仕組みとしては、普通充電とは、交流(AC)の電源で行うもの。ご存知のとおり、日本の電気設備は基本的に100Vで動いている。もちろん100Vでも充電は可能だが、それでは自動車の充電に時間がかかりすぎるため、工事をして200V(16A)に変更することが一般的だ。
近年はBEV促進のために自治体やメーカーから工事費用の補助金が出るケースも多い。また、普通充電器の出力は一般的に約3kWだが、最近では 6kWの高出力な普通充電器も登場している。
一方で、急速充電は直流(DC)の電源を使用する。急速充電器は高出力で短時間充電が可能だが、設備投資が必要で電気代もかさむため、自動車ディーラーや高速道路のサービスエリア、公共施設などパブリックスペースに設置されているものがほとんどだ。初期に設置された急速充電器は30 kWくらいのものが多く、いま高速道路のSAに多いのは44 kW仕様だ。
急速充電ポートの形状も国によって異なるのも課題のひとつ
ただし、PHEVのほとんどは急速充電には対応していない。これは、PHEVの多くはバッテリー容量20 kW以下でBEVに比べて小さく、メーカーサイドとしても家庭での充電を念頭に急速充電対応は必要ないと判断しているようだ(一部、三菱アウトランダーPHEVやメルセデス・ベンツA 250 eなど対応しているものもある)。
三菱i-Mievや日産リーフなどリチウムイオン電池を使った量産電気自動車を世界に先駆けて発売してきた日本は、急速充電ポートの世界統一規格をつくろうと働きかけていた。そして2010年にトヨタ、日産、三菱、スバル、東京電力の5社が幹事となって協議会が設立され生まれたのが「CHAdeMO(チャデモ)」だ。
これは、「CHArge de Move=動くためのチャージ」「de=電気」「充電中にお茶でも」の3つの意味を含んだ造語というが、日本のダジャレが海外に通用するはずもなく、欧米では異なる方式が採用されている。
いま国際標準規格としては、日本の「CHAdeMO」、アメリカの「コンボ1」、ドイツの「コンボ2」、中国の「GB/T」の4方式が承認されている。現在、日本と中国は次世代の急速充電規格「ChaoJi(チャオジ)」の共同開発を進めているようだが、将来的に世界統一規格になるかは、まだ不明だ。
次回【後編】では、テスラをはじめ行政任せにせず独自の充電網を構築することで差別化を図っている、プレミアムブランドの取り組みなどについて紹介する。
藤野太一(ふじの・たいち)
モータージャーナリスト。大学卒業後、中古車情報誌「カーセンサー」、カーセンサーエッジの編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。国内および海外での新型車試乗はもとより、自動車関連をはじめさまざまな分野のビジネスマンを取材する機会も多く「日経ビジネス」などにも寄稿。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属