2023.01.21
目利きが推すMyベスト名品【井嶋一雄 編】
サッと合わせるだけでサマになるショットのライダーズとエルメスのスカーフ
世に名品は数あれど、長く服飾業界にてモノを吟味してきたマイスターは、一体どんな名品に惚れ込んでいるのでしょう。ポイントは素材? カタチ? それとも値段? その道を極めたからこそ見つけることができた至極のアイテムを、エピソードを踏まえつつ熱~く紹介していただきました。
- CREDIT :
写真/大森 直(TABLEROCK Inc.) 編集・文/長谷川 剛(TRS)
生粋のバイカーでありロック好きゆえのチョイス
また昨今は、MNDL(メンドリル)という自身のブランドのデザイナーとしても活躍している人物です。服をあらゆる角度から見渡してきたエキスパートならではの見識にて、大納得の名品を紹介してくれました。
機能重視の実用品からハイエンドなドレスアイテムまで、すべてを知り尽くした服魔神であるカズさん。そんな超ベテランが名品と聞いてピックアップするのは一体何でしょう? あにはからんや、ゴツくてタフで男っぽいアイツでした。
実用品でありモードにも着こなせてしかも格好イイ!
名品というのは、長年作り続けられていることがひとつの条件。自分のお爺さんの代くらいから作られてるくらいのロングセラーが理想です。
そして飽きずにずっと使い続けられる普遍性とクオリティを備えていることも大事。そういう意味で、しっかりした素材かつ縫製までキチンとしたプロダクトであることも重要です。
何より僕はずーっとバイク乗りであり、若いころにミュージシャンとしての活動もあったことから、ロックスタイルのアイコンとしてもマストなダブルライダーズは、かれこれ40年近く身近なアイテム。その長くリアルな経験からのリコメンドですから、マズ間違いありません(笑)。
カズ もちろん究極的にはバンソンでも良いかもしれません。ただ、個人的には重くてハードな革ジャンはもうキツい。若いころならまだしも、僕ももう結構トシなので(笑)。それに、ご存知のとおり英国にもライダーズの傑作は数々ありますが、自分にはちょっと硬かったり着丈が長かったりする場合が多かった。
ソコへいくとショットはある程度しなやかな着心地で着丈も短く動きやすくシャープな印象。確かサンローランなどのライダーズも、どちらかと言うと着丈は短め。それが定番的なロックスタイルなんだと思っています。
── これまでにも多くのライダーズブルゾンを経験してきた革ジャンマスターのカズ師匠。昨今はその名品をどのように着こなしているのでしょうか。
そして、なにより着ることで安心を感じます。生粋のバイクウエアですから防寒性が高くプロテクション機能も抜群。そんな心から信頼できるアウターは中々ないですから。また、革製ゆえに着込むほどに身体に馴染んでいきます。この辺の感覚は革のドレスシューズと似ています。年々じっくり自分のモノになっていくところも、名品と呼ぶに相応しいポイントだと思っています。
一発で装いが華やかにランクアップする
── 確かに華麗を極めた押しも押されもせぬ名品です。しかし、誰もが気軽に使えない、一種近寄り難い存在感もあるのですが……。
少しツヤが落ちて白っちゃけた風合いになると、日常着にも絶妙に馴染むようになるんです。エルメスのスカーフは、シルクの質も縫製も抜群ですから、家庭で洗ってもまったく問題ないと思っています。また僕は普段、黒色のウエアを多く着用するので黒ベースやモノトーンのスカーフを多く愛用しています。
エレガントな花柄系はレディス風味が強いので、馬具やブーツなどの力強い図案を選んでいます。ですが、結局巻いてしまえば絵柄は判別不能(笑)。それゆえ着る服のカラーに合わせてチョイスするのが正解だと思います。
── そう言ってスカーフの使い方を実践してくれたカズ師匠。先ほどのレザーライダーズも、エルメスのスカーフを噛ませるだけで、ちょっと小綺麗な雰囲気になるとのこと。
自分の好きに巻くだけでお洒落な印象に仕上ります
── 大小さまざまなサイズのシルクスカーフを所有しているというカズさん。なかでも便利なのが大判だと教えてくれました。
── なるほど、天衣無縫というか、本当にお洒落を自分らしく自由自在に楽しんでいるカズ師匠。しかしシルクスカーフはエルメス以外にも数多くリリースされています。それについてはどう捉えているのでしょう。
シルクスカーフを巻くということは、華やかな気分を求めているということ。そんなシーンに今、自分は最高の一枚を巻いてるんだという高揚感は、他のブランドではなかなか得られません。ソレも含めてエルメスのスカーフは名品と言える一枚だと思っています。
● 井嶋一雄 (スタイリスト、デザイナー)
スタイリスト事務所「バランス」所属。メンズファッションを中心に雑誌や広告、テレビやCMなどでスタイリングを担当。自身のルーツともなる音楽や様々なカルチャーをベースに作りだされるコーディネートは、大胆かつ繊細。先シーズンから自らのウエアブランド「MNDL(メンドリル)」を本格化。デザイナーとしても活躍する。