F1には現在、KERS(カーズ)などと称される運動エネルギー回生システムが搭載されております。ハイブリッド車を体験したかたなら回生ブレーキをご存知のはず。アクセルペダルを離した時とか、ブレーキペダルを踏んだ時に発電して、駆動用バッテリーに充電するシステムです。KERSもエネルギーを貯めておいて、ドライバーがここぞ(加速など)という時ボタンを押すと、電気モーターがトルクを上乗せするシステム。
F1技術を活かして次々とハイパーカー輩出を目論むアストンマーティン
アストンマーティンは2021年3月に、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチームとして、今シーズンからF1に本格的に参戦することを発表。20年は4位だったレーシングポイントチームを引き受けたものであります。
アストンマーティンラゴンダ(アストンマーティンを作る会社)と、レーシングポイントはオーナーが同じなので、F1サーキットで緑色のアストンマーティンF1マシンを走らせ、同時に市販スポーツカーのイメージを上げていこうというのが、新しい方針なのでしょう。
ここでとりあげたバルキリーは、F1で競争力を発揮しているレッドブルのレッドブル・アドバンストテクノロジー社と共同開発してきたモデルです。アストンマーティンは、先述のとおり、これからF1ではレッドブル・レーシングチームとライバル関係になります。でも「バルキリーの開発は九分九厘終わっています」とライヒマン氏。楽しみであります。
さらにこのあと、ライフマン氏の言葉を裏書きするかのように「F1の技術をダイレクトに反映する」とアストンマーティンラゴンダが述べる「バルハラ」が控えています。そしてその次は、フルモデルチェンジする「バンクイッシュ」。アストンマーティンの新世代はどれもミドシップになります。これも「F1から学んで反映していくことがいろいろありそうです」(ライヒマン氏)というので、世のアストンマーティンファンはお楽しみに。
ハイパーGTを標榜するニューモデルの生産を開始したマクラーレン
全長5.1メートルのボディは、リアがすっと長い独特のシェイプです。ここにはボディの一部がめくれるようなユニークな形状のエアスポイラーが仕込んであります。最高速は時速402キロ超。スペースシャトルが着陸に使っていたケープケネディの滑走路で、この驚くべき速度をマークしたのです。ドライバ−が中央に座って、あと2人がその左右に、というユニークな3人乗りレイアウト。どうです。かなり楽しそうではないですか。
街でもサーキットでも楽しめるフェラーリのスタイリッシュなハイパースポーツ
4リッターV型8気筒にフルタイム4WDシステムの組合せです。エンジンはミッドシップされて後輪を駆動。ここに1基のモーターが組み込まれていて、発進時や加速時にトルクを積み増します。同時に左右前輪にはモーターが1基ずつ。ハイブリッドパワートレインとブレーキなどを使ったトルクベクタリングとエンジン出力などは、「エレクトリックサイドスリップコントロール」で統合制御され、4輪に最適の駆動力が配分されます。
いまのフェラーリは「F8トリブート」でも体験できるように、電子制御技術をうまく使い、ドライバ−の力量のぎりぎりのところまで性能を引き出せるような設定をしています。「誰でも楽しめる」がキーコンセプトで、間口を拡げてくれているんですね。速く走るのが好きな人なら、サーキットでもいけちゃう一方、海岸線を”流す”のもシャレている。と、フェラーリの“いいところ”は時代を経ても、健在です。
魅力的なデザインとスポーツ性能を両立させたランボルギーニのワンオフモデル
770馬力の6.5リッターV型12気筒をミッドシップしていて、電子制御のセンターデファレンシャルギアを使ったフルタイム4WDシステムの組合せです。レーシング部門が手がけているだけに、スポーティな操縦性が追究されています。ひとつ例をあげると、「ランボルギーニISR(インディペンデント・シフティングロッド)」と呼ばれる7段ギアボックス。
もうひとつ、SC20の魅力はスタイリングです。ランボルギーニの社内デザインといいますが、従来の要素を使って誰が見てもランボルギーニとわからせつつ、巨大なエアスポイラーが強烈です。それでもエレガンスもあって、オーダーした超富裕層の方は、いたく満足していらっしゃるのではないでしょうか。あやかりたいものです。
10台限定、1600馬力のハイパースポーツで世界に衝撃を与えたブガッティ
お披露目は2019年夏でした。「かつてのEB110が世界に与えた衝撃を思い出してもらいたい。ただし、だからと言ってレトロスペクティブなデザインでではなく、いま、当時と同等の衝撃を受け取ってもらいたいと思ってデザインしました」と、ブガッティのデザインチームをひきいるアヒム・アンシャイト氏は語っています。
ただし残念なことがひとつあります。10台限定で作られるチェントロディエチ。ネットで予約をとったところ、あっというまに注文が埋まってしまったそうです。やはり本当の富裕層って、一般への発表以前にブガッティや投資銀行や有力な自動車屋さんから「買わない?」って打診をもらっているんですよね。そういう人になってみたいものです。
メルセデスのエンジンを積んだ究極の軽量ハイパースポーツを作ったパガーニ
カーボンファイバーとチタンを多用した軽量かつ高剛性シャシーを持ち、車重はわずか1250キロ。後輪駆動です。つまり、サーキットでも楽しめるモデルに仕上がっているはず。40台限定生産で、価格は308万5000ユーロ(日本円に換算して約3 億9488万円)。そうそう、税抜きです。
● 小川フミオ
ライフスタイルジャーナリスト。慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。