2019.06.28
古酒は小さなグラスにちょびちょびと注ぐべし。
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
- CREDIT :
文/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
さて、前回に引続きワイン会の掟〜マナー編です。前回は会話のマナー中心でしたが、今回はそれ以外の部分でスマートに見せるポイントを見ていきましょう。
ワイピポイント大幅アップのチャンスですよ。
ワイン会の掟 ~ その3マナー編 (その他)
行き慣れたレストランやワインバーならば勝手が判りますが、初めてのお店の場合はそうもいきません。前もって問い合わせるか、幹事に聞きましょう。手慣れた幹事さんだと「グラスは一人○脚しかない」とか、「お店の了解を取ってあるので希望者は自前のグラス持参可」とかの注意喚起があるはずです。
ワイン会の掟~準備編でも触れましたが、古酒(ヴィンテージの比較的古いワイン)を持っていく場合には注意が必要です。特に古い赤ワインは動かすと澱が舞ってしまい、もとに戻るまでに日数がかかる(最低2、3日から1週間程度)ので事前持込み(最低でも1週間前)は必須。セラーに立てた状態での保管を依頼しましょう。
これが無理なお店には古酒を持込まない選択が無難ですが、誕生日絡みのワイン会だとバースデーヴィンテージを開けるニーズもあるでしょうから悩ましいですね。また、古酒の場合は若いワインに比べると劣化のリスクが高くなります。可能であれば予備のワインを用意しておきましょう。
また、古酒を楽しむにはワインが開くスピードを遅くするのがおすすめなので、古酒=貴重なワイン=大ぶりの高級グラスとの先入観にとらわれることなく、小ぶりのグラスを使用しましょう。その夜のワイン会のトリを飾るべく持ち込まれた古酒用にと、お店のソムリエが気を遣って、金魚鉢のようにボウル部分の大きいブルゴーニュグラスを用意しようとしているところに、さり気なく「せっかくですが、テイスティンググラスに近い小ぶりのグラスでいいですよ?」と言えるあなたは、相当な上級ワイピとして注目されること間違いなしです。
ボトルの上部と下部でワインの濃さが違うことも多いので、全員分のグラスを一列に並べて一往復半もしくは二往復くらいで注ぎきるように、少量ずつサービスするのが理想です。ひとり分を一気にグラスに注いでしまうと、最初と中ほどと最後でまったく別のワインになってしまいますのでご注意ください。
あと、自前でサービスする方式のワイン会の場合であっても、女性の参加者には男性がサービスしてあげげましょう。ワインに関する格式ばったしきたりは次第に無くなりつつあるとは言え、欧米では女性がワインを注ぐのは依然お行儀が良くないと考えられているようです。
日本人の「注ぎ合い」「差しつ差されつ」の慣習からは違和感を感じるかもしれませんが。酒量の少ない女性に注ぐ際には量を少なめにするかどうかを訊ねるなどの配慮もしてあげるとよいですね。
いかがですか。前回、今回と2回にわたりワイン会の掟〜マナー編をお送りしました。これを身につければどんなワイン会も怖いものなしの無敵ワイピになれるかも。
連載Vol.02 「モテるのは片手にワイングラス8脚をモテる男」
連載Vol.03 「一目置かれるワイン会の掟、お教えします」
連載Vol.04 「ワインのカジュアル・フォーマルはここで決まる!」
連載Vol.05 「ダジャレで選ぶワイン、ありやなしや」
連載Vol.06 「ワインを愛するならまず『ワインセラー』を買いなさい」
連載Vol.07 「人のワインを笑うな、けなすな、値段を聞くな」
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。