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2025.03.30

上手い運転と下手な運転はどこが違うのかわかりますか? 【その2】

今から69年前の1956年に免許を取って以来、「上手くなりたい」「カッコよく運転したい」「速くなりたい」と思い続けてきた筆者。では「上手い運転」とは具体的には何を意味するのでしょう? その第2弾です。

BY :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第254回

「上手いドライバーになるには!」 その2

イラスト 溝呂木
前回に続いて、「上手いドライバーになるには!」のあれこれ、、もう少し深く掘り下げてみよう。

一般のドライバーには「コーナーを速く駆け抜けるテクニック」など必要ない。

必要なのは、広い視野で周囲に気を配る習慣をつけること。危険を感じたら、その危険からできるだけ速く、そして安全なアクションで切り抜ける技を身につけることだ。

とはいっても、一般のドライバーが、危機回避テクニックを身に付ける訓練を受けるような機会はほとんどない。
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一般的な運転教習所での練習は、あくまでも基本中の基本を学ぶところ。高度な領域にまで踏み込み、その現象を実際に体感したうえでの対処法/危険回避テクニックを学ぶところではない。

だから、できれば、緊急回避でのハンドル操作や急ブレーキ操作等を体験する機会に、積極的にアプローチしたい。

自動車メーカーがサーキットで行うような、高度な運転講習会への参加などがその一例だが、十分な安全を確保したうえで、限界領域の体験などもしっかりさせてくれる。

例えばブレーキひとつ取ってみても、とっさの場合に、フルにブレーキを踏めるドライバーは10人に一人もいない。いや、もっとずっと少ないかも知れない。

自分では、全力で、100%のブレーキを踏んでいるつもりでも、残念ながら、80~90%でしか踏めていないドライバーがほとんど、、というのが現実なのだ。
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「運転を職業にしているドライバー」は一般に「プロ」と呼ばれる。タクシーやトラックのドライバーもそれに当たる。だが、調査によると、彼らにしても100%のブレーキを踏んだ経験のある人は限られているようだ。

運転歴の長いプロなら、もちろん多くを体験している。なので、危険を予知し、それに対応できる幅も広く、奥行きも深いだろう。

そしてそれは、日常的なドライブの安全性に大いに寄与しているのは間違いない。

ところが、、非日常的な危険/危機に突如出会ったような時の「緊急回避能力」ともなると、プロと呼ばれる彼等でさえ、「優れている」とは断言できないということだ。

緊急回避能力を高めるには、それなりの経験と訓練を積み重ねることが必要だからだ。そして、それには、自ら進んで、強い意思を持ち、取り組んでゆかねばならない。
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運転好きなら、スポーツライクな運転をも楽しみながら、同時に、安全性をも高めるといった取り組みもできる。

モータースポーツの道に入るのは、運転技量を高める最良の道だろう。、、が、経済的にも時間的にも負担は大きい。加えて、ある程度の危険性も、当然考えなければならない。

なので、一般的には、ドライビングスクールに入り、できれば上級クラスまで進むのがいちばんのオススメだ。お小遣いを節約して受講料を捻出する価値は十分にある。

こうしたスクールに参加すれば、、特に上級クラスに参加すれば、「腕自慢」でも、自分の未熟さにすぐ気付かされる。

とりわけ限界領域に入ると、「クルマって、これほど自由にならないものなのか!」ということにすぐ気付かされる。と同時に、自分とは次元の違うインストラクターたちのテクニックにも驚かされるだろう。
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そんな事実を目の前にすれば、当然のことながら謙虚な気持ちになり、素直に「運転がうまくなりたい」という気持ちになるだろう。ここがもっとも大切なところだ。

繰り返しになるが、限界領域のあれこれを、自身の身体と感覚で体験することは、クルマの楽しさ怖さをより奥深く知り、自分の限界をも知ることに結び付く。

「上手い運転とは?」、、前回から、いろいろな表現で触れているが、まず初めに知って頂きたいのは、「荒い運転」と「丁寧な運転」の違いだ。

発進時やカーブを曲がる時、タイヤに悲鳴をあげさせるような運転を「カッコいい!」と思う人も少なくないようだが、それは違う。

僕も若い頃はこの種のドライバーだった。なので、いまさらきれいごとを言える筋合いではないかもしれない。、、が、まぁ、若気の至りと言うことでご勘弁頂きたい。
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ちなみに、歳を重ねるにつれて僕の運転は穏やかになっていった。だが、それは単にゆっくり走るようになったということではない。道路の状況次第では飛ばしもする。

