2018.11.05
30万円で買える高級時計を選ぶとしたら?
スイスの時計ブランド、フレデリック・コンスタントが2018年に創業30周年を迎えることに。来日した社長にブランドの歩みを伺いました。
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写真/内田裕介(maettico) 文/福田 豊
“手の届くラグジュアリー時計”を実現
「パリで創業30周年のイベントを開催するんです。30年間の出来事をムービーにしたのを観てもらったり。私と妻のふたりが過去のことを、新しく就任したディレクターが未来のことを話す。そんなイベントになる予定です」
フレデリック・コンスタントは1988年にスタースさんが創業。ハイクオリティの本格機械式時計を身近な価格で提供する「Accessible Luxury=手の届くラグジュアリー」をブランドのフィロソフィーとする。具体的には、30歳代後半~40歳代後半のビジネスマンやビジネスウーマンがターゲット。プライスは10万~30万円台が中心にされている。
時計ビジネスをはじめたワケ
そうして1994年に発表した、ダイヤルの窓にテンプの振動=ビートを覗かせた「ハートビート」が大ヒット。独創的なデザインがブランドのアイコンとなり、フレデリック・コンスタントの名が世界中に知られるようになる。さらに2004年に自社製ムーブメントを開発し、マニュファクチュールとしての地位を確立した。
2006年には新工場を建設し、遂に、超複雑機構のトゥールビヨンを自社開発。2016年に、やはり超複雑機構である永久カレンダーを自社開発。2017年にフライバッククロノグラフを開発。そして2018年の今年、発表されたのが永久カレンダーとトゥールビヨンを併載した「クラシック パーペチュアルカレンダー トゥールビヨン マニュファクチュール」だ。
「ともに超複雑機構のトゥールビヨンと永久カレンダーを合わせたグランドコンプリケーションがアニバーサリーに相応しいと考えたんです。フレデリック・コンスタントのモデルにしては高価ですが、でもこの超複雑機構でこの価格はリーズナブル。そう思いませんか」
トゥールビヨンは脱進機にシリシウムを使用した、今日の時計界での最先端。確かに、この精巧なつくりでこの価格は破格といえる。フレデリック・コンスタントは創業以来30年間、一貫して「手の届くラグジュアリー」であり続けている。
年々上昇する高級時計市場。フレデリック・コンスタントの結論は?
「価格については、社内でディスカッションしたことがあります。もっと値上げをしてもいいのじゃないか、と。ですが、ほかのブランドを見たとき、やはり自分の感覚としては高価すぎると感じる。フレデリック・コンスタントのターゲットはジュニアマネジャーなどの中間層であり、そういうビジネスマンやビジネスウーマンに使ってほしい。だから価格を上げるのはフェアじゃないと思った。より多くのひとたちに時計を届けることを選んだんです」
そう、価格を高くするのは,ある意味、簡単なこと。有名になれば値上げをしても消費者は付いてきてくれる。だがそれを「フェアじゃない」というスタースさんは、とても真摯で好感がもてます。
来春には、もうひとつ新工場が開設するとのことで、さらなる発展と進化が大いに期待できる。次の「手の届くラグジュアリー」がどんなモデルか、いまから楽しみです。
◆ 創業30周年を記念した限定トゥールビヨン
「クラシック パーペチュアル カレンダー トゥールビヨン マニュファクチュール」 自動巻き、パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ケース径42㎜、5気圧防水、ステンレススチール、アリゲーターストラップ。世界限定88本。281万8000 円/フレデリック・コンスタント(フレデリック・コンスタント相談室)
● フレデリック・コンスタント相談室
お問い合わせ/0570-03-1988
URL/http://frederiqueconstant.jp
● ピーター・C・スタース(Drs. Peter C. Stas)
フレデリック・コンスタント グループ社長
オランダ、ゴーダ生まれ。大学で経営学の学士号を取得後、ニューヨークの法律事務所勤務を経て、オランダのフィリップス社のマーケティング責任者に就任。現在、「フレデリック・コンスタント」のほか「アルピナ」「アトリエ・デ・モナコ」の全3ブランドで構成される「フレデリック・コンスタント グループ」の社長として、デザインと製品開発を担当する妻とともに、グループを統括する。