2023.05.06
道徳は守らなくていい。相手を大切にできるなら。それが大人の恋のルールです
恋愛を巡る世間の状況が混沌とするなか、大人がすべき恋愛、してはいけない恋愛とは? カリスマ恋愛評論家として知られるおふたり、AV監督・作家の二村ヒトシさんと実業家でキャリア・婚活コンサルタントの川崎貴子さんが辛口対談、その後編です!
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文/木村千鶴 写真/椙本裕子 編集/森本 泉(LEON.JP)
ルールはルールとして、人間はこっそりと悪いことをすべき
—— 子供を構う暇があったら恋愛しろと(笑)。
川崎 一方で女性たちには男性のようには恋愛を楽しめるような状況にないという現実も知っておいてほしいです。
二村 確かにね。そもそも社会は性差別だらけですから。給料の格差もあるし、女性がちょっと派手にふるまうと叩かれるじゃないですか。オバさんが色気づきやがってとか。やはりまだまだ女性は差別されていると思います。つまんない世の中だね。
川崎 モテたいオジサンの場合、先ずは圧倒的に仕事で、その次にセックスや恋愛という脳内構造があるかもしれませんが、働き盛りの女性は恋愛どころじゃないという優先順位の問題もあります。ましてや子供がいるとなれば、精神的に子離れしたとしても、仕事に家事に子供の世話、大きくなれば学校の成績も気にしなきゃいけない。恋愛なんて優先順位がすごく下で「男友達を作る暇なんて無い」と、私がカウンセリングしている妻たちは口を揃えて言いますね。
二村 平等ではないですよね、だからこそ僕はもっと女性に不真面目になってほしい。今みたいに女性の真面目さにオジサンがつけ込むのは非常によろしくない。本当は女の人がもっと不真面目になれる環境があればいいなと思うんです。
二村 ルールはルールとして、そこをこっそり踏み越えてちょっと悪いことをしてこそ人間だっていうのが僕の持論なんです。その良し悪し、本当に人間としてやっちゃいけないことを決めるのは何かといえば、倫理観だと思います。
僕は倫理と道徳は違うものだと思っていて、道徳は世の中で決められたルールでやっちゃいけないとされていること。倫理というのは自分自身が「これをしたら俺は人間じゃない」と思う線引きのこと。特に年長者はしっかりした倫理を持たなきゃダメだと思う。でも道徳なんて守らなくていいんですよ。人に迷惑がかからないようにして、自分の立場も追い込まれないようにできるなら。
世間から見たら悪いことでも、お互いが納得していて、相手をちゃんと大事にすることができていれば、他人にとやかく言われる筋合いはない。例えそれが不倫だとしてもね。
二村 世の識者で「不倫は良くない」と断言する人なんていませんよ。ところがインターネットのノイジーマジョリティは全員「不倫は良くない」って言います。
—— なぜそう思うのでしょう。
二村 傷ついているからです。大体は本人もしくは両親の問題で傷ついてます。景気の悪さもあって、結婚したいのにできないのもあるでしょう。これは感情の問題だから仕方がないです。他人のことは気にするなと言っても彼らの心には届かない。むしろ自由恋愛をしたい人が、そういう人たちの目を気にしながらやるしかないんです。自分の倫理観にしたがってね。
家庭の平和ために安全な不倫をしておこうという女性もいる
二村 今のこの道徳ばかりが高まっている風潮が進んでいくと、セックスにせよ恋愛にせよ、正しくないとされる行為は“貴族の隠れた遊び”になっていくという話ですね。まともに働いてる人間は、そんな愚かなことに手を出さないって前提になるんじゃないかと。
川崎 それはそうかもしれません(笑)。
二村 僕は恋愛を望んでいる既婚者同士で仲良くすることも、そう悪くないことだとは思います。働きながら結婚している女性の中には、夫婦は共に家庭を運営するパートナーという位置付けで、家庭の平和のために安全な不倫をしておこう、みたいな女性もいますので、そういう人であれば、既婚者同士の恋愛は全然OKだと思う。
川崎 ただ、隠れた遊びにもルールは必要かと。既婚者であればその中で、奥さんのケアもちゃんとするのが大事。一夫多妻で暮らす中東の人たちだって「すべての妻に平等」が一応ルールですよね。それを怠って愛人の元に走ったままなのはアウト。その歪みは子供にいくかもしれないから。それができてこそ貴族の遊びです。
二村 そして、なかにはパートナーを本当に憎んでいて、傷つけるために不倫をする人もいます。そこは気を付けないと怖いよね。
