2023.06.10
もはやコメ不要!? ハヤシライスと呼ぶには美味すぎる究極のハヤシ
日本を代表する老舗料亭「紀尾井町 福田家」が、なんと「至福のハヤシライス」を販売開始。なぜ最高級日本料理店がハヤシライスを!?
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文/森本 泉(LEON.JP)
このハヤシライス、今でも洋食屋には必ずあるメニューですが、なかなか謎の多い食べ物です。明治期に生まれた和製洋食で、基本は薄切り牛肉と玉ねぎをデミグラスソースで煮たものをご飯にかけるという料理。
ただ、いつ、どこで、誰が最初に作って広まったのか定かではありません。諸説あるものの、決定打に乏しい。その分、これぞ正統派! なんてイキる輩も少なく、店によってかなり自由なレシピが採用されているようです。
有名どころも、根岸の「レストラン香味屋」、浅草の「ヨシカミ」、日本橋の書店「丸善」のカフェ、銀座の「煉瓦亭」など、いくらでも挙げられるのですが、もちろん、皆、洋食屋さん。
しかし、この令和5年に、洋食屋ではなく日本料理店が作った刮目すべきハヤシライスが誕生しました。
それが「紀尾井町 福田家」の「至福のハヤシライス」。こちらの福田家さんは昭和14年に創業し、「ミシュランガイド東京」で16年連続、つまり初年度からずっと二つ星を続ける最強の日本料理店。
そこからお客様の「おうち時間」を少しでも充実させるために福田家として何かできないかと考え始め、家でも福田家の味を楽しめる商品があればと思い至ったとのこと。
店の料理は各地の生産者に支えられていますが、某生産者が送ってくれた淡路産の玉ネギがことのほか美味しく、ある日まかないで使うデミグラスソースに入れ、ハヤシライスを作ってみたら、玉ねぎの甘味と柔らかさがソースにマッチして、とても美味しく仕上がったそう。これならお客さんにも喜んでもらえるのではと、ハヤシライスの商品化に向けての試行錯誤が始まりました。
使用する牛肉は人形町の老舗精肉店「日山(ひやま)」とコラボして様々な部位を試してみた結果、良質な黒毛和牛の肩肉に決定。こうして完成したハヤシライスを冷凍とレトルトの商品として仕上げるためにさらに時間をかけ、約1年半の時を経てようやく完成したのが今回の「至福のハヤシライス」なのです。
先日、店で行われた試食会では冷凍とレトルトの2種ともいただきました。いずれも素材は同じですが、味わいはかなり違います。ゴロっと存在感のある脂少なめの肩肉は、冷凍では肉の旨味が濃く、しっかりとした味わいが残り、レトルトは食べやすくまろやかな味わいになっています。しかしどちらもインスタント食品とは思えない満足感。
あまりに完成度が高く、ご飯にかけて食べるのがもったいない! これだけでシチューのように味わっていたい。酒の肴としてワインの共はもちろん、日本酒と合わせてもいけそうです。これをハヤシと呼んでいいものか、迷ってしまうほどの可能性を秘めた逸品なのです。
有名店の名を冠したインスタント食品は数あれど、店が自ら制作、販売まで乗り出してしまうケースは稀かと。しかし福田家は、ミシュラン二つ星の味をインスタントであってもそのまま伝えたかったので妥協はできなかった。その結果、高値にはなってしまったけれど、価格こそが、店の本気の証でもあるのです。
そして本当は、このハヤシライスが店のメニューにも載れば画期的なのですが、カレーほどでないと言え、和食店でデミグラスソースの香りが漂ってはまずかろうと、現状、店での展開は考えていないそう。でも、いつかは福田家に「シメのハヤシライス」が登場すれば楽しいだろうなと夢想してしまいます。
ところで魯山人はハヤシライスを食べたのか? というのも興味深い話ですが、この日いただいた魯山人作の器に盛られたハヤシライスなら、彼もきっと美味いと満足してくれたのではないでしょうか。魂のこもった福田家のハヤシライスに注目です。
紀尾井町 福田家 至福のハヤシライス
価格/冷凍・レトルト(200g) 2700円(税込)
販売/公式オンラインショップ、全国百貨店、全国スーパーマーケット等
公式オンラインショップ/至福のハヤシライス
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