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2022.03.27

【第4回】「らぁめん小池」(上北沢)

崇高なほど、簡潔な煮干しラーメン! 「らぁめん小池」

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

▲ 今回取り上げる「らぁめん小池」の「煮干しラーメン」。写真は味玉子付き。
先日、青木 健著「教養としてのラーメン」が出版された。著者はデザイナー、イラストレーター、漫画家で、ラーメン店のロゴデザインをいくつも担当するうちに、ラーメンに魅かれていったという。

500年以上にわたる日本ラーメン年表(!?)をつけて、「ラーメン」の進化から多岐にわたるジャンル、名店の系譜などの麺論を展開している労作、名作である。
なかでラーメンの定義は「定型がなく、常に新しく生まれ変わる麺料理」としているのは卓見といわなくてはならない。

なるほど「そば」はそば、「うどん」はうどんを指すが、「ラーメン」は麺を規定、限定しない。極論をいえば、イタリア料理のパスタを使っても「ラーメン」になりうる。なんという自由な世界!

その著者が「煮干」のラーメンを次のように定義する。

カタクチイワシやアジなど、煮干は古くからラーメンに使われていた出汁素材ではあるが、現在は煮干そのものの風味が強く主張しているので、「煮干ラーメン」とカテゴリー化される。面白いのは同じく煮干を謳いながらさまざまなバリエーションが存在すること。煮干だけを水出ししたやさしいスープもあれば、豚骨など動物食材とともに大量の煮干を煮込んだ超濃厚なタイプもある。後者はその色と濃度から「セメント系」と呼ばれたりも。(中略)使用される煮干の種類も、マイワシ、ウルメイワシ、カマス、サンマ、イカ、レンコダイ、アゴ(飛魚の焼干)までバラエティに富む。
青木 健著「教養としてのラーメン ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス── 50の麺論」より
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「らぁめん小池」の煮干しラーメンは「玉ねぎ」と「チャーシュー」に注目!

▲ 「らぁめん小池」の煮干しらぁめん(850円)。
 東京・上北沢「らぁめん小池」の「煮干しラーメン」850円は、何の煮干しを使っているのだろう。はじめに一口スープをいただいたとき、煮干しの風味が漂うのだが、二口三口と進むうちには、「煮干し」がどこかに溶け込んでいってしまう。ラーメンの丼には、煮干し風味のスープに細いストレート麺、中央にはスライスされピンク色したチャーシューがふうわりまとめられ、山椒風味の鶏肉団子、さらに青菜のほうれん草と刻んだたまねぎが添えてある。
食べ込むうちにスープがとてもいい具合に馴染んでくるのだが、添えられた「玉ねぎのみじん切り」がポイントではなかろうかと思えてくる。大森の「麦苗」で店主に薦められるままに食べた「いりこ」のラーメンにも、そういえば「玉ねぎのみじん切り」が添えてあったことを思い出した。「煮干し」と「玉ねぎ」の相性の良さの根拠は、私にはわからない。気がつけば、常連の海苔とメンマは添えられていない。何か崇高な気がするほど、簡潔なラーメンである。
▲大森 「Homemade Ramen 麦苗」の「いりこらあ」。
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もう一つの魅力が、チャーシュー。カウンター上の箸箱には「当店のチャーシューは【真空低温調理】という技法で仕上げています。赤みがかっていますが、しっかりと熱処理してあります。安心してお召し上がりください。チャーシューにスープの熱を加えすぎてしまうと、しっとりとした食感が失われてしまいます。お早めに1枚召し上がってみてください。熱を加えたくないお客様にはラーメンの上に盛らず、別皿で提供する事も出来ます。お気軽にお申し付けください」とある。このチャーシューへのリスペクトが素晴らしい。
▲ 山椒香るラーメン(850円)。
再び「らぁめん小池」に足を運び、「山椒香るラーメン」850円を食券機から選んで食べると、こんどは「煮干し」スープと木の芽の刻んだ葉が見事に合体し、後味の爽やかさは格別だった。「煮干しラーメン」といい、「山椒香るラーメン」といい、どちらも傑作と呼んでいいのではなかろうか。
▲ ニボ台湾ラーメン(880円)。
後日、「ニボ台湾ラーメン」880円を選んでみた。「ニボ」は煮干しのこと、券売機には「鶏パイタン×煮干しのスープに豚挽肉とラー油、ニラ・にんんく‼」のこってり派とある。「煮干しラーメン」が究極の引き算とすると、「ニボ台湾ラーメン」880円は足し算のラーメンである。
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※次回は4月10日予定です。

らぁめん 小池

住所/東京都世田谷区上北沢4-19-18 上北沢ハイネスコーポ1F
営業時間/平日 11:00〜14:30/18:00〜21:00  土・日・祝 11:00〜15:00/18:00〜21:00 ※まんえん防止期間中は20:00閉店
定休日/不定休
Facebook/(20+) らぁめん小池
Twitter/(4) らぁめん小池さん (@tsukemenkoike)

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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