2025.01.28
鈴木啓太(43)「人間は腸が一番大事。バナナみたいなうんちが理想です」
女子ウケ抜群の清潔感が失われていくオヤジ世代こそ、美容や健康に取り組むことで、同世代を出し抜けるはず! そこで美容オヤジたちのその魅力に迫る特集です。今回は、元サッカー日本代表で現在は実業家として活躍する鈴木啓太さん(43歳)にインタビュー。
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写真/トヨダリョウ 文/大塚綾子 編集/菊地奈緒(Web LEON)
腸活は、健康で長生きな充実した人生の助けになる!
● 鈴木啓太(すずき・けいた)
1981年生まれ。静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。サッカーの強豪・東海大翔洋高校卒業後、2000年に浦和レッズに入団。2009年より3年間キャプテンを務め、2015年の引退まで浦和レッズ一筋。日本代表としては、2006年に代表に選出され、オシムジャパンとして唯一全試合先発出場を果たす。現役引退後は実業家に転身し、AuB(オーブ)株式会社を設立。「すべての人をベストコンディションに」というミッションを掲げ、ヘルスケアやフードテック事業を展開中。
鈴木 7、8歳の頃から、調理師の母に「啓ちゃん、人間は腸が一番大事よ。毎日うんちを観察しなさい。バナナみたいなうんちをしなさい」と言われてきたんです。当時はまだ腸活という言葉はありませんでしたが、便は「便り」と書くように、文字通り自分の体からの便りなんです。形も色もさまざまで体調や食べた物によって日々変わるので、一番体の内部の状況がわかりやすいんですよね。
── 便の観察以外にどんな腸活をしていましたか?
鈴木 子供の頃からおやつとしてぬか漬けや納豆、梅干し、海苔などを食べていました。お菓子ももちろん好きでしたが、それ以上に祖母が漬けたぬか漬けが大好きで、冷蔵庫に入っていると全部食べちゃって怒られていたくらい。ぬか漬けや納豆は発酵食品で菌の宝庫だし、海苔は菌の働きを助ける水溶性食物繊維なので、まさに腸活だったんです。
鈴木 僕の場合は、体質的に体に熱を入れるのが合っているので、選手時代からコンディショニングの一環としてお腹にお灸をして温めたり、バスソルトを入れて足湯をしたりして体を温めていました。冷えは体によくないし、免疫力も下がります。
夜は必ず湯船に浸かるんですが、お湯の温度は39.5℃に設定。熱すぎると汗をかいて逆に体を冷やしてしまうし、ゆっくりと湯船に浸かっていられないので、体温よりも少し高くて汗が出にくい39.5℃が、僕にとってはベストなんです。
いいパフォーマンスをするためには、日々の体調管理やケアの積み重ねがものすごく大事なんです。いいコンディションでいいトレーニングをして、適度に疲労をする。そこから回復することで徐々に体が強くなっていく。その連続なんですよね。
アスリートと同じトレーニングは無理でもインナーケアは提供できると「AuB」を起業
鈴木 まずビジネス的な観点で言えば、日本は先進国の中でも高齢化社会が急速に進んでいる課題先進国だと思うんです。圧倒的な少子高齢化が進んでいるので、これからの成長産業は、間違いなくヘルスケアの領域だろうと考えました。
もう1つの理由が、これまで応援してくれたファンやサポーター、地域の方々への還元です。自分がプロのアスリートとして活動を続けられたのは、サポーターのおかげ。1993年のJリーグ開幕当時に30代だった方が今では孫を連れて来てくれたり、スタジアムでも世代交代が進んでいます。僕の周りでも「60歳を過ぎて、スタジアムに行くのが大変」という声が上がったり。
鈴木 500名のアスリートから1000検体を超える便を集めて、腸内細菌を調べました。その結果特徴的だったのが、一般の人と比べてアスリートの腸内細菌は非常に多様性があるということ。そして、酪酸菌の保有率が高い。酪酸菌は今とても注目されている菌で、 腸内で最も多いビフィズス菌と同等かそれ以上に大事だと考えられているんです。
── 自分で便をチェックする方法を教えてもらえますか?
鈴木 便の色や硬さを7段階で分類した「ブリストルスケール」を参照するとわかりやすいです。理想とされるのがバナナのような形で、黄褐色の便。便の色は酸性になるほど黄色く、アルカリ性になると黒くなっていくんですよ。
ところで、便は何でできていると思いますか?
── 消化できなかった食べ物のカス……!?
鈴木 それが実は食べ物のカスは5%ほどで、一番多いのは水分で60%、残りの35%が100兆個以上の腸内細菌の死骸と剥がれた腸壁なんです。便の頻度や量は、菌の量や種類はもちろん、消化管のぜん動運動や水分量、水溶性食物繊維がちゃんと摂れているかなどが関係しています。
食べすぎた翌朝こそ早起きして走る! 寝ているよりも活動したほうが楽なんです
鈴木 基本的にはバランスですね。選手時代のトレーニング期にはタンパク質を多めに摂っていましたが、摂りすぎるとアルカリ性に傾いて腸内環境が悪化するから、そのぶん食物繊維を多めに摂らなきゃいけない。その頃は1食ごとにバランスを考えていましたが、今は1日3食の中でバランスよく摂ることを心がけています。朝これとこれを食べたから昼はあれがいいなとか、そうすると夜はまた別の物を食べようと、自然と30品目は摂っていますね。
── 腸内細菌の活性化が腸活だと思いますが、増やすためにはどうしたら?