いわば、環境に応じてメリハリをしっかり守るということ。「周囲との調和を乱さないことを最優先する」、あるいは「周囲のクルマとの速度や距離感を、安全圏内でできるだけ一定に保つ」ということだ。

安全というと、まずは「スピードを出さないこと」という人が多いが、確かにそれも大切な要件のひとつだ。しかし、僕は「スピードよりも周囲との調和」を大事にする。

クルマの流れが速ければ、制限速度よりも周囲の流れの速度に合わせることを優先する。

制限速度50km/hの道路でのクルマの流れが60km/hだったら、僕は60km/hで走る。100km/h制限の高速道路で120~130km/hの流れだったら、僕はそれに合わせる。
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絶対速度の遅いほうが、事故が起きた時のダメージは当然少ない。しかし、少々速くても、相対速度の差が小さければ、ドライバー同士のストレスも少なくなるし、トラブルも起きにくくなる。

高速道路の追越車線で、後続車が車間距離を詰めたり、煽り運転をするところをよく見かけるが、「危ないなぁ!」と思うし、とても不快でもある。

でも、「これじやぁ、煽られてもしょうがないよなぁ、、」と思わされることも多い。

ゆっくり走るなら走行車線を走ればいいのに、追越車線で道を塞ぐように走るクルマがけっこう少なくない。

例えば、「制限速度は100km/hだから、追越車線でも100km/hで走っていればいい。俺は規則通りの運転をしているんだ」と思い込んでいるのだろう。

確かに制限速度は100km/hだから、そんな論理も成り立つ。だが、巡航状態では走行車線を走るのが基本ルールだということが抜けている。
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追越車線を走り続けることに対する取り締まりは、ごくたまにやってはいるが、基本的にはほとんどやっていない。

走行車線と追越車線のルールはもっと周知させるべきだし、指導や取締りもやるべきだろう。そうすれば、高速道路の流れはもっと整然とするだろうし、車間詰めや煽り運転も少なくなり、事故も減るはずだ。

速いクルマには進路を譲る、、特に欧州ではかなり徹底しているし、「ルールとして」だけでなく、「マナーとして」もしっかり身に着けられている。

アウトバーンがその見本だが、走行車線では150km/h前後、追越車線では180~200km/h前後で整然と巡航している。そんな「暗黙のルール」が徹底していなければ、速度無制限など成立するはずはない。

東西の壁が撤去された時、トラバントに代表される遅いクルマが、東ドイツから大量に西ドイツのアウトバーンに流入してきた。
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多くの荷物を積み、家族を乗せたトラバントは遅い。上り勾配などでは50~60km/h辺りまでスピードは落ちる。そのうえ予期しない車線変更をしたりもする。あの時のアウトバーンは、ほんとうに怖かった。

「交通法規」というルールを守ることもむろん大事だが、周囲との調和を大切にし、周囲に思いやりの気持ちを持つことが、「上手い運転の基本中の基本」だと思ってほしい。

そのうえで、運転テクニックを身につけ磨き込んで行けば、「上手いドライバーは完成!」ということになる。

いや、、厳密に言えば、そこで終わりではない。「上手いドライバーへの道は永遠に続くもの」なのだ。例えば、高齢化で衰えてゆく身体能力や反射神経などをどうカバーしてゆくか、、といった課題は次々と出てくる。

僕のクルマのダッシュボード右端には、僕自身の思い付きで、黄色い星形のステッカーが貼ってある。これは「歩行者、自転車等に注意!」のサインだ。
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運転中、注意力が散漫になったりしたような時、この黄色い星から「おい、注意しろよ!」と警告を発してもらうためだ。

事故を未然に防いでもらった事はまだ一度もないが、暗い夜道や、横断歩道近くにいる歩行者や自転車への意識/注意力は、確実に引き上げられたように感じている。

「上手いドライバーになる」道は、免許証を返納しない限り永遠に続く。僕が免許証を返納するのは2年先か5年先か、、、まだ決めてはいない。、、が、「上手くなりたい!」という気持ちが薄れてきたら、そこで「ピリオドを打とう」とは決めている。

岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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