2021.05.14
男の憧れ。永瀬正敏がいつまでもカッコいい理由
90年代から映画俳優として活躍を続け、すでに100本以上に出演してきた永瀬正敏さん。先日取材させていただいて、彼のブレないカッコよさの秘密に少し触れたような気がしました。新しい主演映画『名も無い日』では弟を亡くした写真家を演じます。これがまたいい映画なんです。
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文/森本 泉(LEON.JP)
永瀬さんと言えば、我々オヤジ世代にとってはまさに憧れの存在。ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』に出演、からの『私立探偵 濱マイク』シリーズ、さらにはあのキョンキョンと電撃結婚というのも、もはや笑ってしまうぐらいカッコ良かった。当時は「anan」で好きな男ランキング1位にも選ばれてましたっけ。
テレビ全盛の90年代に、ほとんどテレビに出ることなく、それでも大人気で、その後もずっと映画俳優として活躍し、さらには写真家としても評価されるなど、常に目が離せない存在であり続けた永瀬さん。
特に印象的だったのが、こだわりの塊のよう見える永瀬さんのスタイルが、それを守ろうと周囲を固めているわけではなく、彼自身は常に開放的で、入ってくるものをすんなりと受け入れてきた結果だったという点。その間口の広さこそが人を呼び、出会いを育んで、それが今の永瀬スタイルを作っているというのはとても新鮮な驚きでした。
監督の日比遊一さんは元々長年ニューヨークを中心に活動を続けてきた写真家であり、しかも今回の映画は監督自身の身に起こった実際のストーリーがベースの作品。写真を撮るという大きな共通点をもった監督と役者はいつも以上に深く感応し合うものがあったのではないでしょうか。
永瀬さん演じる達也は長年ニューヨークで写真家をしていましたが、ある日、弟(次男)の章人(オダギリジョー)の死を末弟の隆史(金子ノブアキ)から知らされ、急遽、生まれ育った故郷(愛知県熱田市)に戻ってきます。
亡くなった章人は東大卒の優秀な技術者でしたが、心を病んで長い間引きこもりを続けていました。孤独死で発見された章人には命日もありません。それがタイトルの「名も無い日」の意味。達也はカメラを手に過去の記憶を手繰るように街を巡り、家族や親せき、昔の仲間を訪ね、人々の想いを受け止めながら、弟の死の意味と向き合っていきます……。
その絵の美しいこと。朝焼けの空が、祭りの電飾が、雨降るさびれた街並みが、なんとも哀しいぐらいに美しい。そしてまた映像を飾る岩代太郎氏の静かな音楽が心に沁みます。
しっとりしたヨーロッパ映画のような作品。映画好きの方にぜひ見ていただきたいです。
「名も無い日」
2021年6月11日全国公開
HP/https://www.namonaihi.com