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2023.02.24

二期会創立70周年記念公演

チームラボのデジタルアートが演出するオペラ「トゥーランドット」は必見

かつてないほど画期的な演出のオペラが東京へやってきました。今週末の3日間はぜひ上野の「東京文化会館」へGO!

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文・編集/秋山 都 

オペラ、始めの一歩を踏み出すなら……

何事も“初体験”がその後を左右します。たとえば私は鰻がイマイチ苦手なんですが、それはこどものころに食べた鰻がベタベタと甘くて、あまりおいしくなかったから。最初に美味しい鰻を食べていたら、今頃は大の鰻好きだったかもしれません。同様に、歌舞伎や相撲、バレエやオペラ、ミュージカル……なんでもそうじゃないかしら。最初に「すてき!」「面白い!」と思えれば、その後の興味の持ちようが変わってきます。
チームラボ オペラ トゥーランドット
▲ 光による立体的な彫刻空間がステージ上に表れるオペラ「トゥーランドット」東京文化会館。  © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Tokyo Nikikai Opera Foundation
ということで、今回おすすめしたいのはオペラ。それも「まだオペラ観たことない」「オペラ? あんまり興味ない」「前に観たけど、退屈で寝ちゃった」などという、日本人口のおよそ8割を占めるであろう大多数の方々へ全力でリコメンドしたい、オペラ最初の一歩にふさわしい作品です。2月23日に初日を迎えるジャコモ・プッチーニ作「トゥーランドット」のゲネプロ*を拝見してきたので、そのすばらしさをLEON.JP食いしん坊担当の秋山 都が門外漢なりに解説&ご紹介します。
*ドイツ語の「通し稽古」を意味するGeneralprobe(ゲネラールプローベ)の略。衣装をつけて本番さながらの稽古を行うのでドレス・リハーサルとも呼ばれます。
チームラボ トゥーランドット
▲ 万華鏡のような美術で表現される潜在意識の世界(ジュネーブ公演より)。  Opera Turandot, at Grand Théâtre de Genève, Geneva © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery
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チームラボがデジタルアート演出した没入型オペラ

◆オペラ「トゥーランドット」がスゴイ理由

さて、まずこの「トゥーランドット」が他のオペラ公演と一線を画している最大の理由は、舞台美術や空間演出を手掛けているのがアート集団・チームラボであること。チームラボについての説明は必要でしょうか? アーティスト、プログラマー、エンジニア、CGアニメーター、建築家などさまざまな分野のスペシャリストから構成されている国際的な集団で、NYやロンドンなど世界各地でアート展を開催。東京では「チームラボボーダーレス」や「チームラボプラネッツ」などの大型ミュージアムでもおなじみかと。
チームラボ トゥーランドット
▲ レーザーの線が面になり、立体にもなり、多層的な空間を演出する。 オペラ「トゥーランドット」東京文化会館 © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Tokyo Nikikai Opera Foundation
通常のオペラであれば、その物語の舞台となる街や時代、背景を舞台美術で具体的に表現するのが主流ですが、今回の「トゥーランドット」はこれがいつ、どこの物語であるのかはまずわかりません。過去かもしれないし、未来かもしれない、いつかのどこかを舞台に物語が繰り広げられます。
チームラボ トゥーランドット
▲ 衣装やメイクアップも秀逸で、日本人が演者であることを感じさせませんでした。 Opera Turandot, at Grand Théâtre de Genève, Geneva © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery
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次に「トゥーランドット」というオペラ自体の解釈と演出がユニークであること。この「トゥーランドット」というオペラは中国の北京・紫禁城を舞台に、トゥーランドットという名の姫がなんだかんだと理由をつけて結婚を拒む物語です。求婚者には3つの謎を出し、謎を解けない人はみな殺してしまうという残酷な姫と、その難題をクリアする王子カラフが最後に愛を見つけるという筋書きなのですが、監督を務めたダニエル・クレーマー氏の演出はこの謎解きがゲームやクイズのように仕立てられていて、思わずクスリと笑わせるシーンも多数。
チームラボ トゥーランドット
▲ 皇帝陛下の衣装は神社の神主のようです。重ねて言うけど、衣装、秀逸。 オペラ「トゥーランドット」東京文化会館  © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Tokyo Nikikai Opera Foundation
なかでもトゥーランドット姫が金ピカの月を思わせるゴンドラ(?)で上から現れたときは、市川猿之助丈の宙乗りを思わせるキラキラしさにワクワクしました。求婚者にわがままを言う姫が月から現れるとはコレ、かぐや姫へのオマージュなんでしょうか?
チームラボ トゥーランドット
▲ 3人の大臣ピン、ポン、パン(ジュネーブ公演より)。 Opera Turandot, at Grand Théâtre de Genève, Geneva © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery
ほかにも狂言回しの役割も担う3人の大臣ピン、ポン、パン*は山海塾さながらに全身を白塗りにしているうえに、途中で半裸(遠目には全裸)になる熱演ぶり。ちょっとセクシーなダンスもあったりして、「こんなオペラあり?」とドキドキしました。
*有名な教育番組「ママとあそぼう! ピンポンパン」(1966 -1982、フジテレビ)はこの「トゥーランドット」から取ったんですって。知らなかった!
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そして最後はオペラ本来の見どころでもある歌が素晴らしかった。「トゥーランドット」といえば王子カラフの歌うアリア「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」が有名ですが、私的にはカラフの従者であるリューが歌うアリア「Signore, ascolta! (お聞きください、王子様)」の切なく美しい歌声が胸に迫りました。この公演は二期会創立70周年記念公演でもあり、実力のあるソリストたちが揃っています。私が拝見した日はトゥーランドット姫が田崎尚美さん、王子カラフが樋口達哉さん、リューが竹多倫子さんというキャスト。ゲネプロであったにもかかわらず、大きな拍手が寄せられていました。
チームラボ トゥーランドット
▲ ラストにはトゥーランドット姫と王子カラフが愛を見つけるというハッピーエンド。 オペラ『トゥーランドット』東京文化会館  © teamLab, Courtesy Daniel Kramer, Tokyo Nikikai Opera Foundation 
こうして原稿をまとめていても、もう一度観たいという気持ちがムラムラ湧いてくる、オペラとしては大変稀有なステージだと思います。オペラを敬遠していたそこのアナタ、ぜひ始めの一歩を踏み出してください。私も再度、観にいくつもりです。
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 トゥーランドット
ジャコモ・プッチーニ作曲オペラ

公演日/2023年2月23日 (木・祝) - 2月26日 (日)
場所/東京文化会館 大ホール (東京都台東区上野公園5-45)
チケット料金/S 22,000円、A 18,000円、B 14,000円、C 10,000円、D 6,000円、E 2,000円、学生 2,000円
*2月24日 (金) 公演は、平日マチネ特別料金=S - B席1,000円引き
チケット販売/二期会チケットセンター他プレイガイド各社

オペラ全3幕 (ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版)
作曲: ジャコモ・プッチーニ
指揮: ディエゴ・マテウス
演出: ダニエル・クレーマー
セノグラフィー、デジタル&ライトアート: チームラボ
ステージデザイン: チームラボアーキテクツ


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