「情報交換したり、気の合う仲間とつながるコミュニティが作りたかった」
「2020年以降はコロナでイベントをやること自体が難しくなってしまって。2019年もイベント前日に台風が来て、中止にするかすごく悩んだんですが、参加してくれたお店の後押しがあって、無事に開催することができました。ありがたいことに年々、参加店が増えて最初は5店舗くらいだったのが、50店舗以上になった。トリタツは利益追及をする集まりではなく、あくまで焼鳥の素晴らしさをみんなでシェアすることが目的なのですが、お客さんがたくさん来てくださることで、焼鳥がどれだけ愛されていて注目を集めているかを体感できたのはうれしかったです」
成熟期を迎えた焼き鳥界でいま注目されるのは?
「僕らはただ、焼鳥文化の発展を願うファンで、すごいのは日々切磋琢磨されている職人の皆さんです。大衆のソウルフードとして愛されて来た日本の焼鳥は、焼鳥の地位向上を目指して試行錯誤をしてきた店や職人の努力のおかげで、今の成熟期を迎えています。そのなかで次の世代を育てて、さらに日本の焼鳥を盛り上げていこうという考えを持つ店や人にはシンパシーを感じますね。
最近オープンした店だと、銀座の『焼鳥ひら野』*³を運営するMUGENグループ。代表の内山正宏さんは、自身のグループとして初の焼き鳥業態を始めるにあたって若手を育成する店を作りたいとおっしゃっていました。それで『鳥善 瀬尾』で18年働いた大ベテランの平野郁侍さんを迎えて、おまかせコース8800円の店を作った。平野さんの技術の高さは言わずもがななので、彼の背中を見ながら若い職人が育つといいなと思っています。
焼鳥の仕事は一朝一夕ではなし得ない、スーパーど根性の世界。仕込みも大変だし、なり手は多くないけれど、池川さんが海外進出をしたり、いまの焼鳥業界はすごく夢があります。次世代の職人の存在は、焼鳥という食文化がさらに発展するために不可欠なんです」
「それぞれにやり方や哲学があるから、それが店の個性につながっているんだと思うんですけれど、ここ(「中村屋」)も面白いですよ(笑)。自分の店と相性のいいお客さんに来て欲しいという思いもあって、紹介制というスタイルで営業しています。予約客の人数に合わせて、開店してから鶏をさばいて串に打って焼く異色の店です。お店もカウンター6席だけでワンオペだから、行く時は中村くんに時間も心も委ねる気持ちで。以前、酒瓶と一緒に寝ていると話していたくらいの焼酎の変態で、ざっかけない雰囲気の店から想像できないくらい個性のかたまり(笑)。焼鳥にもお酒にも、自分流で徹底して向き合うという愛の深さを感じます」
「焼鳥店が町に人を呼べることを証明したのが、梅ヶ丘の『やきとりshira』*⁴。ここは最初におまかせ5本を注文して、追加で串をお願いするスタイル。初めて行ったときの衝撃がすさまじく、僕も何度も通わせてもらっています。メインであつかう淡海地鶏と天城軍鶏の焼きが本当に見事で、評判を聞いて地元以外からもたくさんのお客さんや同業者が来る。Shiraに行くために初めて小田急線に乗りました、という人も少なくないそうです(笑)。そういうふうに求心力のあるお店は町を盛り上げる起爆剤になりますし、今後は都心よりちょっと離れたところに店を構える人も増えていくと思います」
▲ おまかせは5本(1100円~)。追加オーダーも可能。この日はささみからスタート。中心までしっかりと火を入れながら、ふっくらジューシ-
に仕上げる。▲ レバー。しっかりとほおばれるポーションの大きさにも感動。とろりとしたレバーの甘み、タレの香ばしさには芋焼酎のロックが合う!
▲ 丸ハツ。頬張った瞬間にハツの豊かな旨味が口中に一気に広がる。ポーションが大きめだからこそ、部位の味わいもいっそう際立つ。
▲ 手羽。串打ちにも独自の工夫が。手羽先と手羽中をひとつの串に打つことで脂ノリの異なる部位を同時に楽しませる。
▲ かしわ。「思わず頬が緩む美味しさ」と青木さんも絶賛。霧島鶏の弾力や脂の旨味を最大限に引き出している。
▲ おまかせは5本(1100円~)。追加オーダーも可能。この日はささみからスタート。中心までしっかりと火を入れながら、ふっくらジューシ-
に仕上げる。▲ レバー。しっかりとほおばれるポーションの大きさにも感動。とろりとしたレバーの甘み、タレの香ばしさには芋焼酎のロックが合う!
▲ 丸ハツ。頬張った瞬間にハツの豊かな旨味が口中に一気に広がる。ポーションが大きめだからこそ、部位の味わいもいっそう際立つ。
▲ 手羽。串打ちにも独自の工夫が。手羽先と手羽中をひとつの串に打つことで脂ノリの異なる部位を同時に楽しませる。
▲ かしわ。「思わず頬が緩む美味しさ」と青木さんも絶賛。霧島鶏の弾力や脂の旨味を最大限に引き出している。
「もちろん、それも大切だけれど、自分の焼きのスタイルや目指す方向に合った鶏をいかに見つけるかだと思います。ブロイラーをめちゃくちゃ旨く焼ける職人がいたらそれは素晴らしいし、そこに理由があるなら熱源が炭であることにこだわる必要はないと僕は思います。外苑前の『いろ鳥』*⁵の張ヶ谷栄司さんは、炭火と電気グリラーを使い分けていて、部位によって仕上げに炭の香りをまとわせたり、熱源の使いかたをすごく研究している。その“ハイブリッド焼き”に、長年焼鳥と向き合ってきた職人ならではの経験値の高さを感じます。
最近は関西の人気店が東京に進出するという流れもあって、焼鳥の輪がどんどん広がり、いいグルーヴ感が生まれている。SUSHIやTEMPURA、RAMENと並んで世界共通の食文化としてYAKITORIがさらに飛躍することを願っていますし、そのタイミングはまさに今だと思っています。今年の秋にはコロナで延期になっていた『焼鳥達人の会ファイナル』を東京と大阪で開催する予定。そこであらためて、焼鳥を愛する多くのひとたちが集えることを、すごく楽しみにしています」
炭火串焼き 中村屋
住所/東京都目黒区鷹番3-15-18
電話/非公開
営業時間/17:00~23:00
休/不定休
※支払いは現金のみ
●焼鳥と焼酎をこよなく愛する店主が営む紹介制の焼鳥店。丸鶏からさばくので焼き上がりまでに時間がかかることもあるが、お酒を飲みながらゆっくりと待つのも楽しい。焼酎のほかクラフトビールやワインも。
青木照和
1959年横浜生まれ。レコード会社勤務を経て、1995年に音楽全般の企画制作を行う「アハバ クリエィティヴパーティー」を設立。前職時代から焼鳥を食べ歩き、現在も週3日で焼鳥店へ足を運ぶ。「焼鳥達人の会」会長として、イベント企画や企業とのコラボレーションを推進。