2024.10.14
チラリズムはすべてのオトコの必修科目!? そのヤリクチを伝授
チラリズムとは、チラ見えの一瞬の隙を与えることによって誘惑する技法のこと。服飾史家の中野香織さんにチラリズムの効果について語っていただきました。
- CREDIT :
写真/川田有二 スタイリング/四方章敬 ヘアメイク/yoboon 文/中野香織 編集/堀川正毅、加藤寛太(ともにLEON) 撮影協力/メルキュール東京日比谷
Text by 中野香織(服飾史家・作家)
チラリズム、それは色気と遊び心の奇襲作戦です
チラリズム功者として忘れがたい人の例を挙げましょう。香りの出版社という革新的なコンセプトを掲げる「フレデリック マル」を創業したフレデリック・マルです。
数年前の来日時にお目にかかる機会があったのですが、父のクローゼットから受け継いだというアンダーソン&シェパード製の渋いスーツをネイビーのタイで着こなす生粋のパリの紳士です。
ある老舗バーのバーテンダーも「引き」の攻撃力に秀でる手練れです。開店10分くらい前に訪れてしまったことがあります。バーテンダーは急いで上着を着用しながらドアを開けてくれたのですが、上着で隠そうとしたものが一瞬、チラ見えてしまいました。サスペンダー(イギリス英語でブレイシーズ)が!
アメリカかぶれの旧型エリートは派手なサスペンダー姿になって部下に指示を出したりしますが、元来の英国紳士のマナーとしては下着に近い扱いなので人さまには見せないもの。下着とわきまえるゆえに隠そうとする恥じらいまでもチラ見えし、トクした気分にさせていただいたのでした。
カフリンクスやサスペンダーもそうですが、思えば着用アイテム数が多く、小物もあれこれ搭載できるメンズスタイルというのは、チラリズムを磨くための宝庫ですね。
足元からチラ見せさせる意外性のあるソックスは定番中の定番で、カナダ首相ジャスティン・トルドーの初期の人気を爆上げしたのはまさにコレ、カナダ国旗柄やスターウォーズ柄のソックスでした。
5ミリ見えるかどうかのポケットスクエアも意外にインパクトありますし、書類を見る瞬間だけ掛ける黒縁メガネの絶大な威力ときたら。
電話をかけると見える携帯ケースや足を組みなおす瞬間に現れる靴裏など知識と工夫でいくらでもチラ・バリエーションが増やせます。
技法はそれこそリミットがありませんが、意図的なのだけど意図がチラ見えすることだけは避けたいものです。あくまでも無自覚に見えてしまったというさり気なさや無防備感を演出することが肝要です。
チラ見え誘惑術は人生を楽しくする大人のアート。万一、意図がチラ見えしたとしても、その努力がカワイイと思われれば勝ちね。
※価格はすべて税込み価格です
● 中野香織(なかの・かおり)
服飾史家であり、作家。ダンディズム史、ファッション史、ラグジュアリービジネスなどを研究。著述、講演、コンサルティングを中心に活動中。女性ならではの感性と、圧倒的な知識量をも持ち合わせた、唯一無二の存在。
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