ドレススタイルをヴィンテージ服で洒脱にハズす
若い頃からウエアショップで働き、大手セレクトショップ等でも経験を積んだエキスパートゆえに、服飾に関しての理解や知識は相当なレベル。阿部さん自身もクラシックスタイルのドレッサーとして知られている、れっきとした業界人です。
なかでも巧みであるのが、ヴィンテージアイテムの取り入れ方。カジュアルな若い人達ならば、ラフな古着スタイルもある程度許されるでしょう。しかしそれなりの年長者ともなれば、歳相応の品格が求められます。
それゆえに+ヴィンテージな装いは非常にハイレベルと言わざるを得ないのです。そんな阿部さんに、今回は大人らしく高感度なヴィンテージミックスのこなし方を見せていただきました。
古着シャツで個性を匂わす軽妙なオンスタイル
「今回用意したこのコーディネートは、僕の中ではネクタイを必要としないビジネススタイルです。ちょっとした商談くらいの時などは、こんな格好をすることが良くあるんです。
ネクタイの変わりに小振りなスカーフを巻いてみたり。全体的に子供っぽくならぬよう気は遣っているつもりです(笑)」
「もともとシャツとして打ち出されたアイテムだと思うのですが、生地の風合いやポケットの付き方、全体のデザインから、個人的にはアウターと捉えて使っています。カラーは落ち着いたベージュ系ですが、独特のネップ入りにより、強めの素材感を持っています。
洒落感ある一枚襟のイタリアンカラー、それに特徴的なダブルポケットなど、要素多めのところもアウター使いに適しているように思います」
「当時はヨーロッパの影響も強く、こういうイタリアンカラーのシャツが米国でも作られていたようです。半透明の2つ穴ボタンのチープな感じも、今となっては非常にユニークで気に入っているんです」
「やっぱりヴィンテージモデルは昔ながらの味わいが強いですよね。現代モノとは異なるネップの雰囲気や、エッジを浮かせた特殊な縫い方の胸ポケットなど、こういったディテールが着こなした時の個性に繋がるんだと思います。
自分が担当しているブランドのオーダー会に立ち合っていたりすると、お客さんから『どこのシャツ?』と声掛けられたりしますから」
本格ドレスパンツでスマートなシルエットを
「ジョンスメは変わらずにこの着心地を貫いているところがポイントです。他のブランドだとトレンドやディレクターの違いで、定番品目であってもディテールが変わる場合が多いもの。しかし、ジョンスメはずっと同じ。だからコーディネートした際こうなるだろうと予測が付くのでリピートしやすいんです。
もう30年くらい、お世話になっているんです。また、微妙なカラーが揃っているのも良いところ。今日着ている一枚も、一般的な赤色ではなく微妙なピンク。フツーのようでいて絶妙な個性があるんです」
「一応このコーデはビジネス対応のスタイリングなので、ドレスパンツにて仕上げています。やっぱりクラシックスタイルを仕事のひとつとしているので、そういった装いの場合は本格パンツに手が伸びますね。
デイリーパンツではやはりスマートなカッチリ感が出ませんから。クリースがしっかり入れられるパンツであることが、ある種の条件だと思っています」
「これはフィレンツェ在住の靴職人が手掛けるアキラ タニのビスポーク。やはりこういった装いにスニーカーは合わせません。クラシックなレザーシューズでないと個人的には成立しないと感じます。
この一足は寛ぎ感もある型押しスエードのエプロンフロント。フィレンツェらしい伝統的なエッジが、緩いスタイルを引き締めてくれるように感じます」
合わせ技が絶妙な阿部さんに、もうひとつオフの日を想定した+ヴィンテージなコーディネートを見せていただきました。そちらはミリタリー・ドレスとでも言うべきアクティブなルックスです。
男らしくも品格漂うミリタリー・ドレスな装い
「フィレンツェの古着屋さんにて手に入れました。タグなどから推察するに、リアルなイタリア軍ものと思われます。恐らく1970年代あたりの製品でしょう。素材はタフなポリコットン。少し古さを感じさせる化繊ミックスならではの、艶感や張り感がユニークな味わいとなっています。
エッジの立ったポケットデザインやエポレット、それに加えてやや長めの着丈など、いかにもミリタリーな仕上りがイイ感じ。ファッションアレンジのミリタリーシャツには出せないリアルな存在感があります」
そしてシンプルなTシャツを着込みつつ、やはりパンツは本格仕立てのドレスパンツをチョイスするのが阿部さん流。
カジュアルな装いを大人っぽく見せるドレスシューズの粋
トップスにヴィンテージなどギミックのあるアイテムを選んだ場合は、ボトムスは大人っぽいドレスパンツで崩しすぎになるのを防ぎます。ただし太めフィット&柄素材にてオフの気分を滲ませてみました」
合わせるシューズも当然本格ビスポークシューズ。この甘×辛バランスがくやしいほどにキマっています。
以上のようにヴィンテージアイテムを主役に据えながら、非常に大人のエレガンス溢れる洒脱なコーディネートを見せていただきました。
2つの着こなしはどちらも古着が入ることで、ドレスドレスしておらず、肩肘張らないマイルドな洒落感を放つところがポイント。ぜひ参考にしたいベテランならではのスタイリング術でした。
● 阿部 浩 (レガーレ株式会社 代表取締役)
1967年生まれ、岩手県出身。学生時代からメンズの洋服ショップで働く。ベイクルーズに入社し店舗管理、企画生産業務を経てPRやMDを担当。独立後はアタッシュドプレスとして活動。その後コンサルタント業をスタートさせ、2013年にレガーレ株式会社設立。主にクラシックを中心としたメンスファッション系コンサルタントとして20年の経験を持つ。
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