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2024.07.11

珍品!? 熱帯地域用に開発されたUS NAVYのフライトジャケットM421A

常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。

CREDIT :

文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)

世界を舞台に活躍するDJ田中知之(FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。

■ US NAVYのサマーフライトジャケットM421A

今回紹介するのは、1940年初頭にアメリカ海軍の航空部隊で採用された夏用のフライトジャケット M421A。私は2010年頃にロサンゼルスで購入したように記憶する。例えばMA-1やA-2など冬用のフライトジャケットと比べても極端に球数が少なく、たまに古着屋で見かけても随分とくたびれたり縮んでしまった個体が多い印象だが、右胸に砲弾を抱いた半人半獣の悪魔がコミカルに刺繍されたパッチが付属するこの一着は、水を通った形跡もなくきれいだった。

【Front Side】

US NAVY  SUMMERフライトジャケット M421A
PAGE 2
ちょうどその数年前の2005年にヴィンテージ服飾研究家の青田充弘氏が『FULL GEAR(COLLECTOR'S GUIDE ON US MILITARY FLYING CLOTHING FROM 1920'S THRU 1970'S)』と題したハードカバー168ページのアメリカの空の軍隊に特化したミリタリーウエアをデータベース化した恐ろしくニッチな本を自費出版されていた。定価は2万円と高価だったが、この夏用フライトジャケットのことも調べてみたくなり、帰国後に即入手して、早速M421Aのページを開いてみた。

【Back Side】

US NAVY  SUMMERフライトジャケット M421A
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主に輸送機・偵察機などの搭乗員に支給されたらしく、夏季の熱帯地域での使用を目的として開発されたようで、素材はコットンツイル。POPULAR MFG.COにより製造された420Aというコントラクト番号をもつこの個体は、1943年に納入されたとある。着丈は少し短めだが、軍物感は希薄で、まるでスイングトップの様に普通に街で着用しても違和感がない。
US NAVY  SUMMERフライトジャケット M421A

M421Aの名で2種類の型が存在しており、内ポケットが付くのが本タイプver.1。ver.2からは内ポケットの代わりにパッチポケットが左胸にも付いて3つになる。

とはいえ、脇に設けられた腕の上げ下ろしを容易にするための奇妙な形状のマチや、袖にダイヤ形に当てられた補強布、背中のアクションプリーツとマルタンガル、付属する内ポケットやそこに入ったUSNのステンシルなど、気になるディテールも実は満載だったりもするのだ。

今回この原稿を書くために『FULL GEAR』を書棚から久しぶりに引っ張り出し、改めてパラパラめくっていたのだが、その緻密な研究や考察、資料の集積に改めて感動した。まさに古着研究は学問だよなぁと納得。

はたしてまだこの本を入手できるのか気になって調べてみたら、もうとっくの昔に絶版で、それどころか中古本市場で定価の6倍から10倍くらいのプレ値が付いているではないか! もはやこのフライトジャケットよりもいつの間にか高価になってしまっていたってことになるのかも。なんとも皮肉な話である。
田中知之(FPM)

田中知之(FPM)

1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com

2024年7月号より

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