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2022.03.26

テレビプロデューサー佐久間宣行氏が手掛けるNetflix『トークサバイバー!』が文句なしの面白さ!

1、2週目ともNetflixの視聴ランキング「今日の総合トップ10(日本)」で1位獲得の『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』。‟ストーリーの中でリアルエピソードを話して笑わせ、面白くなかったらドラマ降板”がウケてます。

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文/長谷川朋子(コラムニスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。
▲ Netflixコメディシリーズ「トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜」全世界独占配信中。お笑い好きにも配信ドラマ好きにも満足感を与える番組だ。(写真:Netflix)

売れっ子のお笑いコンビ・千鳥でトーク×ドラマ

お笑い好きにも、ドラマ好きにも満足させるジャンルを越えた番組がNetflixに追加されました。2022年3月8日(火)に全世界独占配信されたNetflixコメディシリーズ『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』です。Netflixと初タッグを組んでこの番組を仕掛けたのが、元テレビ東京プロデューサーの佐久間宣行氏であることも注目すべき点です。番組の見どころと共に制作の背景に迫ります。

ありそうでなかった新鮮さと、慣れ親しんだ味わいが楽しめる番組。エピソードトークや大喜利と本格ドラマを掛け合わせた『トークサバイバー!』は全8話通じて、そんな印象を持たせます。

出演するのはいくつものレギュラー番組を抱える売れっ子のお笑いコンビ・千鳥を筆頭に、ベテランから若手まで揃えた芸人たちと、間宮祥太朗や東出昌大ら人気ドラマや映画に出演する俳優陣。お笑い勢が強いこの顔ぶれから、ドラマパートはやはりパロディ設定がイメージされもしますが、実はそうではないのがこの番組が追求するお笑いのかたちです。
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▲ 千鳥・大悟は本格ドラマの主演を演じながら、エピソードトークにも参戦する。(写真:Netflix)
千鳥の2人が番組の冒頭で説明している通り、「ドラマのストーリーの中でリアルエピソードを話して笑わせ、面白くなかったらドラマ降板。残ったメンバーでドラマを完結させる」というのが大枠の流れです。ドラマ台本は学校や警察署、ヤクザの事務所など舞台を変えながら、大まじめに、時に派手なアクションも入れながら事件の真相を追う筋立てです。『全裸監督』など様々な映画・ドラマを手掛けてきた河合勇人監督がメガホンを取ったということですから、本格的なドラマであることに嘘はありません。

そして、この台本に台詞が書かれていないフリートークゾーンが差し込まれ、トークバトルが終わると、ドラマ本編に戻り、それを繰り返していきます。
▲ 千鳥・ノブは立会人としてツッコミを入れながら、見守る役割。(写真:Netflix)
ともすれば、ドラマもトークも中途半端になる可能性が大きいわけですが、不思議とトークもドラマもそれぞれ邪魔をしません。言うなればラーメンもご飯も美味しく完食。しかも、胃もたれなし。ある種の緊張感の中から笑いを生ませたことで、その効果があったように思います。
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トークの裏にあった「地獄の会議」

番組が成立した理由をトーク部分に絞って、もう少しだけ掘り下げます。

ドラマの事件解決の手がかりを得るという恰好で、学園の生徒、刑事たちに扮した芸人らが全力で持ちネタのエピソードトークを繰り広げるわけですが、大喜利形式のお題は「傷ついた話」から「誰にも言えない秘密」「とっておきのタレコミ」「人から言われてショックだった言葉」「理不尽な悪に叫びをあげる」など。中心となる千鳥の2人は言うまでもなく、これに参戦する人選のセンスの良さがこの番組の肝でもあります。ちなみに、大悟がドラマと共にトークの参加者となり、ノブは立会人としてツッコミを入れながら、見守ります。
▲ 学園編で紅一点のトーク参加者である峯岸みなみは自虐ネタで笑いを誘う。(写真:Netflix)
学園編では劇団ひとり、飯尾和樹(ずん)、塚地武雅(ドランクドラゴン)、田中卓志(アンガールズ)、板倉俊之(インパルス)が安定感のある笑いで序盤戦を盛り上げ、また紅一点の峯岸みなみが、自虐ネタまで披露してバトルに挑むのが印象的です。刑事篇ではケンドーコバヤシ、春日俊彰(オードリー)、近藤春菜(ハリセンボン)、狩野英孝、岩井勇気(ハライチ)、向井慧(パンサー)など個性ある面々から笑いの神が降り、お笑い第7世代のヒコロヒー、渡辺隆(錦鯉)、イワクラ(蛙亭)なども果敢に挑み、この芸人一色の中にモデルでタレントのアンミカも参戦します。

