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2024.04.15

VOL.17 「電気自動車ってなんだ?」

日本初! 東京で開催されたフォーミュラEをレポート

2024年3月30日、100%電動フォーミュラカーによるレースが東京で開催された。舞台となったのは、有明を中心としたベイエリア。エンジン音のない、新時代のレースの見どころ、ポイントとは?

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文/藤野太一 編集/Web LEON編集部

公道をフォーミュラEが駆け抜ける!

2024年3月30日、日本ではじめてFIAフォーミュラE世界選手権「東京E-Prix」が開催された。コースは東京・有明にある東京ビッグサイト(東京国際展⽰場)を囲むレイアウトで、ピットやピットレーンは東京ビッグサイトの臨時駐車場に設営。ピット裏には東京湾と東京ゲートブリッジを、ホームストレート越しには有明や豊洲のタワーマンション群をのぞむというシチュエーションで、東京都としては史上初の公道を使った自動車レースだった。
フォーミュラE 東京 F1
▲ スタートシーン。ポールポジションはホームレースとなるニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手。
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フォーミュラE 東京 F1
▲ 東京ビッグサイトの臨時駐車場につくられたホームストレート。アスファルトは新しいものが敷かれていた。奥には豊洲・有明エリアのタワマン群が。
フォーミュラE 東京 F1
▲ コースは1周約2.6kmでコーナーの数は20。多くのドライバーから道幅が狭く、追い抜きが難しいというコメントが聞かれた。
そもそもフォーミュラEとは、2014−15年シーズンにはじまった100%電動フォーミュラカーによるレース。最大の特徴は、排ガスも騒音もないため、基本的にサーキットではなく大都市やリゾート地などの市街地コースで行われること。

今シーズンもサンパウロ、上海、ロンドン、ベルリン、モナコなどの市街地で行われているが、ようやく日本での開催にこぎつけたというわけだ。
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フォーミュラE 東京 F1 ローマ
フォーミュラE 東京 F1 ロンドン
▲ 昨年のローマ大会では市街地を激走。ロンドン大会でも電車と並走するシーンが見られた。排ガスがなく、騒音も少ないことからこうした象徴的な場所を走ることができるのがEVのメリット。
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第三世代へと進化したマシンの実力はいかに?

日本でも数年前から横浜市や東京都などでの開催が検討されてきたが、近年のZEV(ゼロエミッションビークル)の普及、そしてカーボンニュートラル社会の実現といった目標と合致することあり、小池百合子都知事の陣頭指揮のもと東京大会が実現した。

今季で10シーズン目を迎えるフォーミュラEでは、マシンは約10年の歳月をかけて第三世代である「GEN3」に進化している。先代のGEN2と比べ車両重量を大幅に軽量化。最高出力は250kWから350kWにまでパワーアップし、最高速度は時速300km/hを超える。また前後に2基のモーターを搭載し(フロントは回生専用)、最大回生電力は600kWに向上しており、強大な回生ブレーキを発生するためリアに油圧ブレーキは必要ないという。

現行のフォーミュラEのルールでは、新規参戦メーカーの負担を軽減するため、シャシーや空力パーツ、そしてバッテリーなどの独自開発は認めておらず、モーターやトランスミッションなどのパワートレインをのぞけばほぼワンメイク仕様となっている。

それゆえ、新規参入が比較的容易である一方で、メーカーとしては独自技術のアピールの場としては活用しづらいこともあり、メルセデス、BMW、アウディといったドイツ御三家も一度は参戦したものの撤退してしまった経緯がある。主催者サイドとしては、F1のように空力パーツもパワートレインも自由競争にするとコストが高騰してしまい新規参入しづらくなることを懸念しているというわけだ。
フォーミュラE 東京 F1
▲ タイヤもワンメイクで現在はハンコック製を採用する。F1のようなスリックタイヤではなく、あくまで公道走行を念頭に開発されたもので一般的なタイヤと同じく溝が切られている。したがって、ソフトやハード、ウェットと状況に応じてタイヤ交換をすることはなく、あくまでこの1種類でレースを行う。サステイナブルであり、かつここで培った技術がすぐに市販タイヤに反映されるメリットもある。ネクスト・ジェネレーションではブリヂストンの参戦が決まっている。
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ジャガー、ポルシェ、マセラティ、日産も参戦

現在自動車メーカーとしてワークス参戦しているのは、ジャガー、ポルシェ、DSオートモビル、マセラティ、そして日本のメーカーとしては唯一、日産自動車が顔を並べる。全11チーム、22台、22名のドライバーによって、今シーズンは全16戦で争われる。

これらの顔ぶれを見ればわかるように、ジャガーiペイス、ポルシェ タイカン、マカン、 DS3クロスバックE-TENSE、マセラティ グラントゥーリズモフォルゴレ、日産アリア、リーフ、サクラなど、参戦しているすべてのメーカーがすでにEVを市販している。
フォーミュラE 東京 F1 ポルシェタイカン
▲ 今シーズンのセーフティカーをつとめるのは、ポルシェ タイカン。
快晴に恵まれた3月30日に予選&決勝が行われた。1日でまとめて予選と決勝が見られるスケジュールのコンパクトさもフォーミュラEのメリットでもある。約1万席分用意されたチケットはおよそ3分で完売。

