も引き続きこの『鈴鹿 サウンド・オブ・エンジン』の冠スポンサーであり続けるようだ。