2022.08.14
【第13回】「らーめん天神下 大喜」(仲御徒町)
身体の中を涼風が吹き抜ける、格別の「冷やし鶏そば」
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
- CREDIT :
文・写真/山本益博
夏場に入って、「冷たいラーメン」を色々食べ歩いたところで出会った逸品で、「鶏そば」で売る「らーめん天神下 大喜」ならではの「冷麺」である。涼しげなガラスの器に盛られているのは、目いっぱいのスープに細打ちの平たい麺。具は、味を含ませたナス、それにオクラ、なめこ、トマト、半熟たまご、鶏チャーシュー、さらに白ごま、レモンと盛りだくさん。上には、技ありの胡瓜と大根の繊切りがたっぷりふうわりと盛られている。
なんといってもすばらしいのが、とろみがついたスープで、鶏からスープをとった時に出るゼラチンを巧みに生かしていることである。
山形名物の鶏そばは、ほとんどがそばつゆまで甘かったが
温かい「鶏そば」ばかりか冷たい「鶏そば」でも、そばつゆが甘ったるい。それが、米沢の「たきなみ」で食べた時、そばつゆと甘辛くない鶏肉が見事にマッチして、本領発揮の「鶏そば」に出合うことができた。
ご主人の好奇心と探求心と遊び心が生んだ傑作冷やし鶏そば
20名の店主が著者に「ラーメン」に対する心の内を開いて、素敵な言葉で「ラーメン」を語っている。
料理人歴は板前時代から数えて35年を超える。けれども今なお自分の引き出しを増やすため、新しいメニューの開発に余念がない。
「考えるのが好きだっていうのもありますよ。蕎麦でもイタリアンでも食べに行くとね、これを何とかラーメンに落とし込めないかなって思うんです」
「基本はうちのスープがあって、そこに何を組み合わせたらどんな化学反応が起こるのか。夏に一度作って面白かったのは、自分で仕込んだシメサバと明太子を合わせた冷やしメニューですね。これが意外に旨かった。引き出しを増やすなんて言うとかっこいいけど、お遊びみたいな側面もあるのかな。常連さんはそれも分かって限定を食べてくださる。それは一つの、なんというかな、愛情なんだと思います。大喜というお店に対するね」
食べ進むと味わいは渾然一体、食べ終わると、身体の中を涼風が吹き抜ける。武川さんの限りない「らーめん愛」から誕生した「冷やし鶏そば」、傑作である!
らーめん天神下 大喜
住所/東京都台東区台東 2-4-4
営業時間/月火木金11:00~14:30、18:00~21:00(L.O.)、水曜は昼のみ。土曜11:00~15:00、18:00~20:30(L.O.) 祝日11:00~15:00(L.O.)
定休日/日曜
TEL/03-3834-0348
Twitter/https://twitter.com/DK_TAKE
● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique
山本益博さんがYouTubeを始めました!
日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!
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