主催者発表によると最終的に約2万人の観衆が訪れた。サーキットでのレース観戦といえば、とにかく遠方で交通手段はクルマしかなく、そして帰りはほぼ間違いなく渋滞に巻き込まれる。しかし、東京ビックサイトならゆりかもめでも、バスでもタクシーでも都心へすぐにアクセス可能だ。

例えば神宮外苑や東京都庁など、もっと都心を走るアイデアもあったようだが、現実的には警察や自治体、地域住民の理解が得られなければ週末の都心の公道を封鎖してレースを行うのは容易なことではない。ましてや観客スタンドはもちろん、トイレ、イベントスペース、そして世界選手権のようなレースイベントには欠かせないVIPラウンジの設営なども必要になる。

フォーミュラEの今大会でもF1のパドッククラブのような「EMOTION CLUB」と呼ばれるVIPラウンジが用意されており、そうしたもろもろの要素を鑑みれば、東京ビックサイトを活用するというアイデアは現実的だったと思う。
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デートにもオススメなEMOTION CLUBとは?

EMOTION CLUBとは、最上級グレードのホスピタリティラウンジのことで、参戦する各メーカーがそれぞれ観戦用のブースを設置している。当然誰もが入れるわけではなく、メーカーのVIPかEMOTION CLUBのチケット購入者だけが入室を許される特別な空間だ。今回の「東京E-Prix」では特別な入場ゲートが設けられ、サーキットに一番近いホットな観戦エリアが用意された。
フォーミュラE 東京 F1
▲ 快適な室内ではソファでくつろぎ、本格的なファインダイニングとフリーフローを楽しみながら大画面でレースを観戦できる。
フォーミュラE 東京 F1
▲ コースの目の前に設置された屋外の観戦エリアも、有明であることを忘れさせるラグジュアリーな空間だった。
シャンパンを片手に室内にある大型ディスプレイのライブ中継を見るもよし、屋外で目の前を駆け抜けるマシンをライブ体験するもよし、いずれもより臨場感と一体感のある観戦が楽しめるので、女性を連れ立って楽しみたいという読者諸兄には実にピッタリのシートだろう。
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さてレースはというと、公式予選でニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランドがポールポジションを獲得。ホームレースだけに日産の応援スタンドも大いに盛り上がった。そして、決勝レース前には、フォーミュラEの東京への誘致を陣頭指揮した小池百合子東京都知事と政府として目標を掲げている2050年のカーボンニュートラル活動への一環ということもあり、岸田文雄首相がスターティンググリッドにサプライズ登場し華を添えた。

決勝レースは、ポールポジションのオリバー・ローランドと2位につけたマセラティMSGレーシングのマキシミリアン・ギュンターがデッドヒートを繰り広げ、最終的にマセラティのギュンターが勝利。ニッサンのローランドは惜しくも2位となった。
フォーミュラE 東京 F1 マセラティ
▲ マセラティのマキシミリアン・ギュンターとニッサンのオリバー・ローランドが抜きつ抜かれつのバトルを展開。コースサイドからの距離の近さもこのレースの魅力。
フォーミュラE 東京 F1 マセラティ
▲ 初開催となる「東京E-Prix」で優勝したマセラティMSGレーシングのチームスタッフとマキシミリアン・ギュンター選手。
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はじめての観戦でも楽しめるのが魅力

フォーミュラEの魅力は、最後までめまぐるしくバトルが繰り広げられる展開の面白さにある。スタートダッシュを決めて、あとはひたすらトップが変わらない最近のF1とはまったくの別もの。今回、はじめてレース観戦をしたという人も多くいたが、想像していた以上に楽しかったという声を聞けたのが印象的だった。
フォーミュラE 東京 F1
▲ 東京にあわせて桜色に塗られたポルシェのマシン。「とまれ」などの道路表示を無視して全開走行するそのギャップが、なかなかユニーク。
EVの技術は日進月歩なので、2026−2027シーズンからは「GEN4」のマシンが導入予定だ。これは、さらにバッテリー容量も航続距離も伸び、パワーも現行の倍近くになったコンペティティブなマシンになると公表されている。またそのタイミングにおいて、ワンメイクのタイヤサプライヤーとして日本のブリヂストンが参戦。さらに先日、二輪メーカーのヤマハ発動機が英国の老舗レーシングカーコンストラクターのローラと手を組んで、電動パワートレインの開発、供給を行う予定という。

「東京E-Prix」は3年契約といわれており、今大会の成功を受けて来年はさらに席数や観客数も増えることになるはずだ。また市販のEVと同様にフォーミュラEもまた進化の過程にあり、おそらく今後は新規メーカーの参入や再参入もあるだろう。エンジン音がないレースなんてつまらないと思い込んでいる人は、ぜひライブでの観戦をおすすめしたい。
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