2024.01.05
いま、海外富裕層ツーリストの間で「日本で行くべき場所リスト」が複数出回っているって本当⁉
コロナ禍を経てインバウンドは完全復調目前。そこで注目したいのが旅慣れた富裕層のツーリストたち。なぜなら彼らの動向には我々日本人、とりわけモテたいオヤジさんたちも学ぶべきところが多いから。最新のラグジュアリー系インバウンドに関するリアルな情報をリポートする企画、その後編です。
- CREDIT :
編集・文/矢吹紘子
ゲストの“和文化耐性”を見定めつつグラデーションをつけた宿選びを
「いきなりどジャパニーズの宿に案内してしまうと、日本文化に慣れていないゲストは戸惑ってしまうので、徐々にレベルを上げるのがコツです。東京から始まる滞在なら、最初は『アマン東京』に数泊し、温泉のリクエストがあれば、伝統的な建築の中にライブラリー併設のラウンジを備えた伊豆・修善寺の『あさば』のような、モダンな要素もある旅館で馴染んでもらう。モダナイズされた和という意味では『星のや東京』も優秀で、そこから『柳生の庄』などへとグラデーションを描いて後半へ向けて濃度を高めていく。金沢方面なら、名物女将・中道幸子さんも評判の加賀・山代温泉の『べにや無何有』へ。食事のメニューが和食に慣れていない人にも親しみやすいので、そこからスタートし、よりオーセンティックな『かよう亭』に、といった具合ですね」(山田さん)。
キーワードは“セレンディピティ”ビジネスや投資のヒント探しも!
この記事の前編では若手を応援したいというモチベーションが飲食店選びのひとつの視点になるとお伝えしましたが、話はさらに一歩進んで、実際に金銭面でサポートするケースもあるのです。私自身の経験としては、数百年以上の歴史がある通常非公開のお寺で受けた座禅体験の際、国宝級の文化財や建物を次世代に継ぐべく尽力する住職に心を打たれたゲストが多額の寄付を申し出た、なんてケースも確かにありました。
特に味わい深い町家が数多く残されている京都は注目度が高く、滞在中に不動産の価格をチェックしたり、リノベ系のレストランやショップへ下見を兼ねて行ってみたいとリクエストされることも一度や二度ではなかったり。
聞けば彼らの間で「日本で行くべき場所リスト」なるものが複数出回っているという噂もあり、実際私のところにもそちら経由でアテンドの依頼がきたことがあるくらい。ただしセキュリティには人一倍気を遣い、身分を明かさずにコードネームを使いながら旅する人たちもいるくらいなので、「○○さんに紹介されて〜」なんて軽々しく実名を出すのはご法度。その合理性としたたかさ、さすがというしかありません!
“通好み”以上の知識欲を満たすべくセンスの合うプロを頼る傾向が
また同じく名古屋からのアクセスでいうと、中山道の宿場町・妻籠宿は今、日本で一番インバウンド率が高いエリアのひとつ。場所柄ハイキングコースには事欠かないこともあり、宿のバリエーションというポイントをクリアすれば、今後富裕層の間でもブレイクする可能性を秘めています。
またニッチ化の傾向はショッピングにも如実に現れていて、日本人のわたしたちからしても「?」なお願いもしばしば。ここ最近で最も戸惑ったのは、畳職人が履く作業靴(写真をご参照あれ)を探してほしいというリクエスト。富裕層の心を掴むのは、決してハイブランドや高級品だけではないのです。
● 山田ひろみ (Romy)
紹介制のトラベルエージェンシー「ROJY」ファウンダー、CEO。幼少期をLAで過ごし、MTVやAppleなどの米国系企業でマーケティングに携わる。海外富裕層、クリエイター、デザイナー、ハイブランド企業等向けのキュレーション、企画、イベント運営、コンサルティングを専門とする同社を設立。
HP/https://rojy.tokyo
● 矢吹紘子(やぶき・ひろこ)
ライター、編集者、通訳案内士。小誌のほか『BRUTUS』『POPEYE』などライフスタイル誌を中心に記事を執筆・編集。ロンドン大学で修士課程修了後、プライベート通訳としても活動。京都を拠点に海外からのVIPゲストの旅のキュレーションやアテンドを行なっている。
Instagram/@tokyoai_hiroko