鈴木 まずは菌を摂る。次に腸内の菌を育てる。そして菌を守る。この3ステップですね。菌が摂れるのは、漬物や納豆、味噌やヨーグルトなどの発酵食品。ただ、たくさんの種類の菌を摂るのはなかなか難しいので、「AuB」が手がけたのがトップアスリートの腸内細菌データを基にしたサプリメント「BASE」です。酪酸菌をメインにビフィズス菌、乳酸菌など、約30種類の菌が含まれています。
最後に菌を守る、腸内で菌が働ける環境づくり。そのために大切なのが温度です。僕たちも研究の過程で細菌を培養しますが、菌を培養しやすいのが37℃なんです。でも、年齢とともに平熱も下がってくる。そこで、夜にしっかりお風呂に浸かって血流をよくして、表面ではなく深部体温を上げるようにしています。温熱効果を高めるために作った入浴剤「SLEEP BATH」は、生姜や唐辛子、ヨモギなど、発汗や血行促進に優れた5種類の生薬を配合した医薬部外品で、体が芯からポカポカ温まると人気なんですよ(笑)。
鈴木 そうですね。入浴で血行がよくなり上がった体温が下がったタイミングで入眠すると睡眠の質もよくなるそう。朝起きて白湯を飲んだり、ウォーキングをしたりして血流を促して体温を上げていく。このリズムづくりも重要です。僕は基本7時間睡眠。22時に寝て5時に起きています。
── 早寝早起きで、素晴らしい!
鈴木 アスリートがよいパフォーマンスをするためには、準備がすごく大事ですが、仕事も同じ。早寝早起きは、朝の時間に余裕ができるので1日の仕事がはかどります。大半の人は寝る前に自由時間をもつと思いますが、後ろ倒しになると睡眠のサイクルが乱れてしまう。だから僕は朝に1時間くらい自分の時間をつくっています。
鈴木 朝起きたら歯を磨いて常温の水か白湯を飲みます。それから軽いジョギングとストレッチを10〜15分して、シャワーを浴びますね。その後の朝食はご飯に味噌汁、納豆などと娘のお弁当のおかずの残りです(笑)。
── 運動は毎朝欠かさないのですか?
鈴木 やっぱり気持ちがいいんですよ。でも、僕はジムに通っていないから、運動は毎朝の10〜15分だけ。筋肉量はかなり落ちていますが、体重は選手時代と変わりません。それが僕の自慢(笑)。運動そのものよりも、その後の爽快感が好きなんです。運動したあとは、朝食がめちゃくちゃ美味しく食べられますしね。
── 年末年始や会食など、暴飲暴食をしがちな時は、どのようにコントロールしますか?
鈴木 ちょっと飲みすぎたな、食べすぎたなという日は、翌朝もダルいですよね。でも、そんな時こそ朝早く起きてちょっと長めに走る。寝ているよりも起きて活動しちゃったほうが楽なんですよ。汗をかいて熱いシャワーのあとに冷たいシャワーを浴びると体も温まって体調も整うと思います。
鏡に映った自分が疲れていると気分が落ちる。美容はメンタルにも効くと感じています
鈴木 本格的にスキンケアを始めたのは、40歳になってからですね。それまでは美容って意味があるのか、疑問だったんです。妻(モデルの畑野ひろ子さん)がスキンケアするのを見ても「そのままで十分じゃない?」といつも思っていました(笑)。
でも40歳を過ぎて、鏡に映った自分が疲れて見えると、気分が落ちることに気づいたんです。美容はフィジカル的にはもちろんですが、メンタル的にも栄養になっているんだなと感じています。
── では、愛用のアイテムを教えてください。
鈴木 もっと早くからケアしていたらシミも少なかったかもしれませんが、後悔とは違いますね。自分の行動次第でこれからいくらでも変えていけるので、美容に限らず、僕はあまり後悔しないんです。将来シミが嫌になったら美容クリニックで取ればいいと思っています。自分に何が合うのか合わないのかは、失敗してみないとわかりませんから。
── 眉毛やヒゲのケアはしていますか?
鈴木 眉毛は4年ほど前にアートメイクをしました。メディアに出演する時などに眉を描くのが面倒で。妻に話したらアートメイクを勧めてくれたんです。今は少し描き足せばいいのですごく楽ですね。ヒゲは20代前半から生やしてきたから、ないと落ち着かないんですよ。今はちょっと短めに整えています。
ストレスの原因から逃げるのではなく受け止める。行動して状況を変えるんです
例えば人間関係で悩んでいたら、その人と距離を置くか、しっかり話し合うかのどちらかじゃないですか。ストレスの原因から逃げるのではなく受け止めて、どうするのかを考えて行動するようにしています。
── 体を酷使しているアスリートは命を削っているとも言われますが、鈴木さんはどう考えますか?
鈴木 人間の生きる目的は幸せになること。でも、その道筋や手段は人それぞれ違います。平穏に長生きするのが幸せな人もいれば、短くても自分のやりたいことを突き詰めるのが最高の人生だと言う人もいます。
僕は、腸内細菌が健康で長生きして充実した人生を送れる助けになると考えています。腸内細菌の観点で考えると、人間と細菌は別の個体。細菌の宿主である人間が辛そうだと、もっと活性化して体を助けようと細菌が補ってくれる。ある意味、補完関係になっているんです。だから我々はこれからも腸内細菌の研究を続けて、皆さんのヘルスケアに役立てたいと思っています。