2019.08.04
カルティエ「タンク」はなぜ時計好きの心を惹きつけ続けるのか?
誕生してから100年にわたって愛され続けるカルティエ「タンク」。性別も年齢も超えて人々を魅了するその魅力に迫る。
- CREDIT :
文/福田 豊
一昨年、誕生100周年を迎えた歴史的名作時計
次世代の「腕時計のかたち」を創造した、時計史に残る傑作デザイン
結果、「タンク」はラグを不要とした。つまり「タンク」は、それまでの腕時計が懐中時計の単純な改造であったのに対し、懐中時計とはまったく違う"腕時計のかたち"を創造した。「タンク」のデザインは時計史に残るものなのです。
時計を超えた、歴史的芸術作品である
しかし、「タンク」の何よりの素晴らしさは、新しい時代の芸術である「アール・デコ」を表していたことなのです。
アール・デコは1925年のパリ「アール・デコ展」(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)を機に開花し、「世界で初めて世界を一周した芸術」などともいわれる、世界中を席巻した芸術。そしてそのアール・デコは、実はカルティエの創案した様式であり、またアール・デコの主役はカルティエでした。
ところがそれ以前に、カルティエは「タンク」で既にそれを体現していたのです。「タンク」の幾何学的な直線性を強調したかたちや、白と黒の対比といった、独特のデザインコードは、そのままアール・デコのものだから。すなわち「タンク」は、カルティエが生み出したアール・デコの最初期の代表作のひとつ。時計という以前に、全デザイン史のなかで語られるべき、歴史的芸術作品であるのです。
また、タンクのもうひとつの魅力が、進化し続けていること。
1921年に生まれた「タンク サントレ」。長方形で手首を包む湾曲したフォルムが特徴です。写真は1924年のカルティエ、パリで製作されたピース。© Cartier
1922年に発売された「タンク ルイ カルティエ」は、ルイ・カルティエ自身が身に付けていたモデル。角の取れたスクエアにケース一体型のラグと、時代にとらわれない端正なデザインです。「タンク ルイ カルティエ ウォッチ 」LM クオーツ、18KYGケース(33.7×25.5mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。107万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Vincent Wulveryck@Cartier
1989年に発表された「タンク アメリカン」は「タンク サントレ」の系統を受け継いだモデル。大ぶりな時計の人気が流行っていた当時、その繊細でエレガントなデザインは注目を集めました。「タンク アメリカン ウォッチ」MM 自動巻き、18KPGケース(41.6×22.6mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。143万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Photo 2000 © Cartier
1996年に発表された「タンク フランセーズ」は、従来の「タンク」のデザインを一変させるものでした。ラインやボリューム感、素材が途切れることなくカーブを描くケースとブレスレットが美しい。写真は2009年のピース。
2012年には、オリジナルのタンク ウォッチの特徴を再解釈した「タンク アングレーズ」をリリースした。Photo 2000 © Cartier
2013年に発表された「タンク MC」はクラシックで男らしいモデル。自社製のムーブメントを搭載している点も高評価です。「タンク MC ウォッチ」LM 自動巻き、SSケース(38.9×43.9mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。108万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Photo 2000 © Cartier
1921年に生まれた「タンク サントレ」。長方形で手首を包む湾曲したフォルムが特徴です。写真は1924年のカルティエ、パリで製作されたピース。© Cartier
1922年に発売された「タンク ルイ カルティエ」は、ルイ・カルティエ自身が身に付けていたモデル。角の取れたスクエアにケース一体型のラグと、時代にとらわれない端正なデザインです。「タンク ルイ カルティエ ウォッチ 」LM クオーツ、18KYGケース(33.7×25.5mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。107万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Vincent Wulveryck@Cartier
1989年に発表された「タンク アメリカン」は「タンク サントレ」の系統を受け継いだモデル。大ぶりな時計の人気が流行っていた当時、その繊細でエレガントなデザインは注目を集めました。「タンク アメリカン ウォッチ」MM 自動巻き、18KPGケース(41.6×22.6mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。143万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Photo 2000 © Cartier
1996年に発表された「タンク フランセーズ」は、従来の「タンク」のデザインを一変させるものでした。ラインやボリューム感、素材が途切れることなくカーブを描くケースとブレスレットが美しい。写真は2009年のピース。
2012年には、オリジナルのタンク ウォッチの特徴を再解釈した「タンク アングレーズ」をリリースした。Photo 2000 © Cartier
2013年に発表された「タンク MC」はクラシックで男らしいモデル。自社製のムーブメントを搭載している点も高評価です。「タンク MC ウォッチ」LM 自動巻き、SSケース(38.9×43.9mm)、アリゲーターストラップ、日常生活防水。108万円/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)Photo 2000 © Cartier
数多の著名人たちに愛され続けている
それら「タンキスト」と呼ばれる男女は、ルドルフ・ヴァレンティノ(1895~1926年)、クラーク・ゲーブル(1901~1960年)、ジャン=ピエール・メルヴィル(1917~1973年)、イヴ・モンタン(1921~1991年)、トルーマン・カポーティー(1924~1984年)、アンディ・ウォーホル(1928~1987年)、アラン・ドロン(1935年~)、イヴ・サンローラン(1936~2008年)、ジャクリーン・ケネディ・オナシス(1929~1994年)、シャーロット・ランプリング(1946年~)、パティ・スミス(1946年~)などなど、錚々たる顔ぶれが枚挙にいとまないほどズラリと並びます。
映画『熱砂の舞』にて、俳優ルドルフ・ヴァレンティノ(1895〜1926年)は監督に、アラブのプリンスを演じるにあたって自身の「タンク」を全シーンで着用したいと申し出ました。これが「タンク」の映画初出演となったのです。
ゲイリー・クーパー(1901〜1961年)
ポップアートの旗手、画家のアンディー・ウォーホル(1928〜1987年)も「タンク」を愛用していました。しかし一度も巻き上げたことはなく、とあるインタビューでは「私がこれを身に付けるのは、時間を知るためではないのです」と語ったという。
映画『リスボン急行』の撮影現場での、アラン・ドロン(1935〜年)と監督のジャン・ピエール・メルヴィル。二人とも「タンク アロンディ」を付けていることに気づいたそう。
自身の「タンク」を着用したイヴ・サンローラン(1936〜2008年)。ホルスト撮影。
シャーロット・ランプリング(1946〜年)
映画『熱砂の舞』にて、俳優ルドルフ・ヴァレンティノ(1895〜1926年)は監督に、アラブのプリンスを演じるにあたって自身の「タンク」を全シーンで着用したいと申し出ました。これが「タンク」の映画初出演となったのです。
ゲイリー・クーパー(1901〜1961年)
ポップアートの旗手、画家のアンディー・ウォーホル(1928〜1987年)も「タンク」を愛用していました。しかし一度も巻き上げたことはなく、とあるインタビューでは「私がこれを身に付けるのは、時間を知るためではないのです」と語ったという。
映画『リスボン急行』の撮影現場での、アラン・ドロン(1935〜年)と監督のジャン・ピエール・メルヴィル。二人とも「タンク アロンディ」を付けていることに気づいたそう。
自身の「タンク」を着用したイヴ・サンローラン(1936〜2008年)。ホルスト撮影。
シャーロット・ランプリング(1946〜年)
さて。というのが、タンクが100年にも渡って計好きの男女の心を惹き付けた理由。そして次の100年もきっと、我々の心を魅了し続けてくれるであろう、タンクの普遍的な魅力なのです。
■ お問い合わせ
カルティエ カスタマーサービスセンター 0120-301-757