ドラマとトークを合わせた全体の撮影期間は約1カ月半。そのうち、売れっ子の芸人たちを大集合させたトークパートは4日ほどで撮りきっています。その現場の裏で「地獄のような会議があった」とプロデューサーの佐久間氏が明かしています。トーク戦が終わった直後、誰を敗者とするのか決めるこの作業が過酷だったとのこと。

「トークの評価を紙で一覧表にして、15分ほどで決めていきました。誰を落として、残すのか、同時に編集も考えながら、スタッフと喧々諤々の話し合い。どのエピソードも面白く、現場で決めなければならなかったのが大変でした。それに、芸人は芸人で一日いるのか、途中で返されるのか、わからない状態。過酷だったと思う」(佐久間氏)

『ゴッドタン』『あちこちオードリー』など数々のバラエティ番組を手掛け、現在は独立系のプロデューサーとして多方面で活躍する佐久間氏ですが、20数年のキャリアの中でもチャレンジング企画であったことを認めています。
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▲ 狩野英孝(写真右から3番目)ら人選のセンスの良さもこの番組の肝にある。(写真:Netflix)

独立直後にNetflixからオファー

Netflixオリジナルと言えば、ドラマのイメージが強いなかで、日本発のオリジナルでバラエティ番組はこれが初。幅広いジャンルを揃える新たなコンテンツ方針を打ち出しているなかで生まれた番組であり、Netflixにとってもチャレンジングだったのです。聞けば、双方想いが一致した様子。佐久間氏がちょうど1年前、テレビ東京を退社した直後にNetflixからオファーを受けたと言います。すぐさま佐久間氏がNetflixに提案したバラエティ企画8本のうちの1本が『トークサバイバー!』でした。

「普通にネット上でもバラエティのお笑いコンテンツが増えているなかで、この企画は違うものにしたかった。何をやったらワクワクするのかを考えて、ドラマの中にトークがあって、そのトークをめちゃくちゃ面白くするためにドラマをマジで撮った。ただし、その分、予算も掛かります。8話分、芸人を拘束して撮る必要もある。いろいろな費用が嵩む企画なわけですが、Netflixにやりたいことを話したら、それが面白いものに繋がるならとOKをもらい、クリエイター・ファーストを感じました。面白くするためにNetflixからアイデアを出していただくこともあった。発注されて作ったというより、一緒に作ったという企画でした」
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▲ 撮影現場の裏で「地獄のような会議があった」と語る企画・プロデュースした佐久間宣行氏。(写真:Netflix)
今や誰もが認める日本を代表するトップクリエイターの1人ですが、多くの業界人から羨ましく思われるような話です。予算を切り詰め、短期間で結果を求められがちな日本の制作環境の中で夢を与える話でもあります。

少々持ち上げ過ぎましたが、文句なしの面白さゆえのこと。初週に続いて2週目もNetflixの視聴ランキング「今日の総合トップ10(日本)」で1位を獲得する結果も出しています。なお、初週の結果が発表された3月15日時点の世界の視聴ランキング「グローバルトップ10」には届かず。そもそも世界配信を無理に意識していない番組です。たとえ日本人にしかわからないようなエピソードであっても、心底くだらなくても、面白さを徹底的に追求しているのは見れば伝わってくるはず。

ドラマパートも伏線回収ににんまりできます。こういう適度なエンタメを欲していた。そんな声が聞こえてくる視聴者ファーストの番組でもあります。

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当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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