話題の新店「PRIMO PASSO」で再燃したパスタへの渇望

突然ですが、アナタがいちばん最初に食べたイタリア料理はどんなもの？ もしアナタがミレニアル世代なら、ご両親はイタメシブーム*のなかで青春を迎えていたでしょうし、離乳食がパスタだった、なんて方もいるかも。

私はと言えば、地元の駅前にあった「ジロー」*が最初かな。高校生のころは渋谷の「カプリチョーザ」、大学生になってからは年上のボーイフレンドに連れていってもらった「バスタパスタ」（山田宏巳シェフを輩出しました）や、片岡 護シェフの「アルポルト」、日高良実シェフの「アクアパッツァ」……あのころの日本のイタリアンはゲキアツでした。

「ぼくの場合は……たらこスパゲッティかな。それもレトルトの」と笑うのは藤岡智之シェフ。1992年生まれのミレニアル世代なのに、意外なお返事です。

「ぼくは金沢出身なんですが、両親が寿司屋を営んでいたんです。なので、なかなか外食できる環境ではなかったし、イタリアン料理もまったく身近ではありませんでした」

そんな藤岡智之少年が長じてイタリア料理のシェフを志し、ナポリまで修業に出かけるとは……運命って面白いですね。

ナポリのミシュラン２つ星の名店「Quattro Passi」*などで修業を経て帰国した藤岡シェフ、修業先への敬意を込めて自らの店に「PRIMO PASSO」（はじめの一歩）と命名しました。土壁と一枚板のカウンターが潔い、カウンタースタイルのリストランテです。

この「PRIMO PASSO」の最もユニークなポイントはパスタなど炭水化物が多めであること。たとえばある日のおまかせメニュー12品の内、パスタが4種とリゾットが１種。アミューズで出てくる揚げピッツァとデザートで出てくるボンボローネまで入れると、半分以上が炭水化物でした。日頃、糖質制限している身には、この禁断の味がホント震えるほど美味しくて。でも、安心してください。一皿30～40gと軽いので、全体量としてはセーフティゾーンかと。

このパスタ多めのメニュー構成について藤岡シェフは語ります。

「ナポリの店でパスタ場を担当していたこともあり、改めてパスタが多彩であることに驚きました。ショート、ロング、手打ち、乾麺はもちろん、トルテッロなど詰め物をするパスタもあるし、ソースや具材との組み合わせを考えれば、可能性は無限にあります。この楽しさを味わっていただきたくて、あえてパスタを主役にコースを組み立てています」

ではここからは、「PRIMO PASSO」のある日のメニューをご覧に入れましょう。糖質制限中の方は閲覧注意かもしれません（笑）。

コース後半には「カプチーノ」と書いてあったので、コーヒーが来るのかと思いきや、それまでパスタでした。

フォームミルクの下にはアサリ出汁の手打ちタリオリーニが！ 20gから80gくらいのレンジでお好きな量で作ってくれるので、ここでお腹の調整をしてください。ちなみに私が訪問した際はカウンター8名中、5名が普通盛（40gほど）、残り3名が大盛（60gほど）をオーダーしていました。ツワモノ揃いでした……。

そうそう、パスタ以外のお料理も少しはご紹介しておかねば。「カプチーノ」の前、メイン料理として登場するのは、サシが入りすぎない十勝ハーブ牛のサーロインステーキです。複数のハーブをブレンドした北海道産の稲わらをたっぷり食べて育った十勝ハーブ牛は、肉本来の旨味と香り、ほど良いコクが特徴。やっぱりお肉を食べるとお腹が落ち着く気がします。

藤岡シェフのパスタ主体のコースをいただき、感じたのはこどもの頃や、そして糖質制限など必要のなかった若い頃に食べていたイタリアンの楽しさです。私的な経験から言えば、「ジロー」のペスカトーレや「カプリチョーザ」の気まぐれパスタに始まり、片岡シェフの、日高シェフの、山田シェフの……イタリア料理の美味しさはやはりパスタにこそあるんじゃないでしょうか。「私、こんなにもパスタを食べたかったんだ」と、根源的な欲望とイタリア料理本来の楽しさに気づかせてくれる「PRIMO PASSO」です。

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