優雅なボディにF1由来の技術を惜しみなく盛り込んだ注目の1台
F1ゆらいの技術を盛り込んだ3リッターV6エンジンを、余裕あるサイズのボディに搭載し、フルオープンになる電動幌をそなえた4人乗り2ドアクーペが、グランカブリオ。
5メートル近い全長を活かして、流麗さを強調したボディスタイルと、目がさめるような性能のエンジン。内装もすてきで、彼女も気に入ることまちがいなし、と太鼓判グルマなのですよ。
もちろん、日本でも、どんどんご自分を見せていただきたい。そんなときのために、LEONでは、オシャレ好きオヤジさんのために、ファッションを追求しているわけです。参考になれば幸いであります。
とくに、ドライビングコートも似合えばジャケットもオーケイ、夏場だったら白いTシャツもすてき、と乗るひととのマッチングにおいて万能選手ぶりを発揮してくれるのが、今回のグランカブリオ。バリバリのスポーツカーとはちょっと違って、セダン感覚で乗れちゃうモデルで、そこが欧米のオヤジさん方の支持を得ているゆえんでありましょう。
グランカブリオに、私が初めて乗れたのは、24年11月。発表からすこし遅れて、ようやくテストドライブさせてもらえる車両が入ってきました。乗ったのは、先述のとおり3リッターV6の「グランカブリオ・トロフェオ」なるトップグレードです。
いつまでも走らせたくなる官能的な高回転型のエンジン
なにがいいって、エンジンがいいんです。最高出力が6500rpmで、最大トルクが6000rpmで出るという、いまどきめずらしい高回転型。アクセルペダルを踏むと、さーっと一気にレッドゾーンめざしてエンジン回転が上がり、ぐいぐいと力が出て、車体がすごい勢いで加速していくのを感じられます。
音もいい。乾いた破裂音が響きます。これ、やみつきになりますぞ。むかしはスポーツカーのアクセルワークは、キッチンナイフにとたえられたりしました。足の動きはすばやく、たとえば”ナイフですぱっと、かつトントンッと連続的に切るように”踏みなさい、なんて言われたのを思い出します。
まあでも、ものすごく太いトルクですから、ゆっくり走ってもなんの問題もありません。ハンドルを切ったときの操舵感覚は、やたらスポーティで神経質で乗り手は気をつかう、なんてこともありません。電子制御ダンパーを使ったサスペンションシステムのおかげで、乗り心地は快適であります。
マセラティらしい唯一無二のラグジュアリーな内装も進化
モニタースクリーンでの操作を多くしたコントロール類、プッシュボタン式のギアセレクター、さまざまな運転支援システムと、車内の娯楽のためのインフォテイメントシステムの充実。マセラティのスポーティSUV、グレカーレとも共通する最新のデザインランゲージが採用されているんですね。
ユニークなのは、電動開閉式ソフトトップの開閉は、ダッシュボード内のコントロールパネルで行うこと。画面内のクルマの画像の幌のあたりをスワイプすることで、開閉装置は作動します。時速50km以下なら14秒で開閉可能であります。
黒のトップ(幌)とは、いわば、英国の紳士傘が基本は黒、というのと近いのです。英国紳士は、多少の雨なら傘をささず、どうしてもささなくてはならないときは黒の傘。歌舞伎の黒子みたいなものと私は勝手に思ってますが、存在していないんですよ、と言いたいわけす。ドロップヘッドクーペの幌が黒だったのも、同じ理由でしょう。
マセラティ・グランカブリオのよさは、ちょっとクラシカルな男の世界観に通じるところでしょうか。もちろん、そのなかには、意中のあのコを口説いちゃおうというヨコシマな動機が含まれていてもいいんです。なにしろ、それがメンズ・メンズ・ワールドですから。あ、もちろん、女性が乗ってもサマになります。
■ Maserati GranCabrio Trofeo
全長×全幅×全高:4960×1950×1380mm
ホイールベース:2929mm
2992ccV型6気筒 後輪駆動
最高出力:404kW(550ps)@6500rpm
最大トルク:650Nm@6000rpm
8段オートマチック変速機
車重:1970kg
価格:3120万円
■ マセラティ・ジャパン
HP/https://www.maserati.com/jp/ja
● 小川フミオ
クルマ雑誌、グルメ雑誌の編集長を経て、フリーランスのライフスタイルジャーナリストとして活躍中。新車の試乗記などクルマ関連を中心に、グルメ、ファッション(ときどき)、他分野のプロダクト、人物インタビューなどさまざまなジャンルの記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。