二村 例えば独身主義の女性が既婚男性と恋愛をしていて「私はあなたとデートとセックスだけがしたいので、あなたのパンツを洗わなくて本当に助かっている。奥さんに感謝している」という気持ちだったら、お互いの利害が一致しているのでそれもいいと思います。ただね、女性の気持ちも変わるんです。
—— 恋愛するなら相手の心変わりを前提に考えろと。
二村 その通りです。もともと心の穴が深く自己肯定力が低い、優秀な女性っていっぱいいます。仕事も楽しいし、独身でいいわと思っているうちに、たまたま好きになった人が既婚者だったことは十分あるでしょう。最初は良くても、そのうちにやっぱり結婚して子供を産みたかったと思ったとする。そこで自己責任だと言われて我慢を強いられることは苦しいですから……。#MeTooの時代になって、後から男性を訴える女性も増えますよね。
人は気持ちも状況も変わる。だから都度都度確認が必要
二村 そのためにも常に同意の確認が必要ということでしょうね。その時の相手の気持ちに敏感になること。そしてそれを感じ取るためにはスキルも必要です。川崎さんは『愛は技術』という本も出されていますけど。
川﨑 そうです(笑)、愛は才能じゃなくてスキルだっていう本です(笑)。これからは仕事だけではなく、プライベートでもモテたいと思えば何かしらのスキルは磨かないといけないと思います。それはセックスかもしれないし、コミュニケーションかもしれないけれど、一緒にいたいと相手に思わせる何かを身につけなければ、もはや時代は、男性も「選ばれる側」なんです。男性は若さや体力、お金といった、いずれなくなるものを取っ払っても通用する「モテスキル」を磨いておくべきです。
二村 愛嬌があるとか、仲間を作るスキルがあるとか、誉め言葉がうまいとか、色々ありそうですけどね。
川﨑 私の知り合いで、一流の会社にお勤めなんですが、異動をきっかけにお酒を一切やめて、これまで自分が会って来なかった種類の人たちとの出会いを求めて、地域活動やPTAなどの活動を始めた人がいます。
まったく違うコミュニティに入っていくことは仕事にも役立つし、自分の老後にもいいはずだと思って始めた、とおっしゃっていました。自分に肩書きがあろうとなかろうと関係ない世界に入っていくのはなかなか難しいですよ。その中で受け入れられ、うまくやっていく経験をすることは、すごい貴重だったと聞きました。
川崎 男性は、歳を重ねたら、成功とかお金とか分かりやすく手に入れられるものよりも、自分の幸せというものにフォーカスした方がいいと思うんです。
二村 モテのこと考えたら絶対そうです。その方が結果モテます(笑)。いろんな経験することで、今まで得られなかったような知見を得て、人としてのコミュニケーションスキルも上がって、それが結果としていい大人の恋愛をしていくためにも役に立っていくのかなという気がします。
● 二村ヒトシ(にむら・ひとし)
1964年六本木生まれ。アダルトビデオ監督、作家。慶應義塾幼稚舎卒で慶應義塾大学文学部中退。監督作品として『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなりレズビアン』『女装美少年』など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在は、性や生のモヤモヤを考える読書会や哲学対話やオープン・ダイアローグを実践中。 著書に「すべてはモテるためである」、「なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか」(ともにイースト・プレス)、「淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集」(洋泉社)、「深夜、生命線をそっと足す」(マガジンハウス)など。
● 川崎貴子(かわさき・たかこ)
1972年生まれ。埼玉県出身。リントス株式会社代表取締役。「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」を理念に、働く女性をサポートするためのコンサルティング業、教育事業、カウンセリングサービスを手掛ける。働く女性の結婚サイト「キャリ婚」の運営、婚活結社「魔女のサバト」主宰、婚活や仕事、家庭などの悩みに答えるメルマガ「川崎貴子のカウンセリングルーム」連載中。著書に「結婚したい女子のための ハンティング・レッスン」(総合法令出版)、「愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる」(KKベストセラーズ)、二村さんとの共著で「モテと非モテの境界線」(講談社)他多数。