2022.03.26
テレビプロデューサー佐久間宣行氏が手掛けるNetflix『トークサバイバー!』が文句なしの面白さ!
1、2週目ともNetflixの視聴ランキング「今日の総合トップ10(日本)」で1位獲得の『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』。‟ストーリーの中でリアルエピソードを話して笑わせ、面白くなかったらドラマ降板”がウケてます。
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文/長谷川朋子(コラムニスト)
売れっ子のお笑いコンビ・千鳥でトーク×ドラマ
ありそうでなかった新鮮さと、慣れ親しんだ味わいが楽しめる番組。エピソードトークや大喜利と本格ドラマを掛け合わせた『トークサバイバー!』は全8話通じて、そんな印象を持たせます。
出演するのはいくつものレギュラー番組を抱える売れっ子のお笑いコンビ・千鳥を筆頭に、ベテランから若手まで揃えた芸人たちと、間宮祥太朗や東出昌大ら人気ドラマや映画に出演する俳優陣。お笑い勢が強いこの顔ぶれから、ドラマパートはやはりパロディ設定がイメージされもしますが、実はそうではないのがこの番組が追求するお笑いのかたちです。
そして、この台本に台詞が書かれていないフリートークゾーンが差し込まれ、トークバトルが終わると、ドラマ本編に戻り、それを繰り返していきます。
トークの裏にあった「地獄の会議」
ドラマの事件解決の手がかりを得るという恰好で、学園の生徒、刑事たちに扮した芸人らが全力で持ちネタのエピソードトークを繰り広げるわけですが、大喜利形式のお題は「傷ついた話」から「誰にも言えない秘密」「とっておきのタレコミ」「人から言われてショックだった言葉」「理不尽な悪に叫びをあげる」など。中心となる千鳥の2人は言うまでもなく、これに参戦する人選のセンスの良さがこの番組の肝でもあります。ちなみに、大悟がドラマと共にトークの参加者となり、ノブは立会人としてツッコミを入れながら、見守ります。
ドラマとトークを合わせた全体の撮影期間は約1カ月半。そのうち、売れっ子の芸人たちを大集合させたトークパートは4日ほどで撮りきっています。その現場の裏で「地獄のような会議があった」とプロデューサーの佐久間氏が明かしています。トーク戦が終わった直後、誰を敗者とするのか決めるこの作業が過酷だったとのこと。
「トークの評価を紙で一覧表にして、15分ほどで決めていきました。誰を落として、残すのか、同時に編集も考えながら、スタッフと喧々諤々の話し合い。どのエピソードも面白く、現場で決めなければならなかったのが大変でした。それに、芸人は芸人で一日いるのか、途中で返されるのか、わからない状態。過酷だったと思う」(佐久間氏)
『ゴッドタン』『あちこちオードリー』など数々のバラエティ番組を手掛け、現在は独立系のプロデューサーとして多方面で活躍する佐久間氏ですが、20数年のキャリアの中でもチャレンジング企画であったことを認めています。
独立直後にNetflixからオファー
「普通にネット上でもバラエティのお笑いコンテンツが増えているなかで、この企画は違うものにしたかった。何をやったらワクワクするのかを考えて、ドラマの中にトークがあって、そのトークをめちゃくちゃ面白くするためにドラマをマジで撮った。ただし、その分、予算も掛かります。8話分、芸人を拘束して撮る必要もある。いろいろな費用が嵩む企画なわけですが、Netflixにやりたいことを話したら、それが面白いものに繋がるならとOKをもらい、クリエイター・ファーストを感じました。面白くするためにNetflixからアイデアを出していただくこともあった。発注されて作ったというより、一緒に作ったという企画でした」
少々持ち上げ過ぎましたが、文句なしの面白さゆえのこと。初週に続いて2週目もNetflixの視聴ランキング「今日の総合トップ10(日本)」で1位を獲得する結果も出しています。なお、初週の結果が発表された3月15日時点の世界の視聴ランキング「グローバルトップ10」には届かず。そもそも世界配信を無理に意識していない番組です。たとえ日本人にしかわからないようなエピソードであっても、心底くだらなくても、面白さを徹底的に追求しているのは見れば伝わってくるはず。
ドラマパートも伏線回収ににんまりできます。こういう適度なエンタメを欲していた。そんな声が聞こえてくる視聴者ファーストの番組でもあります。
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